2022年前半における中国景気の主な押し下げ要因は不動産建設活動の調整である。21年10月の国慶節以降は中国政府が不動産に対する厳しい引き締め政策を一部見直したものの、住宅投資の下振れリスクに当面注意する必要がある。

 調整が始まった21年8月から年末までの住宅販売は前年同期比で18.6%減と大きく萎縮している。当局は5~8月に過度に引き締めた住宅ローンの新規融資規制を10月から緩和したものの、販売回復が見られなかった。住宅ローン金利や頭金比率等の融資条件の改善が講じられなかった他、引渡の不確実性が原因で家計が未完成の前売り物件の購入を控えたことも理由と考えられる。

 不動産開発会社側にも経営健全化の必要性が迫られている。中国は18年から金融機関のシャドーバンキング業務に対する規制強化を行ってきた。それまでシャドーバンキングから資金調達してきた不動産会社は、開発資金を前売り販売住宅からの収入に依存する経営を余儀なくされた。その結果、中国の住宅販売に占める前売り販売の比率は17年までの80%程度から18年以降90%超に高まった。

 21年8月に大手不動産会社の債務問題が表面化し、中国政府は金融システムに対するリスクを抑制する対策を強化した。主な方法は、前述の住宅ローン貸出の正常化に加えて、一部国有系不動産会社に対して、経営困難になった不動産会社への出資・一部資産買取りを行うための銀行融資を提供すること、土地価格・住宅価格の下落を統制すること、等が挙げられる。

 特に後者については、足元で資産価格の安定化は概ね図られており、銀行担保資産の価値下落による信用収縮は回避されている。しかし、価格統制の代償は長引く取引量の低迷であり、住宅建設の回復には時間が掛かりそうである。

(市場戦略リサーチ部 郭 穎)

※野村週報 2022年1月24日号「経済データを読む」より

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