欧米株などと比較して、日本株のPBRやPERが低いとの指摘があります。株価が低いことで企業にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。野村證券投資情報部の大坂隼矢ストラテジストが解説します。

そもそもなぜ日本株は割安なのか

 PBRやPERが低いことは利益や純資産に対して株価が低いということなので、(実力に比して)「資金調達力が低い」「買収されやすい」などの問題点があげられます。その他、株価が高ければ(企業価値の高い企業には)それだけ企業への信頼が高まり、優秀な人材や他の企業との提携などもスムーズに進むかもしれません。また、企業の持ち主は「株主」であるため、経営者としては企業価値を向上させ株主に満足してもらうという要因もあるでしょう。PBRの分母は、株主の持ち分である自己資本ですので、株主からするとPBR1倍割れは受け入れがたい評価だと言えます。

 そもそも日本株のPBRが欧米株より低い要因を考えてみたいと思います。PBRは経営の効率性(ROE)と企業の成長期待(PER)から構成されます。

※PBR=PER×ROE ⇒ 株価/BPS=株価/EPS×EPS/BPS

 PERを上げるには当たり前ですが株価が上昇すること、つまり収益期待(人気)を高めることが必要です。一方、ROEは企業が株主の持ち分である自己資本に対しどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。PBRをあげるためには、短期的な収益性をあげるだけでなく、ROEを高めることで収益期待を向上させることが必要になります。現在、米国株の予想ROEは20%程度、欧州が14%程度であるのに対し、日本は10%程度となっています。

 グローバル競争力という観点で、日本株のPBRやPERが米国などと比較し低いという問題意識は、経済産業省の審議会・研究会などでも議論されています。企業がROEを高めるためには、事業売却などによる構造改革を実施した上で、売却資金や内部留保を活用し、高い収益性・成長性の見込める事業への投資を積極化させていくことが必要です。あくまで希望的な観測ですが、企業がROEを意識した経営を実施し、成長投資が積極化すれば、米国のように、出資⇒回収⇒再投資の循環が持続し、数多くのイノベーションが生み出されるかもしれません。

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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