アステラス製薬(4503) 医薬品

1 ~ 3 月期に開発イベント豊富

 当社は製薬業のなかで1~3月期に開発イベントが最も多い会社の一つであろう。第1に、ホットフラッシュ治療薬fezolinetantの米国発売が2月に予定される。第2に、膀胱がん治療薬Padcev の未治療患者を対象とした承認も早ければ1~3月期以内に認められると考える。承認されれば膀胱がんで標準治療薬となろう。第3に、胃がん治療薬zolbetuximab のP3(フェーズ3)試験の詳細結果も1月中の発表予定である。

 当社の課題は2027年に特許権が満了する前立腺がん治療薬Xtandiの売上高を補う新製品の開発である。上述した3剤が承認されればXtandiのパテントクリフ(特許の崖)を乗り越えることができよう。

fezolinetantの立ち上がりは早い可能性

 当社が発表したアジアと欧米のホットフラッシュ患者調査論文によると、約10%の患者はホルモン療法不適合であった。米国の45~64歳女性の約4%と計算される。この患者群では代替薬が無いため浸透は早く、24.3期内にも約300億円の売上高は達成できると野村では見ている。

 課題はホルモン療法に適合していても同療法での治療に反対する患者での浸透で、この層は患者全体の約6割にのぼる。22年10月17日開催のfezolinetant説明会では投薬初日から発症頻度の減少が示された。婦人科領域で初日から効果が現れる薬剤はほとんどない。医師や患者に大きなサプライズとなる可能性が高い。

(エクイティ・リサーチ部 甲谷 宗也)

デンソー(6902) 輸送用機器

多様な製品を持つ自動車部品国内首位

 日本最大の自動車部品メーカー。トヨタ自動車向けの売上比率は2022.3期に約48%で、その他の日系・米系・欧州系とも幅広く取引がある。エアコン、エレクトロニクス・半導体関連、エンジン関連など製品群も多様で、先進分野にも強みがある。

 22年7~9月期は、日本を中心に自動車の減産影響が残り、費用面でも原材料価格やエネルギー費などインフレ影響が利益を下押しした。下期(特に23年1~3月期)は価格転嫁の進展と自動車生産回復で業績は回復に向かおう。24.3期は顧客の挽回生産に加え、高収益な電動化及びADAS(先進運転支援システム)関連の売上増で営業利益は通期で6,330億円と予想する。

電動化・ADAS で付加価値は高まろう

 中期ではインバータのトヨタ外への拡販が進もう。22.3期の310万台から26.3期には1,200万台へ伸長し、業績を牽引するとみる。また、電源システムはバッテリーの充電効率や航続距離の向上に寄与するため、需要拡大が見込まれる。

 ADAS は車の周辺状況とドライバー状態の統合分析を可能とする技術で、衝突直前のみならず通常運転時にも支援領域を広げ、交通死亡事故ゼロに貢献する。ADASが進化し、完全自動運転のレベルとなれば、車内の過ごし方が多様化すると見込まれる。その時代が訪れても快適空間の創出において、当社の認知・判断・作用の技術が求められると考える。

(エクイティ・リサーチ部 石本 渉)

学研ホールディングス(9470) 情報・通信

教育分野でM&A とDX 展開を推進

 「学習」「科学」で一時代を築いた教育分野と、2004年に進出した介護事業を主力とする医療福祉分野を2つの柱とする。祖業の教育分野では学習参考書や児童書等の出版に強みを持ち、教室関連では学研教室や塾のM&A(合併・買収)等で拡大中。

 グループ内全ての塾でオンライン講座提供体制を21.9期までに整え、オンラインとリアル教室の選択肢ができた。コロナ禍で落ち込んだ生徒数は回復へ向かいつつある。バーチャル教室の使い勝手向上やAI(人工知能)を活用した個別指導拡大など、塾サービス全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する。医療看護向けeラーニングも堅調である。

学研版「地域包括ケアモデル」進化へ

 介護事業では高い入居率を維持しており、保育園運営大手のJP ホールディングスを21年1月に持分法適用会社化したことで子育て支援事業を強化、22年8月には家族葬施設を展開するきずなホールディングスと合弁会社を設立しライフエンディング事業に進出した 。

 0歳から100歳まで人生のあらゆるステージに寄りそう企業を目指し、介護インフラと保育所、塾などが一体となった、地域で老若男女が集う「学研版地域包括ケア」の実現へ向けた施策を遂行している。出版事業では、21年1月に取得した「地球の歩き方」事業でヒットを連発しており、今後の企画にも期待したい。

(エクイティ・リサーチ部 繁村 京一郎)

※野村週報 2023年1月23日号「銘柄研究」より

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