4月鉱工業生産から見た製造業の動向

生産は低下も、基調判断は据え置き

鉱工業指数は、日本の製造業の生産活動を表す重要な統計です。2023年4月を総評すると、経済産業省は「緩やかな持ち直しの動き」と評価しており、生産活動が一進一退しつつも徐々に上向いている結果となりました。

生産は前月比-0.4%と、3ヶ月ぶりに小幅の減少となり、市場予想の同+1.4%を下回りました。2月の同+4.6%、3月の同+1.1%の生産増と比べて4月の減少は小幅ですが、後述する今後の増産予測を踏まえると、4月の生産減は一時的なものとみられます。  

出荷も前月比-0.4%と、生産と並び小幅の減少となりました。在庫は同+0.3%となりましたが、一部業種の先行きの需要を見越した前向きな在庫の積み増しとみられます。

機械業種の生産増減が目立つ

業種別では15業種中9業種が前月比で増加しました。最も生産が増えた業種は汎用・業務用機械工業の前月比+11.6%、一方、最も減少の大きい業種は生産用機械工業の同-7.4%でした。機械は単位当たりの製品が大きく、製品の完成(生産)だけでなく出荷もタイミングにより振れが大きくなりやすい業種です。両業種とも増減率は前月からプラスマイナスが逆に大きくなる結果でした。

汎用・業務用機械工業ではコンベヤやエレベーターなどの運搬装置が大幅に増え、生産用機械は半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置などの生産が落ち込みました。半導体は国内外で工場建設の報道は相次いでいますが、短期的にはメモリー市場が調整局面にあることから、増産が明確になるにはしばらく時間がかかるとみられます。  

その他、電子部品・デバイス工業が前月比+8.9%となるなど、生産は2023年3月に減少が大きかった業種で上昇が目立ちました。

生産予測は緩やかな増産を示す

今後を予測する上で、生産予測は、緩やかな増産を予想しています。5月の生産見込みは前月比+1.9%、6月は同+1.2%となっています。

業種別では、生産用機械工業が5月に同+2.0%、6月に同+3.4%と2ヶ月連続で上昇する見通しで、4月の低下から回復が期待できます。自動車を含む輸送機械工業は、5月の同+12.5%に対し、6月は同-8.6%が予想されています。ただし、主要完成車メーカーは決算発表時に年内の増産継続見通しを表明しているため、6月の減産は一時的とみられます。

一方、電子部品・デバイス工業は、5月に同+1.8%、6月に同-3.2%と増産に向けた動きは一進一退になる見通しです。電子部品・デバイス工業について、生産活動の修正傾向を示す実現率と予測修正率を見ると、振れ幅が大きいことがわかります。米系・中国系スマホなどの需要増減で、機動的に生産を調整しているとみられ、今後の予測は難しいですが、国内外でスマホなどのエレクトロニクス製品は調整局面にあるため、在庫調整一巡などの復調局面の見極めが増産に向けたカギを握るとみられます。

一方、製造業全体の実現率と予測修正率は振れを伴いながらもマイナス幅が縮小しており、予測に対する減産リスクが低下しているようです。

在庫循環の状況

最後に、鉱工業在庫循環の動きを確認します。在庫循環図における45度線よりも左の領域は「在庫の伸び>出荷の伸び」となり、企業が在庫増を防ぐために、生産が抑制される領域です。反対に、右の領域は、「出荷の伸び>在庫の伸び」となり、企業が生産を拡大させることになります。2023年4月は、45度線よりも左の領域での推移が継続しています。

生産全体は好転しているとは言えませんが、自動車など生産の増加をけん引すると期待される業種がある一方、生産用機械など足元で振るわない業種もみられます。今後、これらの業種の調整が一巡すれば、製造業全体の生産好転が示されると期待されます。

(野村證券投資情報部 金井 一宜)

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