高砂熱学工業(1969) 建設

空調工事トップ、半導体向けが拡大

 1923年に高砂暖房工事として、創業時から暖房工事を営業目的とし、数多くの著名な建物の空調設備を施工してきた空調工事のトップ企業。2021.3期ではビル向けの一般空調設備が全社売上高の55%、工場向け等の産業空調設備が43%を占めた。

 21.3期は4Q(1~3月期)に半導体向けの大型案件を受注し、単体の産業空調の受注高は前期比10%増の905億円だった。半導体向けの売上は当社の産業空調のうち3~4割程度を占めると見られ、同業他社に比べて高い。半導体分野で幅広い顧客層を有し、豊富な施工実績がある点が強みである。野村では、今後も産業空調は半導体向けが牽引し、事業拡大が続くと考える。

建築需要回復で利益も回復局面へ

 顧客の設備投資意欲の向上により、当社の中小型案件の受注は21.3期4Qで回復が見られた。21.3期の営業利益は前期比31%減の123億円だったが、今後は建築需要の回復を享受し利益回復局面に移行しよう。

 22.3期は中小型案件の売上回復や半導体向けでの増収に加えて、21.3期に個別工事での採算悪化等により発生した10億円程度の一過性の損益悪化影響のはく落も見込まれ、営業利益は前期比19%増を野村では予想する。23.3期は手持ちの大型案件の売上寄与もあり、利益回復が続こう。一般空調では都心を中心とする大型案件の売上寄与により中期的に営業利益は成長しよう。

(濱川 友吾、前川 健太郎)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) 銀行

新型コロナ禍で健闘する足元業績

 2021.3期実績は、親会社株主利益が7,770億円と3月31日付修正会社計画(7,500億円)を上回った。市場部門好調等により、連結業務純益は前期比639億円、5%増加した。

 22.3期計画は、親会社株主利益で8,500億円と決算発表時点のQUICK コンセンサス(7,263億円)を上回る。会社計画前提としては、連結業務純益の前期比減少(1,484億円減)を与信費用減少(1,655億円減)やそれ以外の部分(株式関係損益や退縮給付関連等)で打ち返し、増益となる計画。22.3期DPS(1株当たり配当金)予想を27円(前期比2円増)とし、株主還元強化の姿勢を示した。

実行力が問われる新中期経営計画

 当社は今回新中期経営計画を公表した。主な財務目標は、当社基準のROE(自己資本利益率)が21.3期実績5.6%に対して24.3期目標7.5%、中長期目標9%~10%、自己資本比率のCET1比率(最終化、含み益除き)が同9.7%に対して24.3期・中長期目標とも9.5%~10.0%となっている。営業純益は、21.3期実績1.23兆円から24.3期計画1.4兆円に増加の計画。主な前提は、グローバルCIB等成長戦略で約1,500億円の増益効果、経費削減など構造改革で約1,000億円の増益効果を目指す。前2回の中計が財務目標未達成に終わったことから、株式市場からは中計の実行力が問われているといえよう。

(高宮 健)

日本郵船(9101) 海運

日本を代表する海運会社

 当社は明治時代初めに誕生した日本を代表する海運会社であり、海運事業だけでなく、物流、航空輸送事業の規模も大きい。

 金融危機後の2009年以降は船の大量発注に伴う市況悪化に苦しんだが、コンテナ船事業を他の日系2社と共同で出資する新会社ONE(Ocean Network Express)に移管、21.3期には新型コロナ禍でモノの消費が増加したことからコンテナ市況が上昇し、新会社が当社の利益拡大に寄与した。

 また、当社の物流や航空輸送事業では、新型コロナ禍に伴う旅客便の減少により航空貨物運賃が上昇し、利益が拡大した。そのため、日系3社の中で21.3期の経常利益の増益額が最も大きかった。

22.3期も大幅な経常増益を予想

 21.3期の経常利益は2,153億円と前期の445億円から大幅増加した。自動車船や鉄鉱石・石炭を運ぶドライバルク船の業績は悪化したが、当社が出資するコンテナ船会社と物流、航空輸送事業の業績拡大が貢献した。コンテナ船運賃は輸送需要の拡大により20年夏前から上昇し、現時点でも過去最高を更新中である。

 野村では22.3期の経常利益を3,597億円と予想する。野村ではコンテナ運賃が下期から悪化すると見るが、現時点では上昇を続けており、予想に対する進捗は良好と見ている。22.3期予想基準の株価純資産倍率(1株当たり純資産5,446円)1.0倍、同配当利回り9%と魅力があろう。

(廣兼 賢治)

※野村週報2021年8月2日号「銘柄研究」より

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