12月小売売上高から見た米国の個人消費動向

12月の前月比は-1.9%

 米国時間14日に米商務省が、2021年12月の小売売上高を発表しました。

 小売売上(合計)は前月比-1.9%で、ブルームバーグ集計による市場予想中央値同-0.1%を下回りました。

 なお、11月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同+0.3%から、同+0.2%に下方修正されました。

12月の前年同月比は+16.9%

 次に、前年同月比について見てみると、小売売上(合計)は、12月は+16.9%でした。11月分については、速報値の同+18.2%のままでした。

前年同月比は堅調を維持

 前年同月比の推移をみてみると、小売売上(合計)は、11月の+18.2%から12月には同+16.9%に鈍化したものの、引き続き高い伸びを示しています。無店舗販売は、コロナ禍の影響で2020年に大きく伸び、その後伸び率は鈍化していましたが、足元では再び二桁台の伸び率が続いています。

マインド調査では消費者に警戒感が

 14日には、1月ミシガン大学消費者センチメント指数も発表されました。1月速報値は68.8と、12月の70.6から低下しました。調査元のミシガン大学は、デルタ株とオミクロン株がこの低下に寄与しているが、加速するインフレ率も要因であると指摘しています。

 同調査では、消費者の期待インフレ率も調査しています。1月の1年先のインフレ見通しは前年比4.9%と、12月の同4.8%から若干上昇し、11月の水準に戻りました。一方、5年先については3.1%と、若干ながらも一段と上昇しています。

NRF発表の年末商戦は堅調

 14日にはまた、NRF(全米小売業協会)が、2021年の米国年末商戦期間(11・12月)における売上高実績を発表しました。なお、NRFの売上高の範囲は、小売売上高のうち自動車ディーラー、ガソリンスタンド、外食を除きます。

 実績は前年同期比+14.1%の8,867億ドルとなり、2021年10月27日にNRFが発表した予想レンジの同+8.5~+10.5%、8,434~8,590億ドルを大きく上回りました。

 一方、オンライン及び無店舗販売の売上高実績については、前年同期比+11.3%の2,189億ドルとなり、NRFの予想レンジの同+11~15%、2,183~2,262億ドルの下限近くとなりました。

 発表資料の中でNRFは、消費者が年末の購買をこれまでになく前倒しで始めた反動で11月と比べ12月の売上は減少したが、期間を通せば記録的な年末商戦となったとしています。

今後のチェックポイント

 12月小売売上高は、前月比が市場予想を下回り減少となったことは気になります。しかし、前年同月比では全項目増加していて、加えてNRF調査にあるように、11月・12月を通せば、年末商戦期間の売上高は前年同期比+14.1%と大きく伸びました。NRFがコメントしているように、2021年の年末商戦は従来にも増して前倒しになっていたことが影響していたと考えられます。

 これまでの米国政府による財政出動などもあり、米国家計のバランスシートは改善しており、加えて雇用の改善や賃金の上昇も加わり、個人消費は堅調さを保ったと考えられます。

 一方で、ミシガン大学の調査では、消費者は足元のオミクロン株の感染状況や、インフレ動向などに警戒感を強めているように見て取れます。

 次回、1月分の小売売上高は2月15日に発表予定です。発表された際には、前月比や前年同月比の状況、業種別の内容などを精査し、個人消費の動向を確認していきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠 )

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