11月小売売上高から見た米国の個人消費動向

11月の前月比は-0.6%

 12月15日に米商務省が、2022年11月の小売売上高を発表しました。

 小売売上高(合計)は前月比-0.6%でロイター調査の市場予想の同-0.1%、ブルームバーグ調査の同-0.2%を大きく下回りました。なお、10月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の前月比+1.3%で据え置かれました。

 業種別にみると、飲食店が前月比+0.9%、食品・飲料が同+0.8%、健康用品が同+0.7%などとなっています。

 一方、インターネット小売を含む無店舗販売が同-0.9%となったほか、百貨店が同-2.9%、家具が同-2.6%、建設資材・ガーデニング用品が同-2.5%、自動車・同部品が同-2.3%、電気製品が同-1.5%など、多くの業種で前月比減少となっています。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、11月は前月比+0.7%と、10月改定値の同+0.6%から伸び率は拡大しました。

11月の前年同月比は+6.5%

 次に前年同月比について見てみると、小売売上高(合計)は、11月は+6.5%でした。10月分については、速報値の同+8.3%で維持されました。

 業種別では、ガソリンスタンドが前年同月比+16.2%となっているほか、飲食店が同+14.1%、食品・飲料が同+8.1%、無店舗販売が同+7.7%などとなっています。

 一方、電気製品が前年同月比-4.4%、家具が同-3.2%、百貨店が同-3.0%と減少しています。

前年同月比は増加が続くが

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は、11月は+6.5%と、引き続き一桁台後半の伸びが続いていますが、10月の同+8.1%から伸び率が鈍化しています。

 無店舗販売は、10月の前年同月比+10.3%から11月は同+7.7%へと、一桁台に伸び率が鈍化しています。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 12月9日に発表された、ミシガン大学消費者マインド調査の12月速報値は59.1と、11月確報値の56.8から上昇しました。

 消費者の期待インフレ率調査については、5年先については11月23日に発表された11月確報値の3.0%と同水準でしたが、1年先については4.9%から4.6%に低下しました。

 消費者の期待インフレ率は落ち着きを見せ、消費者マインドも11月の落ち込みから改善を示しています。今後もこの動向については注意してみていきたいと思います。

今後の注目点

 前述の通り、11月小売売上高は、前月比は多くの業種で減少し、前年同月比では電気製品、家具、百貨店で減少するなど、比較的値が張る商品を扱う業種で減少していることが目につきます。

 また、前年同月比の推移をみると、月を追うごとに徐々に伸び率が鈍化している点も気になります。

 今年の年末商戦は、全般的に時期が前倒しとなっていることから、その影響が出ていることが、要因の一つとして考えられます。ただし、インフレの影響や、景気後退への懸念から、個人消費が影響を受けている可能性も考えられ、この点については、今後も注意してみていきたいと考えます。

 次回、12月小売売上高は2023年1月18日に発表される予定です。12月は年末商戦の最盛期でもあることから、発表された際にはその内容を精査し、米国個人消費の動向を確認していきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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