サンバイオ(4592) 医薬品

間葉系幹細胞を用いた治療薬の提供

 当社は、ドナー由来の骨髄に存在する間葉系幹細胞を用いて再生医療等製品SB623の開発を進めている。対象疾患は外傷性脳損傷(TBI)や慢性期脳梗塞、脳出血などで、特にTBI の開発が先行。2022年3月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ製造販売承認を申請している。

 23.1期はパイプラインの大きな進捗が見られず、22年2~10月期の累計事業収益は0円となった。費用面では、SB623のTBI承認取得に向けた製造関連費用を含む研究開発費が4,981百万円(前年同期比40.5%増)と増加したことに伴い、営業損失は6,404百万円(同1,664百万円の悪化)となっている。

SB623の承認取得は24.1期を想定

 SB623は22年3月にPMDAへ製造販売承認を申請しているが、22年12月に開催された「再生医療等製品・生物由来技術部会」においてSB623は議題に挙がっておらず、現状では承認取得に至っていない。部会は2、3カ月おきに開催され、早ければ23年3月頃に開催される部会で承認を取得する可能性があると野村では考えている。承認審査に時間を要している要因として、当社はSB623の生産関連での指摘をPMDAより受けているとしている。一方、製品の薬効などに関わる指摘は無いとのことである。会社は生産の問題解消に向けて迅速な対応を進めているが、長引くことがリスクだと野村では考える。

エクイティ・リサーチ部 松原 弘幸

富士フイルムホールディングス(4901) 化学

多角化を活かした成長が続く

 ビジネスイノベーションやイメージングを収益基盤と位置付け、注力分野であるヘルスケアやマテリアルズへの積極投資を進める。写真フィルムで培った独自技術をベースとした事業ポートフォリオ戦略の下、中期的に安定した利益成長が続くだろう。

 2023.3期の営業利益は前期比14%増の2,630億円、24.3期の営業利益は同11%増の2,910億円を予想する。欧米の景気減速を踏まえ、ディスプレイ材料では減収が続き、イメージングの売上成長も鈍化を見込んでいる。しかし、全体ではヘルスケアを中心に景気変動に左右されにくい事業の比率が高いため、営業増益を維持することが可能と見ている。

大型設備稼働に向けた商談が順調

 当社はバイオCDMO(バイオ医薬の生産プロセスの開発及び製造受託)の大型設備の増産投資に取り組んでいるが、医薬品メーカーとの商談は順調に進んでいるようだ。デンマーク拠点とノースカロライナ拠点で進めている能力増強が完了する28.3期では、2万リットルタンク28基のうち6基が契約済み、10基が商談内定、12基が商談中とのことである。

 製薬メーカーによるバイオ医薬品の生産外部委託が進むことや、次世代抗体(バイスペシフィック抗体、Fc融合タンパク質など)の生産性が低いことなどから、需給バランスについても逼迫した状況が続く見通しである。

(エクイティ・リサーチ部 岡崎 優)

三井不動産(8801) 不動産

23.3期は過去最高益を予想

 ビル・住宅・ショッピングセンターなどの複合的な街づくりを得意とする日本の大手総合不動産デベロッパー。物流施設やホテル・レジャー事業の他、海外における不動産開発事業も積極化している。

 商業・ホテル・レジャー施設事業は新型コロナの悪影響から回復途上にあるものの、主力のオフィス賃貸や分譲マンション事業が好調であるため、2023.3期の営業利益は前期比25%増益の3,050億円と過去最高益を更新すると予想している。24.3期は、日米で22年に竣工した大型オフィスビルが共に通期稼働し業績に貢献することに加えて、ホテル・レジャー事業の回復が進むことで同8%増益を予想する。

市場とは異なり空室率は改善

 市場全体をみると、23年は東京都港区で新築ビルが多く竣工し、空室率が悪化する見通しである。しかし当社については、地盤とする中央区のビル供給が限定的である。また、22年8月に竣工した「東京ミッドタウン八重洲」のリーシングが進捗する見込みであり、空室率は22年9月の6.7%から改善する可能性が高いと考える。

 23年春の日本銀行総裁の交代を控え、金融政策が引き締め方向へ変更される可能性があり、この点は不動産株全体の重石となりうる。しかし、当社は業績が堅調であるうえに、総還元性向45%を公約するなど株主還元に前向きである。現在の局面でも引き続き注目していきたい。

(エクイティ・リサーチ部 福島 大輔)

※野村週報2023年1月30日号「銘柄研究」より

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