引き続きインフレの影響には留意

8月の前月比は+0.3%

 9月15日に米商務省が、2022年8月の小売売上高を発表しました。小売売上(合計)は前月比+0.3%で、ブルームバーグ集計による市場予想中央値同-0.1%、ロイター集計の同横這いなど、市場予想を上回りました。7月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の同横這いから同-0.4%に下方修正されました。

 業種別では、自動車・同部品が同+2.8%と伸び、建設資材・ガーデニング用品が同+1.1%となっています。一方、ガソリンスタンドは同-4.2%となっていて、直近のガソリン価格の低下によるものとみられます。また、オンライン小売を含む無店舗販売が前月比-0.7%と減少しています。アマゾン・ドットコムが販促活動のプライムデーを、昨年の6月に対し今年は7月に開催した反動が出た模様です。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、8月は前月比横ばいで、7月改定値の同+0.4%から伸び率は鈍化しました。

8月の前年同月比は+9.1%

 次に前年同月比について見てみると、小売売上(合計)は、8月は+9.1%でした。7月分については、速報値の同+10.3%から同+10.1%に下方修正されました。

 業種別では、ガソリンスタンドが前年同月比+29.3%と増加が目立ちます。足元ではガソリン価格は下落していますが、前年同月比ではまだ高い状態が続いています。また、前月比では減少していた無店舗販売が、前年同月比では+11.2%となっています。引き続き需要は堅調とみられ、前月比での減少が、アマゾン・ドットコムのプライムデーの実施時期の影響であったことが窺えます。そのほかでは、飲食店が同+10.9%となっていて、コロナ禍による外出自粛の反動が出ている模様です。

前年同月比は増加が続く

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は3月に+7.1%と2月までの二桁増から鈍化し、その後一桁後半の増加が続いていましたが、8月は+9.1%とその傾向が続きました。

 無店舗販売は、7月には+18.4%と大きく伸びましたが、8月は+11.2%となっています。これは、前述のアマゾン・ドットコムのプライムデーの開催時期の影響と推察されます。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 ミシガン大学の消費者マインド調査についてみてみると、8月26日に発表された8月確報値は58.2と、7月確報値の51.5から一段と回復していました。

 消費者の期待インフレ率調査については、8月確報値では、5年先のインフレ見通しは2.9%と、7月確報値からほぼ横ばいでした。一方、1年先のインフレ見通しは4.8%と、7月確報値の5.2%から低下していました。

 消費者の期待インフレ率調査については、8月確報値では、5年先のインフレ見通しは2.9%と、7月確報値からほぼ横ばいでした。一方、1年先のインフレ見通しは4.8%と、7月確報値の5.2%から低下していました。

 9月ミシガン大学消費者マインド指数速報値は9月16日に発表されます。消費者マインドに加え、インフレに対する見通しが、足元でどう変わっているか、注目されます。

今後の注目点

 前述の通り、8月の小売売上高(合計)の前月比は、横ばいから減少を予想していた市場予想平均を上回り、足元でも個人消費は堅調さを保っているとみられます。ただし、小売売上高の数値はインフレ等を調整していないことから、インフレにより売上金額が押し上げられている可能性が考えられます。また8月は、ガソリン価格の下落が他の消費を押し上げていることも考えられます。

 なお、9月12日にはマスターカードが、2022年の年末商戦期間(11月1日~12月24日)における小売売上高は、前年同期比+7.1%との予想を発表しました。前年の同+8.5%から鈍化する予想となっていますが、消費者が10月など早期に行われる割引を多用するなど、インフレに対応した行動をとることが影響するとのことです。年末商戦に関しては例年、NRF(全米小売業協会)なども見通しを発表しています。今後、それらも参考に、個人消費の動向を確認していきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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