自動運転技術の向上に伴い法制度整備が進む
主要国では、高度な自動運転の実用化に向けて、走行試験や法制度整備などが行われています。ドイツでは2021年、世界に先駆けて、特定の条件下で運転を完全に自動化するレベル4の自動運転を公道で可能にする法案が可決されました。
日本でも2022年10月、警察庁がレベル4の無人自動運転サービスの許可制度を含めた改正道路交通法を、2023年4月1日に施行する予定と発表しました。こうした法制度の普及による知見の集積で自動運転技術開発が進むことも期待されます。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成
商業サービスの分野で先行
自動運転の実用化は、商業サービスの分野で先行しています。2021年に米ウォルマートが、米国アーカンソー州の配送ルートで、シリコンバレーのスタートアップであるガティック社製の完全無人運転トラックによる食品の配達を開始したと発表しました。
また、2022年に入り、米GM子会社のクルーズや中国ネット検索大手バイドゥーが、特定地域での完全無人運転タクシーの試験営業を開始するなど、実用化に向けた動きが加速しています。
自動運転の実用化に向けて各分野の技術革新に期待
自動運転は、自動車が人に代わって走行環境や車両の状態を的確に把握することが求められます。標識や白線などの画像を認識するカメラ、障害物との距離を測るミリ波レーダー、それらを補うLiDARといったように、特長の異なるセンサーが多数必要となります。かつ、自動運転レベルの進展とともに、その搭載数は増加します。
(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成
足元では、実際の道路だけではなく、仮想空間での走行試験なども活発化しています。より高度な自動運転の実現に向けて、各種センサーや半導体、シミュレーション向けソフトウェアなどを手がける企業の動向が注目されます。
ご参考: 自動運転関連企業の一例
・ソニーグループ(6758)
スマホ用CMOSセンサーでトップシェアを誇る。CMOSイメージセンサーで培った技術を活用しLiDARの開発を手がける。
・デンソー(6902)
ミリ波レーダー、カメラなどを幅広く手掛け、センサーフュージョン技術も有する。
・村田製作所(6981)
ADASに用いられるセンサーや無線通信モジュールなど様々な関連製品を提供している。
・エヌビディア(A2369/NVDA US)
パソコン・ゲーム向けの画像処理半導体(GPU)が主力。高い演算能力を持つGPUとそのプラットフォームは、世界の自動車・部品企業で自動運転技術の研究開発に利用されている。
・アンシス(A3826/ANSS US)
車両の走行シミュレーション向けソフトウェアを提供している。バーチャル空間上で様々な走行条件を想定したシミュレーション走行が可能で、実車による試験走行を補完する役割を担っている。
・トリンブル(A4021/TRMB US)
乗用車の自動運転システムやトラクターの運行支援システム向けに高精度GPS(全地球測位システム)を提供する。
・オン・セミコンダクター(A4143/ON US)
車載用のCMOSイメージセンサーで世界トップの半導体メーカー。センサー全般の製品ラインナップを持つ。
・NXPセミコンダクターズ(A5877/NXPI US)
世界トップクラスの車載半導体メーカー。自動運転に搭載されるセンサーなどに強みを有する。
・アンバレラ(A6291/AMBA US)
動画処理向けのSoC(注1)を開発している。当社のSoCは車載用カメラにも搭載され低電力消費、高解像度を実現している。
・モービルアイ・グローバル(A7675/MBLY US)
米インテル傘下で、運転支援のための画像処理半導体やソフトウェアを手掛けている。研究開発本部をイスラエルに構えている。
・インフィニオン・テクノロジーズ(G0333/IFX GY)
車載・産業向け半導体メーカー。センサー分野でLiDARやカメラなどを取り扱う。デンソーも同社に出資している。
(注1)SoC(System on a Chip)は、CPUやメモリーなどの周辺回路を1つのチップに集積した半導体素子。 (注2)全てを網羅しているわけではない。外国株式コードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成