2022年5月(5月2日~5月27日、以下同)の主な投資部門別の売買動向を現物と先物の合計で概観すると、事業法人や信託銀行などが買い越した。売り越した投資部門は海外投資家や証券自己、生損保などであった。

 事業法人は5,332億円を買い越し、当月の最大の買い越し部門となった。企業の自社株買いが背景にある。22年4~5月の自己株式取得枠設定額(全上場企業、普通株ベース)は4兆2,033億円と、4~5月の合計としては過去最高となった。

 信託銀行は3,087億円を買い越した。株安を受けた年金基金のリバランス(資産配分の見直し)買いが背景と見られる。

 海外投資家は6,049億円を売り越した。特に5月第2週の売り越し額が7,532億円と大きかった。同週は米国消費者物価指数の発表(5月11日)があり、米国インフレ動向に対する警戒感が高まりやすかったと見られる。一方で、月後半にかけて売り越しは縮小し、5月第4週には2,543億円の買い越しに転じた。買い越しの中心は先物で2,911億円を買い越した。海外投資家の先物売買動向は中国製造業景況感と連動性が高かったことを踏まえると、上海ロックダウン(都市封鎖)解除への期待が高まった可能性がある。

 生損保は1,514億円を売り越し、21年4月以来の売り越し額の大きさとなった。22年度資産運用計画において国内株式を削減する方針を示している国内主要生保もあることから、運用計画に沿った売買であった可能性がある。

(市場戦略リサーチ部 藤 直也)

※ 野村週報 2022年6月13日号「株式需給」より

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