7月小売売上高から見た米国の個人消費動向

7月の前月比は0.0%

 米国時間17日に米商務省が、2022年7月の小売売上高を発表しました。小売売上(合計)は前月比0.0%と横這いで、ブルームバーグ集計による市場予想中央値同+0.1%、ロイター集計の同+0.1%など、若干の増加予想をしていた市場予想に対し下回りました。

 6月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同+1.0%から+0.8%に下方修正されました。

 業種別にみると、オンライン小売を含む無店舗販売が前月比+2.7%と大きく伸びています。アマゾン・ドットコムが7月に開催した、販促活動のプライムデーが押し上げた模様です。そのほかでは、建設資材・ガーデニング用品などが伸びています。

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 一方、ガソリンスタンドが同-1.8%と減少しています。直近のガソリン価格の下落が影響している模様です。また、自動車・同部品が同-1.6%となっているほか、総合小売や衣料品、百貨店などで減少しています。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、7月は前月比+0.8%で、6月の同+0.7%から若干加速しました。

7月の前年同月比は+10.3%

 次に前年同月比について見てみると、小売売上(合計)は、7月は+10.3%でした。6月分については、速報値の同+8.4%から同+8.5%に上方修正されました。

 業種別では、ガソリンスタンドの増加が目立ちます。足元ではガソリン価格は下落していますが、前年同月比ではまだ高い状態が続いています。

前年同月比は増加が続く

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は3月に+7.1%と、2月までの二桁増から鈍化し、その後は一桁後半の増加が続いていましたが、7月は+10.3%と再び二桁増となりました。

 無店舗販売が7月に+20.2%と、伸び率が大きくなっています。2021年にはアマゾン・ドットコムのプライムデーは6月に開催されていたので、前年比効果が大きく出ていると推察されます。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 8月12日には、ミシガン大学消費者マインド指数が発表されました。8月速報値は55.1で、7月確報値の51.5から一段と回復しました。

 消費者の期待インフレ率調査については、8月速報値の1年先のインフレ見通しは7月確報値の前年比5.2%から5.0%に低下しましたが、5年先については2.9%から3.0%に上昇しました。

 調査元のミシガン大学は、長期のインフレ見通しは低下しつつあるものの、引き続き48%の回答者が、インフレが生活水準を低下させていると回答しているとしています。

今後の注目点

 前述の通り、7月の小売売上(合計)は前月比が市場予想を若干下回りましたが、コア小売売上高は前月比+0.8%と6月の同+0.7%から若干増加しており、足元でも個人消費は堅調さを保っていると推察されます。

 ただし、小売売上高の数値は、インフレにより金額が押し上げられている可能性も考えられます。直近発表された小売大手のウォルマートやターゲットの決算では、食料品など生活必需品の売上は比較的堅調な一方、家電製品など必ずしも生活必需品とはいえない裁量的品目の売上に鈍さがみられるなど、消費者の購買行動に、インフレにより実質可処分所得が目減りしている影響が垣間見えます。

 いずれにせよ、単月の数値では判断が難しいことから、今後もインフレや個人消費関連の指標は注意してみていきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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