太陽誘電(6976) 電気機器

MLCC は自動車向け出荷増でシェア上昇 

 当社は、基地局や自動車用途の積層セラミックコンデンサ(MLCC)の出荷が増加し、1年を通じて工場稼働率が高止まりするようになってきた。高い収益性が安定して維持されることで、現金創出力が増した結果、設備投資を継続して行えるようにもなり、市場シェアは上昇傾向にある。

 MLCCは、自動運転や電動車両(EV)の増加によって、1台あたり搭載数量の増加が見込まれる。従来型自動車では、2,000個程度が平均的な使用個数であったが、レベル3の自動運転機能を兼ね備えた、最新のEV では1万個を上回る搭載となる。モータ制御用インバータなどに加え、車載コンピュータ向けに搭載数が増える。

脱炭素化で売上と利益成長を両立しよう 

 設備能力の増強に加え、今後は製品構成の改善が経営戦略の肝になろう。当社は、自動車向けでは後発企業であり、現状ではインバータや車載コンピュータでの採用実績は未だ少ないと見られるが、納入実績が増え、信頼性評価が増してくれば、これら用途市場での新規参入が視野に入る。第5世代の通信方式に対応した基地局向けでは、温度変化に対応した特殊仕様のMLCCが数多く求められるだろう。

 脱炭素化の潮流に乗り、MLCCは、今後10年程度は年間1桁半ばから後半の需要増加が見込まれる。当社は限られた設備能力を、高付加価値品に振り向け、売上と利益成長を両立すると見ている。

(秋月 学)

三井住友フィナンシャルグループ(8316) 銀行

親会社株主利益は通期計画を超過

 当社が2月2日に発表した2021.3期第3四半期(3Q)決算は、親会社株主利益で会社計画を超過する等好調な推移となった。親会社株主利益は、3Q 累計で4,339億円と通期計画4,000億円を既に超過した。与信費用の低位推移の寄与が大きいが、連結業務純益も通期計画比84%の進捗率と本業収益も順調に推移。与信費用(連結)も、落ち着いた動きとなり、3Q累計は、通期計画対比で52%の進捗率と低位にとどまった。不良債権比率も足元横ばい圏で推移。グループ会社利益についても、証券、消費者金融のいずれも2Q比でモメンタム(増勢)を改善、前年同期比でも420億円増益(2社合算当期純利益)と健闘している。

中期経営計画の取組み等に注目

 短期的には、5月中旬の21.3期本決算発表に向けて、新型コロナ影響が会社想定で収まるか、経済・市場が落ち着いてきたときに高い自己資本比率を有する当社の株主還元策に注目が集まるだろう。

 また、中期経営計画で資源投入するグローバル企業金融(CIB)や資産運用ビジネスが早期に立ち上がるか、経費削減策の実現ペースに野村では注目している。長期的には、各種の新規・提携事業、具体的には、ペイメント事業、デジタル関連中心の新規事業が利益貢献するか、太田純社長の企業文化変革・社内コミュニケーション活性化の取組み等が構造改革を加速化させるか、等についても注目したい。

(高宮 健)

SOMPO ホールディングス(8630) 保険

新型コロナ影響も通期増益確保の模様 

 新型コロナ影響を受けつつも、2021.3期第3四半期累計修正連結利益(会社定義)は前年同期を上回った。新型コロナ影響は国内では自動車事故の減少による自動車保険の保険金支払いの減少が増益に、海外では信用保険など損害悪化による保険金支払い増加が減益に作用した。

 前中期経営計画の最終年度であった21.3期の修正連結利益は前期比で増益を確保したと野村では推定している。当社は「安心・安全・健康のテーマパーク」をスローガンに掲げ、その実現に向けた取り組みを行っている。保険事業に限らず、前中計期間中はヘルスケアやデータ、プロパティなどの事業領域を拡大した。

データ利活用の広がりに注目

 22.3期開始予定の新中期経営計画では現在の改革の方向性は変えず、リアルデータプラットフォームの活用による顧客価値の創造を進めることで成長と収益性を追求するとしている。当社は19年11月にデータ解析大手の米Palantir と合弁会社を設立、以後はPalantir の技術と当社が持つリアルデータを活用したソリューションの創出を目指している。前中計ではまず、介護事業においてデータ解析を通じた生産性向上に取り組んだ。当社はデータ戦略を新たな収益源とすることも目標としている。新中計では損保事業や生保事業においてもデータ活用の事例が広まり、新たなビジネスモデル構築を期待したい。

(坂巻 成彦)

※野村週報2021年4月12日号「銘柄研究」より

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