「ウクライナ紛争」や「東証新市場区分への移行」など2022年株式市場の注目トピックについて、野村證券アナリストの見解をもとに紹介していきます。

(1)ウクライナ紛争

 紛争の長期化懸念が金融市場の重石となっています。グローバルなリスク回避の動きについては、ウクライナとロシアの早期停戦が成立した場合はいったん収まると考えられます。ただし、その場合でも西側諸国の対ロシア経済制裁は継続・強化されると見られ、ロシアからの資本逃避や資源調達懸念については収まらない可能性があります。

(2)原油価格の高騰

 ウクライナ紛争の混乱が落ち着かない限り、原油価格は高原状態を続けかねないと考えられます。今後の注目点として、原油高に伴う世界原油需要の減少度合いや、比較的大きな余剰能力を持つサウジアラビアとUAEの追加増産、米国によるイランの経済制裁解除の可能性、米国シェールなど非OPECプラスの増産余地などが挙げられます。

(3)インフレの影響と価格転嫁

 原燃材料高の影響は、直接的に資源価格の上昇の恩恵を受ける商社や石油、価格転嫁が進んでいる鉄鋼・非鉄や化学などの素材セクターには追い風となっています。一方、食品や化粧品・トイレタリー、家電製品など対消費者ビジネスは価格転嫁が相対的に進んでいません。上流の原油などの商品市況上昇を発端とした、川中の素材価格や物流費の上昇をいかに川下で製品価格に転嫁できているかが企業業績のポイントとなっています。

(4)新型コロナ変異株

 新型コロナウイルスによる企業業績への悪影響は、今後の感染状況次第ではありますが、徐々に改善するとの期待もあります。ただし、ワクチン接種で遅れをとる途上国での接種が進まない限り、次々に耐性を持つ変異株が発生し、先進国を含めた全世界で対応を強いられる展開が繰り返される可能性もあるため注意が必要です。

(5)米国の利上げ開始(3月)

 野村證券では、FRB(米連邦準備制度理事会)による2022年の利上げ幅は合計1.75%ポイントと予想しています。3月以降、すべての FOMC会合で0.25%ポイント幅での利上げを見込んでいます。グローバルな金融市場の反応としては、安全資産への資金シフトやエマージング諸国から米国への資金還流が起こる可能性があります。

(6)東証新市場区分への移行(4月)

 新市場区分での取引は4月4日から始まり、同時に株価指数の見直しも行われます。TOPIX(東証株価指数)には、現行東証1部市場の全銘柄が組み入れられていますが、流通株式時価総額が100億円未満の企業は段階的に除外されます。運用のベンチマークであるTOPIXの見直しは、該当銘柄の値動きに影響を与える可能性があるため注意が必要です。

(7)参議院議員選挙(7月)

 岸田政権は与党過半数維持を勝敗ラインにすると見られます。与党が過半数を維持すれば、岸田首相の求心力は一層高まります。選挙後は、首相が自ら衆議院を解散しない限り、次の国政選挙が行われるまで約3年余りの時間を確保できることになります。岸田政権が長期政権化する可能性が高まり、株式市場では政権の安定性が好感されそうです。

(8)米国中間選挙(11月8日)

 現在、バイデン米大統領と民主党の支持率は低迷しています。中間選挙前までに挽回できない場合、民主党が上下院のいずれか、ないしは上下院とも過半数を失い、ねじれ議会になる可能性があります。ねじれ議会になると、バイデン政権は多くの政策を実現できず、レイムダック(死に体)化するとみられます。中間選挙前に企図される政策が支持率の回復につながるか注目されます。

※本記事で参照したリサーチ・レポート(「FINTOS!」プレミアムプラン限定公開)

「政治レポート – 市場のイベント・リスク:2022年第2四半期~2023年第1四半期」

「米国:金融政策予想の変更 – 地政学的緊張は短期的にFRBの慎重姿勢につながろうが、中期的には政策正常化のペース加速が求められよう」

「ロシア原油が禁輸ならWTIは更に上昇へ – ロシア産原油は代替困難で需給は逼迫へ」

「産業アウトルック 2022年春号(3月) – 22年度の投資視点とインフレ・原燃材料高への対応」

「東証が新市場区分の選択結果を発表 – 東証一部上場企業の84%がプライム市場へ」

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