厚生労働省は、賃金や労働時間等を調査した「毎月勤労統計」を公表している。1人あたりの賃金は2022年7~9月平均で前年同期比+1.7%となった。一方、物価高の影響を差し引いた実質賃金は同-1.7%だ。実質賃金は9月まで6カ月連続で前年同月比マイナスが続いている。名目賃金は緩やかな上昇を続けているものの、資源価格の高騰や円安による物価上昇のペースに追いついていない状況だ。

 賃金は、所定内給与(基本給)と所定外給与(残業代)、特別給与(賞与等)の3項目に分けることができる。項目別にみると、所定内給与は22年7~9月平均で前年同期比+1.2%、所定外給与は同+5.2%、特別給与は同+2.8%となった。

 所定内給与は、賃金全体に占める割合が3項目の中で最も大きく、賃金の基調的な動きを決定づける重要な項目だ。22年の春闘でのベースアップ増加などを反映して、足もとでは緩やかな上昇を続けている。

 所定外給与は、労働時間に応じて変動するため、好景気で残業が多くなると増加する傾向にある。20年には新型コロナの影響で大きく減少したが、経済活動の再開に伴い、足もとでは増加している。また特別給与の増加は、22年夏におけるボーナスの増加を反映している。

 23年春頃まで、名目賃金は現在のペース(1%台半ば程度)で上昇が続くだろう。一方、食品等を中心にインフレも継続し、実質賃金のマイナスが継続するだろう。今後、物価高をカバーする賃金上げが実現するのか、カギとなるのは23年2月から実施される春闘だ。労働組合の中央組織である連合は、23年の賃上げ目標を定期昇給含め5%とし、例年より1%引き上げた。賃上げを求める動きに対し、企業がどの程度応じるのか注目したい。

(経済調査部 野﨑 宇一朗)

※野村週報 2022年11月21日号「経済データを読む」より

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