WSTSの2022年秋季世界半導体市場予測

8月時点予測よりも下方修正

 米国時間11月29日にWSTS(世界半導体市場統計)が、2022年秋季の半導体市場の見通しを発表しました。8月22日時点の見通しから下方修正されています。

 半導体市場全体の販売額については、2022年は前年比+4.4%の5,801億ドルと、小幅ながら拡大が続く予想となっています。しかし2023年については、同-4.1%の5,566億ドルと、マイナス成長が予想されています。8月時点では、2023年は市場全体としては拡大が続く予想となっていました。

2023年は縮小も後半から回復見込む

 世界の半導体市場は2019年にマイナス成長となった後、2020年は前年比+6.8%とプラスに転じていました。新型コロナウィルス感染症拡大に伴う巣籠り需要等が牽引し、世界経済の低迷による影響を打ち消しました。

 2021年は、2020年に半導体市場を牽引したプラス要素が継続し、またワクチン接種の進展に伴う経済活動の再開もあり、半導体は幅広く需要が拡大し、市場規模は過去最高を更新していました。

 2022年は、年初は2021年の流れを引き継いで好調が継続していたものの、2年あまり続いた在宅特需の一巡に加え、世界的なインフレの進行や、中国の都市封鎖(ロックダウン)、ウクライナ紛争の長期化などが相俟って、特に個人向けの電子機器需要が低迷したとのことです。

 2023年は、前半は市況悪化の影響が継続する見込みとしています。しかし、5G・IoT化の進展やそれに伴うデータセンター能力拡張の必要性など、半導体の潜在需要は引き続き強く、これらが年後半の市場回復を牽引するとしています。また、自動車の電動化・高性能化、再生エネルギー投資などの需要が半導体需要を下支えするとしています。

メモリーの不調が目立つ

次に、製品別の動向をみると、集積回路の中のメモリー(記憶媒体)が、2022年は前年比-12.6%、2023年は同-17.0%と大幅なマイナス成長となっていることが目につきます。8月時点の予測からの修正動向をみても、メモリーの修正度合いが目立ちます。

 メモリーはパソコンやスマートフォンなどに多く使用されることから、在宅特需の一巡などによる個人向け電子機器の需要低迷が、予測に反映されている模様です。

自動車や産業機器用途は相対的に堅調

 半導体市場全体が減速する中、比較的堅調な製品群もあります。ディスクリート(トランジスターやダイオード、コンデンサーなど)、オプトエレクトロニクス(光を電気信号に変換したり、電気信号を光に変換する素子。CCDや赤外線素子、レーザー素子など)、センサー(自動車のエアバッグやゲームのコントローラーに使われる加速度センサー、温度センサーなど)は、2023年にかけてプラス成長が続く見通しとなっていて、8月時点の予想からの下方修正幅も限定的か、上方修正となっています。

 WSTSは、2022年は半導体市場の成長が大幅に減速すると予想する一方、自動車や産業機器用途は相対的に堅調で、半導体市場の下支え要因となっているとしています。また前述の通り、2023年も自動車分野などにおける需要拡大が見込まれており、これらの要因が予想に反映されていると推察されます。

地域別ではアジア太平洋がマイナス成長

 地域別の動向をみると、米欧日は2023年まで小幅ながらもプラス成長が予想されていますが、アジア太平洋は2022年、2023年ともにマイナス成長が予想されています。

 パソコンやスマートフォンなどの電子機器の生産は、中国を含めたアジア太平洋地域に集中している一方、米欧日では自動車や産業機器の生産が相対的に多いことから、堅調に推移すると予想されていると推察されます。

 今後は、製品別の需要動向に加え、米国による対中半導体規制強化の影響が、どのような形で地域別や製品別の動向に表れてくるか、などについても注意してみていきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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