住友林業(1911) 建設

米国戸建住宅事業への依存が高まる

創業は1691年の別子銅山開坑に伴う銅山備林経営の開始にさかのぼる。愛媛、北海道、宮崎、和歌山などの山林を主に、日本の国土の0.1%超の土地を保有する。また、2009年に豪州の中堅ホームビルダーへ出資したのを皮切りに、米国と豪州で住宅会社の買収を積極化し、22.12期では経常利益の80%超を海外の住宅事業が占める。

22.12期の経常利益は前期比42%増益となった。国内の住宅事業については木材などの材料価格の高騰で同19%減益であった。しかし、米国を中心とする海外事業が同55%増益となり、全体の利益成長を牽引した。米国では戸建住宅の販売数量、販売単価ともに良好で、円安効果も加わった。

23.12期は減益予想も配当は横ばいへ

23.12期の経常利益は、前期比36%減益を予想する。昨年春頃からの米国住宅ローン金利の急騰で受注が急減し、22年末の受注残戸数が同59%減と急減したためである。会社は、米国において平均5%程度の値引き販売を行うことで販売数量を増やす戦略であり、利益率が低下する見通しを示している。ただし、米国住宅ローン金利は22年10月をピークに下落しており、米国の戸建住宅市場が23年下期以降に回復するとの期待が持ち上がりつつある。

会社は23.12期に減益を見通すものの、一株当たり配当金は前年と同額を計画している。野村では、米国住宅事業の回復に期待して注目を続ける。

(エクイティ・リサーチ部 福島 大輔)

日産自動車(7201) 輸送用機器

ルノーとの関係を再構築

日系大手3社の一角を占め、仏ルノー社と長年にわたり提携関係にある。日産自動車の持分法適用会社である三菱自動車工業を含む3社でアライアンスを形成、部品の共同購買やプラットフォームの共通化、共同開発など様々な取り組みを進めている。

従来、ルノー社は当社株を43.4%保有していたが、28.4%をフランスの信託会社に信託し議決権を15%に引き下げること、ルノーが今後信託設定した株式を協調的で秩序あるプロセスで売却することで、2023年2月に合意した。互いに15%ずつ議決権を有する対等な立場となったことで、日産にとっては経営の自由度が増し、より効果的に協業を進められると考えられる。

24.3期は大幅な増産で30%営業増益に

北米や欧州、日本や中近東では、ここ数年半導体不足で大幅な供給不足が続き、新車の供給を待っている消費者が例年より多い。当社も、これらの地域でSUV(スポーツ多目的車)や小型車を十分に供給できておらず、24.3期は日本やアメリカ、メキシコの工場を中心に大幅な増産が期待できる。中国については、現地メーカーが電気自動車の販売を伸ばしており、当社を含め外資系メーカーは押され気味だが、それ以外の主要市場では順調に販売が正常化し、大幅な増産が期待できる。127円/ドルという現状の水準より円高の前提でも、24.3期の営業利益は前期比30%増の4,957億円と大幅な増益を予想する。

(エクイティ・リサーチ部 桾本 将隆)

日本電信電話(9432) 情報・通信

固定・携帯通信事業を統合

2022年7月にNTT ドコモとNTT コミュニケーションズの固定・携帯通信の機能統合が完了し、今後は費用効率化や法人事業の売上増が見込まれる。会社は統合による営業利益増効果を24.3期までの累計で1,000億円、26.3期までの累計で2,000億円を計画しており、24.3期以降のシナジー拡大が期待される。

野村では、24.3期の携帯通信サービス収入を前期比0.3%増と予想している。24.3期上期は訪日客増加に伴う国際ローミング収入回復のプラス影響が大きくなろう。また、中期的には5G(第5世代通信)の普及拡大につれて、中大容量データプラン拡大のプラス影響が拡大すると見込まれる。

中期成長への投資と技術開発

野村では、中期計画最終年度の24.3期会社目標EPS(一株当たり純利益)370円の達成を見込む。25.3期以降について株主還元は年間5円/株増配と年間2,500億円の自己株式取得を前提としている。旺盛な需要が予想される海外データセンター事業では設備投資が年2,000億円台と積極化されると想定し、利益成長源になると考える。

次世代社会基盤構想では、ネットワークから端末処理までの光化技術や光回路と電子回路を融合する光電融合技術を推進している。23年3月からは、遅延を従来の200分の1とする専用線接続サービスを開始予定であり、当社の技術開発力にも注目が集まると考えられる。

(エクイティ・リサーチ部 増野 大作)

※野村週報 2023年3月13日号「銘柄研究」より

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