ゲーム対戦の大会開催や動画配信などにプロ選手が登場して久しい。プロを認定する機関や大会運営者などの事業者が参画し、コンテンツとして成熟してきたことから、足元では大会開催から配信までをe スポーツと呼称し、注目が集まっている。

 日本におけるe スポーツの市場規模は、一般社団法人日本e スポーツ連合によると、2020年度の67億円から24年度に184億円まで拡大することが見込まれる。

 主なプレイヤーは、チームや選手などeスポーツ競技の参加者や、ストリーマー(eスポーツのライブ映像を配信・編集、実況・解説する人)、コアファン、大会主催者、ゲーム制作会社、施設運営者などである。なかでも、音楽イベントなどの制作会社がe スポーツの大会運営を受注するなど業容を拡大している。

 足元ではスポンサー収入が最も大きい収入源で、20年度の市場規模の67%を占める。今後注目される収入源は、動画配信における広告収入や投げ銭収入であろう。

 e スポーツの選手は、日々の練習やファンとの対戦の動画をユーチューブなどの動画プラットフォームで配信する。視聴者層は、生まれが1990年代後半から2010年代初頭までのZ世代や、1980年代初頭から90年代半ばまでのY 世代が多い。

 特に、Z 世代はY 世代と比較して、e スポーツの選手に動画内でメッセージを送信したり、ツイッターなどのアカウントに直接メッセージを送ったりして、相互にコミュニケーションを取ることに積極的である。e スポーツ選手とのコミュニケーションが憧れに昇華し、身につける衣服や使用するヘッドフォン、ゲーミングチェア、ゲーミングPC などの購買に繋がることもある。e スポーツ選手がZ 世代向けのインフルエンサー(影響力を持つ人物)となる可能性がある。

 企業にとっては、e スポーツ選手へのスポンサー出資がZ 世代の消費者を囲い込む有望な広告戦略となろう。マス広告と比較して、eスポーツ選手への出資は、Z世代の消費者とのコミュニケーションにつながりやすく、自社商品へのロイヤリティ(愛着心)向上も期待できる。

 eスポーツが、Z世代向けのインフルエンサーを輩出するコンテンツとして拡大することに期待したい。

(フロンティア・リサーチ部 俣野 洸太郎)

※野村週報 2022年11月7日号「新産業の潮流」より

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