本日のストラテジー

 16日の米国株式市場で、NYダウは前日比-265.66ドル(-0.77%)の34,033.67ドルと3営業日続落となりました。S&P500指数は同-0.53%、ナスダック総合指数は同-0.23%と主要3指数は下落しました。この日は、FOMC参加者の経済見通しで2023年の利上げ開始が示唆されたことを受け、金融政策の正常化に向けた動きが強まるとの見方から株式市場には重石となりました。

 FRBは今回のFOMCでフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%に据え置きました。資産購入についても、雇用とインフレに関して「一段と顕著な進展」が見られるまで月額1200億ドルのペースを続けると表明しています。FOMC参加者の経済見通しが公表され、政策金利予想(ドットチャート)では、参加者18人のうち13人が2023年内の利上げ予想を示しました。2023年末予想の政策金利の中央値は0.625%となり、前回の0.125%から切り上がっていたため、過去の利上げ回数でみると2回分の利上げを示唆した結果となります。

 FOMCの結果を受け、金融政策の正常化に向けた動きが進むとの見方が広がり、米国債の利回りは上昇し、株式市場は下落しました。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、足元の経済情勢について「テーパリング(資産購入額の減少)が可能になる状況とは依然、かけ離れている」とけん制したものの、今回のFOMCではテーパリングについて議論したことも明らかにしています。一方で、FOMCで利上げの議論は行われなかったと述べ、「ドットチャートは必ずしも政策金利を予測するものではなく、割り引いて判断するべき」としました。記者会見での発言を受け、米国10年国債利回りの上昇は1.5%台で止まりましたが、株式市場は下げ幅を縮小する場面もありました。引けにかけては、金利上昇を受け金融セクターが下落幅を縮小し指数を押し上げましたが、結局主要3指数はマイナス圏で取引を終えました。S&P500指数セクター別では一般消費財・サービスが前日比+0.16%となる一方、公益事業が同-1.49%、生活必需品が同-1.23%、素材が同-1.16%となりました。

 日経平均先物CME終値は29,330円となりました。日経平均株価の6月~8月の配当落ち約41円を考慮した場合、実質的なCME終値は29,371円と試算され、日経平均株価の前営業日終値(29,291円)やや上回る水準です。足もとのドル円相場は1ドル=110円60銭台と、前日の15:00時点の110円00銭台から円安です。

 16日の東京市場では、米国株安を受け一部の小売株や半導体関連株が下落したことが日経平均株価の重石となりました。一方で、寄り付き前に発表された日本の4月コア機械受注では外需の回復を受け製造業からの受注が大きく増加したことが示され、機械株の一角が上昇し指数を下支えしました。16日の引け後に発表された5月の中国主要経済統計は市場予想を下回る結果が目立ったことに加え、16日の米国の主要指数が下落したことは、17日の東京市場の株価の重石になる可能性もある一方で、FOMC後に、ドル円相場が1ドル110円台後半と前日から円安に推移したことを受けて、売上高における輸出比率の高い企業の業績面にはプラスになる可能性もあります。外需の回復の恩恵を受けやすい企業の株価の動きには注目が集まります。

 FOMC参加者の経済見通しでは2021年の経済成長見通しが上方修正されるなど、回復のペースが速まっています。今後も米国経済を見る上では引き続きインフレ率や消費、雇用が注目されます。足元では米国の雇用を見る上で、17日米国時間の寄り前に発表される6月12日の週の新規失業保険申請件数に注目です。市場予想では36万件で前週の37.6万件から減少すると見られています。

 

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