新型コロナの新興国での感染拡大が続いている。変異ウイルスの感染スピードが速く、また既存のワクチンに対する耐性を持っている可能性や、一部の国が依存する中国製のワクチンが欧米製と比べて有効性が低いことが影響している可能性、などが意識されている。

 こうした中、南米チリで4月16日に公表された調査結果は、ワクチンの効果を改めて示すものと言えるかもしれない。同調査によると、中国製のワクチン(2回接種)が有症状の感染を67%、死亡を80%防ぐ効果があるという結果となった。また、同研究によると2回のワクチン接種が完了した調査群では、入院と重症化のケースが未完了などの調査群に比べて顕著に減少している。しかし、同国では人口の約20%以上がワクチン接種を完了しているにも関わらず、感染の拡大が続いている。

 今回のチリの調査結果は、中国製のワクチンの有効性の低さがチリでの感染拡大の主因ではないことを示唆するものと見られる。むしろ、教訓として、ワクチン接種開始後の性急な行動制限緩和のリスクを意識するべきなのかもしれない。2回接種が必要なワクチンでは、1回目の接種後の感染防止効果は16%(2回接種で67%)と低いことが示されている。1回のワクチン接種で気が緩み感染が広がるケースはインド(英アストラゼネカが開発したワクチンを主に接種)など他の国でも指摘されている。

(中島 將行)

※野村週報2021年5月3日・10日合併号「経済データを読む」より

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