携帯各社が携帯新料金を導入
携帯各社は2021年に入り各種の携帯新料金を導入した。データ大容量プランではメインブランドでデータ無制限プランが導入された他、楽天モバイルではデータ従量課金を組み合わせて幅広い顧客ニーズに対応している。
データ中容量プランではKDDI のUQ モバイルやソフトバンクのY!mobile が値下げと携帯店舗での顧客対応で競争力向上を図っている。また、新設のオンライン専用ブランドではNTT ドコモahamo、KDDIのpovo、ソフトバンクのLINEMO が20GB/月データプランを割安で提供している。
携帯新料金の売上への影響
モバイル通信収入の4~6月期の前年同期比は、NTT ドコモは1.4%減収となった。これはMVNO(仮想移動体通信事業者)向け料金値下げの影響であり、自社のdocomoとahamoブランドは契約数増で料金値下げを吸収し増収を確保したと推計される。
KDDI は料金値下げ影響でマルチブランド通信ARPU(顧客一人当たり月間収入)は同2.8%減収だが、楽天モバイルへのローミング収入等を含めたモバイル通信収入全体では同2.5%増収を確保した。
ソフトバンクでは3ブランド合計のモバイル通信収入は同0.9%減収となった。
通信各社の営業利益は堅調に推移
21年4~6月期の営業利益で、KDDI は前年同期比2.9%、85億円の増加を確保した。これは自社携帯ブランドの通信サービス収入減を楽天モバイル向けのローミング収入増で補った他、非通信事業のライフデザイン領域営業利益が同90億円の増加となったためである。
ソフトバンクは営業利益で前年同期比1.1%、32億円の増加を達成した。これは法人事業営業利益がネットワーク需要拡大で同72億円増益を確保したためである。
一方、NTT の営業利益は前年同期比2.3%の減少となった。これは携帯設備関連費用や金融サービス販促費、海外事業の構造改革費が一時的に増加したことが背景で、会社は計画よりも良好な実績としている。
高水準の株主還元維持を見込む
野村では通信各社で安定したフリーキャッシュフローを予想し、来期以降も高水準の株主還元維持が可能と考えている。ソフトバンクでは来期以降も高水準の配当維持を見込んでいる。
KDDIは今期に上限5,200万株・1,500億円の自己株式取得を発表した。野村では来年度開始の次期3カ年中期計画で年間2,000億円の自己株式取得を前提とする。
NTTは21年4~6月期決算公表時に、上限1億株・2,500億円の自己株式取得を発表し、中期計画最終年度の24.3期目標EPS(一株当たり純利益)320円の1年前倒しでの実現を改めて表明した。野村では来期も株主還元拡大を前提としている。
(増野 大作)
※野村週報2021年8月23日号「産業界」より