注目された4月米雇用統計は非農業部門雇用者数が26.6万人増と市場予想(100万人増)を大きく下回る増加に留まった。3月分の雇用者増加数の下方修正や失業率の小幅上昇など、全般的に市場の期待を大きく下回る内容となった。雇用統計を受け、米長期金利は一時1.5%割れとなった一方、期待インフレ率(10年)は2013年以来初めて2.5%を上回り、実質金利は大きく低下している。為替市場ではドル全面安での反応となり、ドル円相場も一時108円30銭台までの円高ドル安が進展した。一方、VIX指数大幅低下などリスク心理は改善し、クロス円は上昇している。

 今週は11日(火)ブレイナード理事、12日(水)クラリダ副議長を含む多くのFRB高官による講演が予定されているが、失望を誘う雇用統計を受け、テーパリングへの慎重姿勢が維持されよう。また、米国では12日(水)CPI、14日(金)小売統計といった経済指標の発表も予定されており、前年比で見たインフレの加速や堅調な消費が確認される見込みだ。リフレトレード継続の機運が高まり、ドル円は108-110円中心のレンジ相場の一方、ユーロ円などクロス円の上昇圧力が高まるだろう。

 中国と米国を含む主要国との対立懸念が燻る中、米中通商交渉が実現するかなど、中国関連のヘッドラインも注目される。米中通商閣僚級会談は近々開かれる可能性が大きいが、米中間の政治的な対立が続く中で、関税引き下げの可能性は限られよう。ただし、会談に前後して元高ドル安が再加速するようだと、対ユーロなど主要通貨に対するドル安圧力が高まりそうだ。この場合、ドル円にも下押し圧力が掛かる可能性があるが、クロス円相場は上昇が見込まれる。政治面では、12日(水)バイデン大統領と民主・共和両党の上下院議員との会談も予定されており、財政政策を巡る議論が注目を集めそうだ。

※2021年5月10日発行「国際金融為替ウィークリー」より一部抜粋
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