2021年3月景気ウォッチャー調査で景気の現状判断DI は前月差+7.7ポイント(以下pt)の49.0と、大きく上昇した。内訳を見ると、家計動向関連が47.3(前月差+8.4pt)、企業動向関連が50.8(同+5.0pt)、雇用関連が56.9(同+9.6pt)といずれも上昇した。景況感の判断理由を見ると、受注や販売量の回復を指摘するコメントが多い。特に人出の増加を指摘するコメントでは、その背景として3月の緊急事態宣言解除を挙げるものが多く見られる。

 一方、景気の先行き判断DIは前月差-1.5pt と4カ月ぶりに悪化し49.8となった。内訳を見ると、家計動向関連が49.0(前月差-2.2pt)、企業動向関連が50.9(同-0.5pt)、雇用関連が53.0(同+2.0pt)であった。先行き判断理由を見ると、景気の回復や新型コロナウイルス(以下コロナ)のワクチン普及への期待を指摘する向きがあるものの、感染拡大第4波への懸念がそれを上回った模様だ。

 4月に入ってから、政府は東京都、大阪府など一部地域にまん延防止等重点措置の適用を決定した。緊急事態宣言よりも地域を限定して感染拡大を封じ込める試みであるが、3月にかけ回復した人出を再び抑制する方策であり、個人消費への下押し圧力が強まる可能性が高い。景気の現状判断DIは3月にかけ回復してきていたが、4月以降に回復が足踏み、ないしはやや悪化する可能性を見ておいた方がよいだろう。

 感染拡大第4波以外にも、輸送用機械器具製造業のコメントで、半導体不足による自動車減産及びその影響への懸念が指摘されている。野村では、4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は緊急事態宣言の再発令で弱含んだ1~3月期から反発すると見ているが、その反発力は従来の見立てよりも下振れる可能性が高まっている。

(棚橋 研悟)

※野村週報2021年4月19日号「経済データを読む」より

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