3月小売売上高から見た米国の個人消費動向

3月の前月比は+0.5%

 米国時間4月14日に米商務省が、2022年3月の小売売上高を発表しました。小売売上(合計)は前月比+0.5%で、ブルームバーグ集計による市場予想中央値同+0.6%を若干下回りました。

 なお、2月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同+0.3%から、同+0.8%に上方修正されました。

 前月比の数値を業種別でみると、原油価格上昇を受けてガソリンスタンドは前月比+8.9%と大きく伸びたほか、新型コロナウイルスの感染拡大の一服で飲食店が同+1.0%となりました。

 一方、オンライン小売を含む無店舗販売が同-6.4%、自動車・同部品が同-1.9%となりました。

 なお、ガソリンスタンドを除くと、小売売上高は同-0.3%でした。また、GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、3月は前月比-0.1%でした。

 前月比増加となっている業種も多いものの、ガソリン価格上昇が消費を圧迫した可能性がうかがえます。

3月の前年同月比は+6.9%

 次に、前年同月比について見てみると、小売売上(合計)は、3月は+6.9%でした。2月分については、速報値の同+17.6%から同+18.2%に上方修正されました。

 業種別では、やはりガソリンスタンドの上昇が目立ちます。また、コロナ禍の反動で、飲食店が同+19.4%と大きく伸びています。前月比では減少していた無店舗販売は、前年同月比では+1.8%でした。

3月は前年同月比が鈍化しているが

 前年同月比の推移をみると、3月に鈍化していることが目を引きます。

 小売売上高には、サービス消費は飲食店しか含まれていません。コロナの感染状況の改善で、旅行や宿泊、エンターテイメント等のサービス消費にシフトしている可能性が考えられます。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 4月14日には、4月ミシガン大学消費者マインド指数速報値が発表され、65.7と3月確報値の59.4から回復を示しました。ロイター集計によれば、4月速報値の市場予想平均は59.0でしたので、実績はこれを上回りました。

 調査元のミシガン大学は、4月は予想外に大きく伸びたが、今年1月や前年までの水準を依然として下回っているとしています。そして指数の改善は、力強い労働市場が消費者の賃金上昇に対する期待を高めていることが大きいと指摘しています。

 同調査では、消費者の期待インフレ率も調査しています。4月の1年先のインフレ見通しは前年比5.4%、5年先については同3.0%と、共に3月確報値から横這いでした。

今後の注目点

 3月は、コア小売売上高が前月比-0.1%となり、前年同月比が急速に鈍化しているなど、ガソリン価格上昇の影響が窺え、この点は留意してみていきたいと思います。一方、ミシガン大学の調査では、消費者センチメントが改善し、消費者のインフレの先行きに対する見方が一段と悪化してはいないことは注目されます。

 なおミシガン大学からは、消費者マインド指数確報値が4月29日に発表されます。29日には米商務省から、FRB(米連邦準備理事会)がインフレ指標として重視するコアPCEデフレーター(食品とエネルギーを除く個人消費支出価格指数)の3月実績が発表される予定です。そして4月分の小売売上高は5月17日に発表予定です。

 単月の指標では判断が困難なことから、これらの指標や、4月分の小売売上高の業種別の状況などを精査し、個人消費の動向を確認していきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠))

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