キリンホールディングス(2503) 食料品

競争力のある事業群を有する

 当社は、酒類、清涼飲料、医薬、ヘルスサイエンス事業などを展開するコングロマリット(複合企業体)。

 事業ステージの初期段階にあるヘルスサイエンス事業を除き、いずれの事業も競争力があると考える。例えば、キリンビールは、国内ビール類市場においてトップシェアを有し、ビール会社の中で収益性が最も高い。また、海外では、豪州ビール市場でシェア2位、フィリピンの持分法適用会社が同国ビール市場で圧倒的なシェア1位にある。また、上場子会社の協和キリンが展開する医薬事業では、複数のグローバル戦略品を持ち、中期的に高い利益成長が期待されている。

22.12期には過去最高の事業利益へ

 2021年1月以降、当社の株価は低調である。政情不安からミャンマー事業の先行きに対する懸念が背景と見られる。野村では同事業の価値を1,500億円と推計するが、時価総額はそれ以上、減っており、同事業への懸念は株価に織り込み済みであろう。

 新型コロナ影響が薄れる22.12期には過去最高の事業利益を予想する。①キリンビールでは、高単価商品への注力で収益性が改善、②人口増を背景に豪州ビール事業は売上が拡大、③協和キリンの利益成長、④ヘルスサイエンス事業は、免疫機能を有する「プラズマ乳酸菌」など、戦略素材の売上成長が見込まれる、などが業績の牽引役と期待される。

(藤原 悟史)

野村総合研究所(4307) 情報・通信

野村證券系のIT サービス企業

 当社は野村證券が源流の大手シンクタンク兼IT(情報技術)サービス企業である。創業は1965年で、日本初の民間シンクタンクとして設立され、88年には同じく野村證券系のIT サービス企業と合併し、現在の当社となった。

 野村ホールディングスの持株比率は28.8%(2021.3期末時点、間接所有含む)まで低下したが、現在も証券業中心に金融業向けビジネスに強みを有する他、蓄積したノウハウを集約して共同利用型サービスとして展開している。また、コンサルティングとITソリューションの2つの事業を柱とし、近年ではそれらを融合させた包括的なソリューションの提供に強みがある。

DX 案件では経営コンサルが武器に

 IT・インターネットの浸透による産業構造の変化や、新型コロナウイルス感染症の影響拡大への対応もあり、日本企業の間でITを活用したビジネスモデル変革、デジタル・トランスフォーメーション(DX)へ取り組む機運が高まっている。

 DX 案件では顧客企業内の主導役が、情報システム部門ではなくビジネス部門である傾向にあり、ITサービス企業にも従来と異なる組織能力が求められる。このため、競合各社は人材獲得・育成への費用を強化しているが、当社は既にビジネス部門向け事業に適した経営コンサルティング人材を有しており、今後もDX 需要による売上成長と収益改善を両立しよう。

(吉田 純平)

ソニーグループ(6758) 電気機器

長期視点を重視した新中期計画

 2022.3期スタートの第4次中期経営計画が発表された。「感動」「人に近づく」といった経営コンセプトは従来同様だ。「ソニーグループと直接つながる人を10億人に広げる」など長期ビジョンを強調した点が、これまでの中期計画からの変化と感じる。

 5月に開催された経営方針説明会で、吉田憲一郎CEOは「キャッシュ創出力が改善しグループの投資力が向上している」とコメントした。「サービス」「モバイル」「ソーシャル」の環境変化を事業機会と捉えているとの説明もあった。

 次の成長ステージへの移行期において、経営陣が長期視点での成長戦略を重視していることがうかがわれる。

グループ戦略の進化を見定めたい

 野村では、ゲームにおけるプラットフォーム提供者、映画・音楽におけるIP(知的財産)保有者としての当社の潜在性に注目してきた。コロナ禍において、これらの強みが顕在化しており、PlayStation ユーザーのエンゲージメント長期化や、保有IPの価値向上(アニメ「鬼滅の刃」のヒットなど)は大きな成果と言えるだろう。

 一方、意識的に強化されているもののグループ内での事業間連携には課題が残ると感じる。アニメにおけるIPと配信プラットフォーム、コンテンツ制作における機材とクリエイターなど、双方を持つ当社ならではのユニークな成長戦略の提示に期待をしたい。

(岡崎 優)

※野村週報2021年8月9日号「銘柄研究」より

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