Q:日銀の「政策金利引き上げ」、引き起こすきっかけは何?

政策金利の引き上げというリスクシナリオが浮上してきました。この政策金利が引き上げられるきっかけには、何が想定されるでしょうか?

2%インフレが視野に入らない中でも、政策金利が引き上げられるシナリオが特にリスクであると思います。きっかけとして、金融機関の収益環境の悪化など副作用への配慮が優先されるということはありそうですが、他にはありますか?

A:利上げは想定しにくいが、日銀が考える「副作用」の変化に注意

2022年12月20日の金融政策対応を踏まえると、日銀はYCC(長短金利操作)を運営するにあたって、(1)金利の変動幅の調整:副作用(市場機能の低下)に基づく対応(今回、変動幅を拡大)、(2)金利の誘導水準の調整:ファンダメンタルズに基づく対応(今回は誘導水準を据え置き)、というロジックを使っているように見受けられます。

今回、日銀は物価などファンダメンタルズに対する見方を一切変えなかったので、金利の「誘導水準の調整」は行いませんでした。一方で、副作用(市場機能の低下)に対応するため、「変動幅調整」のみ行いました。

ただし、ご指摘のように、YCCの副作用としてしばしば「金融機関の収益環境の悪化」が言及されます。現状、日銀はこれをYCCの副作用と認めていません。しかし、今後、日銀がこれもYCCの副作用だと認めれば、2%インフレが実現していなくても、マイナス金利をやめる(=日銀当座預金の階層を現行の3階層から2階層にする)という選択肢が浮上すると考えます。

これ以外のロジックで、2%インフレが実現していないにも関わらず、マイナス金利をやめるシナリオは想定しにくいです。

(出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成

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