デンソー(6902) 輸送用機器

多様な製品を持つ自動車部品国内首位

 日本最大の自動車部品メーカーで、世界でも屈指の規模を誇る。トヨタ自動車向けの売上高比率は2021.3期で約51%であったが、その他の日系・米系・欧州系と幅広い納入先を持つ点に特徴がある。製品別でも、エアコン、エレクトロニクス・半導体関連、エンジン関連など幅広い製品群を持ち、先進分野にも強みがある。

 完成車1台当たり搭載金額の増加を主因に、直近数四半期の決算でも同業他社比で高い増収率を維持してきた。22.3期上期に懸念される半導体不足による完成車の減産影響も通期で見れば深刻ではないだろう。22.3期以降は過去最高の営業利益の更新を続けると予想する。

電動化、自動運転の恩恵が大きい

 脱炭素化を受け、電動化が進む中では、ハイブリッド車向け部品の販売拡大の恩恵が大きい。トヨタ自動車向けのみならず、その他日系、米系、中華系向けの販売も期待される。

 より快適な運転を求め、自動運転の流れも続くだろう。ADAS(先進運転支援システム)製品も多く手掛けており、安全性を増すための部品点数の増加も予想される。

 電動化、ADASの恩恵で、自動車の生産台数を上回る売上成長が見込まれる。ソフトウェア分野の効率化により、研究開発費も今後、縮小に向かうと見られ、売上成長が利益成長に結びつきやすい局面を迎えるであろう。

(西津 昂)

三井住友トラスト・ホールディングス(8309) 銀行

2021.3期業績は会社計画を小幅上ぶれ

 2021.3期親会社株主利益は会社計画1,400億円に対して、実績1,422億円と小幅上ぶれ。ヘッジ取引実現等により株式関係損益でネット435億円の損失を計上する等複数の将来への布石を打っている。連結実質業務純益は会社計画を大幅に超過した。同様の含み損処理を進めるため、22.3期親会社株主利益の会社計画は1,550億円と発表時コンセンサス(QUICK 調査)を100億円以上下回った。株式売却益でヘッジ取引の評価損を改善する計画等が要因で、企業価値への影響はほとんどない。実質業務純益計画は順調な回復を見込む。

 22.3期1株当たり配当金予想は160円と、期初から増配計画を公表し、好印象。

政策保有株ゼロ目標を表明

 当社は5月13日に「政策保有株式の削減に向けた取り組みについて」で、「従来型の安定株主としての政策保有株式」は原則すべて保有しないという方針への転換を表明した。規制変更等ではなく、自らの判断でかかる方針転換を表明したことは、当社の企業価値向上はもちろん、日本の企業社会のあり方にも転換をせまる重要な決断であると野村では高く評価している。

 なお、自己株取得については、従来は、新型コロナ影響見極めのため現時点では想定せず、としていたが、決算発表後電話会議にて今後は「資本有効活用の観点から機動的に実施」の従来方針に従って判断すると会社側から言及があった。

(高宮 健)

ソフトバンクグループ(9984) 情報・通信

投資ファンド事業の利益が拡大

 2021年1~3月期親会社所有者帰属当期利益は1兆9,328億円と、20年10~12月期の1兆1,720億円を上回る高水準となった。外部投資家持分を控除した投資ファンド事業の税前利益は20年10~12月期の8,441億円から21年1~3月期には2兆2,687億円へ拡大した。

 当社が100%出資する投資2号ファンドの当社出資コミットメント額は20年12月末の100億ドルから21年3月末に200億ドルとなり、5月11日には300億ドルにまで引上げられた。1号ファンドへの同コミットメント額は331億ドルで、当社税前損益への寄与度では2号ファンドは1号ファンドと同等規模に組成されたと言える。

投資ファンド初期案件は回収局面へ

 2号ファンドの21年3月末の累計投資額は67億ドルで累計投資先社数は44社だが、21年5月11日時点の累計投資先は95社に拡大しており、投資ペースが加速している。

 一方で、既に投資がほぼ完了している1号ファンドでは、初期段階で中国や東南アジアでの配車サービス会社、東南アジアや米国のEC(電子商取引)会社、インドのスマートフォン決済会社などに投資を行っている。当社の投資ファンドは既存の大きな産業を変革する技術やサービスに重点を置いており、今後は投資企業群の中でも古い時期に投資した案件の回収が期待される。

(増野 大作)

※野村週報2021年6月21日号「銘柄研究」より

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ご投資にあたっての注意点