米国市場はホリデーシーズン入りし閑散模様、12月26日(月)はクリスマスの振替休暇です。そして、米国市場は1月2日(月)から再開、日本の三が日などお構いなしで主要指標の発表が始まります。一休みして2022年を振り返るには、今週がチャンス…そこで今回は通常の記事をお休みし、「2021年」「2022年」に動いたセクター・個別株を合わせて振り返ることで、2023年を見通すヒントになればと考えます。

 2年間、①米国株全体がどんなパフォーマンスだったのか? ②米国株の中ではどんなセクターが動いたのか?③主要な個別株はいくら上がった/下がったのか?をデータでご紹介します。

以下、図中に出てくる数値:2021年:2020/12/31~2022/12/31の騰落率、2022年:2021/12/31~2022/12/22の騰落率。ブルームバーグより野村證券投資情報部が作成。セクターはS&P500のGICS24業種分類ベース、個別株はS&P100組入銘柄。

①米国株全体のパフォーマンス

2021年は「米国株絶好調」の年だった

2022年は米株低調…ロシア株に次ぐ低成績のナスダック

 振り返るとS&P500ベースの年間騰落率は、2021年:+26.9%→2022年:-19.8%と、ほぼ”いってこい”(2020年末比で+2%程度)の水準となっています。2022年の騰落率では、ナスダックに至ってはマイナス圏、ロシア株に次ぐワーストパフォーマーでした。ただし、日本在住の米国株投資家にとっては円安ドル高の影響も大きく、運用収益はプラスという投資家の方も多いかもしれません。

 なお、敢えて2022年のグローバルな勝ち組を挙げるとすれば、(通貨安の反動による株高となっているトルコを除けば)インド株となるでしょうか。低調な中国市場の隣で、比較的高い成長を維持したことなどを背景に堅調に推移しました。

①セクターのパフォーマンス

2021年は、ハイテクや金融緩和の恩恵を受ける銘柄が好調

2022年は、「ディフェンシブセクター」がかろうじてプラス圏

 2021年は金融緩和の恩恵を受け、半導体やテクノロジーなどグロース銘柄に光が当たりました。また、自動車などの産業でも、エネルギー価格高騰を背景にEVへの注力を材料とした株価上昇がみられました。一方、それらのセクターは2022年に軒並み低調となりました。FRB(米連邦準備理事会)が金融緩和から金融引き締めへと政策転換したことが、セクター間で見える景色が逆転した主因だと言えます。「株式の価値は、現在価値に割り引いた将来の利益の総和」との考えに基づけば、金利の上昇の悪影響は遠い将来の利益であればあるほど大きくなります。グロース株とは、その名の通り成長…将来の大きな利益に期待が集まる株式であることから、金利が上昇した2022年には大きく下押し圧力を受けました。一方で、供給制約とウクライナ紛争という地政学を背景にエネルギー株は2年続けて大きく上昇しました。

③上昇した個別株のパフォーマンス

2021年の1位はフォード・モーター、2位はエヌビディア

2022年の1位はエクソンモービル、2位はコノコ・フィリップス

④下落した個別株のパフォーマンス

2021年のワーストはペイパルHD、次いでW.ディズニー

2022年のワーストはメタ、次いでテスラ

 銘柄で見ても、2年連続で好パフォーマンスだったのはエクソンモービルやコノコ・フィリップスなどのエネルギー株に限られます。それも「コロナ禍による供給制約」という事情に続き、2021年末時点で市場では予見されていなったウクライナ紛争という未曽有の混乱が起きたことによるものでした。

 2021年下落→2022年上昇となったのはメルクなどの医薬品株や、Tモバイルなどの通信株となっています。いずれも2021年はコロナ禍の反動が大きかった半面、2022年にはそのディフェンシブ性が注目されたと言えるでしょう。

 他方、2021年上昇→2022年下落となったのは、メタ・プラットフォームズやアルファベットなどの広告(メディア)株、AMDやインテル、エヌビディアやクアルコムなどの半導体株、セールスフォースやアドビなどの一部ソフトウェア株となります。コロナ禍明けにも勢いは続いていましたが、足元の景気減速・需要減退のあおりを受け、低調なパフォーマンスとなっています。

 その他、2022年には、ペイパルHDなどのセクターからは見えなかった「決済銘柄」も低調であることが分かります。アマゾン・ドットコムやターゲットなど小売株の下落も目立ち、市場も消費の強さに確信が持てないでいる様子です。一方で、ケチャップで有名なクラフト・ハインツやコカ・コーラ、たばこのフィリップ・モリスなどの準必需品となっている銘柄は好調です。

 どんな見方をするにせよ、今年の上昇・下落に来年のヒントがあるはずです。さらなる景気減速を見越すか、景気回復の兆しに期待をかけるか?ぜひこの図表を見比べながら「2023年にどんな世界が待っているか」を考えてみませんか。

(FINTOS!米国株/小野﨑通昭)

ご投資にあたっての注意点