リサーチレポート「政治レポート – ロシア軍のウクライナ侵攻リスクは4月以降後退するのか?」が発行されました。同レポートの冒頭部分を公開いたします。

政治レポート – ロシア軍のウクライナ侵攻リスクは4月以降後退するのか?

発行日:2022年1月26日

ロシアがウクライナ東部の親ロシア派の独立を承認する展開には注意が必要

 昨年11月以来、ロシア軍がウクライナ国境に集結している。軍事侵攻の可能性が懸念され、危機的な状態が当面続くと見込まれる。金融・商品市場ではロシアの主要産品である天然ガス、原油価格の上昇が見られる上、軍事侵攻の可能性を懸念して、グローバルに株安・債券利回りの低下やロシアからの資本逃避の動きが見られる。

 プーチン・ロシア政権の目的はウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止にある。軍事侵攻や政権転覆によってウクライナに介入する構えを見せているとはいえ、仮にロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、欧米は経済制裁を発動すると明言している。ロシア国民の不満が経済や金融の混乱によって高まることは避けられないため、プーチン政権は、軍事侵攻を踏みとどまっている。そこで、昨年12月に米国、NATOに対してウクライナのNATO加盟禁止などの安全保障要求を行い、欧米と外交協議を続けている。協議が長引けばロシアは出兵のコストが嵩む。バイデン大統領は、プーチン大統領の根負け、攻撃の逸機を窺っていると見られる。

 第2次大戦の独ソ戦(東部戦線)の経験から、ウクライナへの軍事侵攻のタイミングは地面が凍結し、戦車などの陸上車両が通行しやすくなる2~3月に限られ、地面が氷解する4月以降は軍事侵攻リスクが低下するとの観測もある。金融・商品市場においてもロシア軍のウクライナ侵攻リスクが4月以降は後退するとの見方も出てこよう。

 ただし、ウクライナに対するロシアの切り札がこれで尽きたと見るのは早計である。これまで、ロシアは、旧ソ連の周辺国に親欧米政権が発足すると、ロシア系住民や少数民族の分離独立運動を後押しし、政権に動揺を与えてきた。例えば、ジョージアでは、2003年のバラ革命以降、親欧米化が進んだが、2008年8月にロシア軍がジョージア内の分離独立勢力(南オセチア共和国、アブハジア共和国)の支援を名目にジョージア領内に侵攻した。南オセチア共和国とアブハジア共和国の独立をロシアが正式承認し、休戦後もロシア軍が進駐した。そして、現在まで事実上分離独立状態になっている。同様の展開がウクライナでも起こる可能性に注意したい。

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※続きでは、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派の独立を承認する可能性について解説しています(プレミアムプラン限定公開)。

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