4月小売売上高から見た米国の個人消費動向

4月の前月比は+0.9%

 米国時間5月17日に米商務省が、2022年4月の小売売上高を発表しました。小売売上(合計)は前月比+0.9%で、ブルームバーグ集計による市場予想中央値同+1.0%を若干下回りました。

 なお、3月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同+0.5%から、同+1.4%に大幅上方修正されました。

 業種別にみると、3月には伸び率が突出していたガソリンスタンドが前月比-2.7%と大きく減少したことが目につきます。4月にはガソリン価格が一時的に下落したことが影響した模様です。

 一方、3月には前月比減少していたオンライン小売を含む無店舗販売や百貨店、自動車・同部品などが前月比増加したほか、多くの項目で前月比増加しています。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、4月は前月比+1.0%でした。

4月の前年同月比は+8.2%

 次に、前年同月比について見てみると、小売売上高(合計)は、4月は+8.2%でした。3月分については、速報値の同+6.9%から同+7.3%に上方修正されました。

 業種別では、引き続きガソリンスタンドの上昇が目立ちます。ガソリン価格は、前年同月比では上昇が続いています。また、コロナ禍の反動で、飲食店が同+19.8%と3月に引き続き大きく伸びています。3月には速報値で前年同月比+1.8%まで鈍化していた無店舗販売は、同+12.7%と二桁台の増加率となりました。

前年同月比は3月の落ち込みから回復

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計) は、2月の+17.7%から3月速報値では同+6.9%に鈍化していました。今回の発表では3月改定値は同+7.3%に上方修正され、4月速報値は同+8.2%となりました。

 無店舗販売は、2月の同+14.4%から3月速報値では同+1.8%にまで大きく鈍化していました。3月改定値は同+5.2%に上方修正され、今回発表された4月速報値は同+12.7%と、再び二桁台の伸びとなりました。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 5月13日には、ミシガン大学消費者マインド指数速報値が発表されました。5月速報値は59.1と、4月確報値の65.2から低下しました。

 消費者の期待インフレ率調査については、5月速報値の1年先のインフレ見通しは前年比5.4%、5年先については同3.0%と、共に3月、4月確報値から横這いでした。

 インフレにより消費者マインドはやや悪化しているものの、インフレ期待には加速はみられませんでした。

今後の注目点

 3月小売売上高が発表された際、小売売上高(合計)、無店舗販売共に前年同月比が鈍化していたことから、①インフレ高進に伴い消費が影響を受けていることと、②モノからサービスへ消費がシフトしている可能性、が考えられました。

 今回発表された前年同月比は、3月分は速報値から上方修正され、4月は3月よりも伸び率が加速しています。また、業種別の動向をみると、無店舗販売のほか、全般的に増加しています。ガソリンスタンドでの支出が大きく伸びていることや、飲食店の伸び率が高いことから、上記2要因の影響は相応にあるとは見られますが、個人消費には堅調さがうかがえます。

 なお、サービスへの支出も集計している個人消費支出統計の4月分は5月27日に発表されます。次回、5月分の小売売上高は6月15日に発表予定です。発表された際には、業種別の内容などを精査し、個人消費の動向を確認していきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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