ハウスクリーニング、庭の手入れ、写真撮影などの個人向けサービスを、EC(電子商取引)サイトで取り扱うプラットフォーマー(運営事業者。以下、PF)の動向に注目している。

 個人がサービスEC で日常生活に関連した作業や困りごとをプロの事業者に依頼するようになりつつある。

 従来、個人がサービスを事業者に依頼する場合、適切な事業者を探して見積もりを取るまでに、多くの時間と労力がかかっていた。事業者も、集客や見積もりの作成などに時間と労力を割く必要があり、労働生産性が低下する要因となっていた。

 サービスECのPFは、事業者を審査、指導するとともに、利用者が事業者を評価する制度も備えているため、個人はサイトでの検索もしくは簡単な質問に回答するだけで、適切な事業者をすぐに見つけられる。さらに、損害補償制度やサービス品質に満足できないときの返金制度などによって、個人の利用のハードルを下げている。

 一方、事業者は事前にサービスの価格や対応地域などの条件をサービスEC で設定、登録しておけば、利用者とのやりとりをある程度自動化でき、集客における業務負担を軽くすることができる。

 サービスECのPFであるミツモアやユアマイスターは、事業者に対して集客の支援をするだけでなく、業務の効率化を支援するSaaS(Software as a Service)も提供し始めている。SaaS の機能としては、受注案件やスケジュールの管理、顧客情報の管理、報告書の作成、収益の管理などを備えている。事業者は、サービスEC からの集客や各種管理業務を効率化するSaaSの導入によって、作業や施工などの業務により多くの時間を割くことができるようになり、労働生産性を改善できる。

 サービスEC のPF が取り扱う個人向けサービスの品揃えはロングテール型(販売機会の少ない商品でも幅広く取り揃えること)であり、多様なニーズに対応できる。利用者が増えるほど多様な事業者の登録が増え、利用者増を促進するプラットフォーム効果が期待できよう。足元ではサービスECのPFによる利用者獲得競争が始まっており、数年のうちに優勝劣敗が進むだろう。今後の事業展開に注目したい。

(フロンティア・リサーチ部 高比良 正幸)

※野村週報 2022年11月21日号「新産業の潮流」より

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