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2023/10/23 15:30
【市場展望】カギを握る中国景気は規制と緩和のはざまに
中国景気は持ち直しの兆し 今後のアジア株は、中国景気の安定化の恩恵を受けよう。中国の在庫調整終了とテクノロジーセクターの循環的回復により韓国、台湾、ベトナム、香港・中国の株式市場への好影響が期待できよう。インドについては中長期の成長ポテンシャルが株価を下支えしよう。本稿ではアジア株の現状と見通しを概説する。 年初来(10月13日時点)の世界主要株式市場の騰落率は、欧米、日本などの先進国やアジア新興国のパフォーマンスが好調だった。アジア株(日本を除く)では、台湾、ベトナム、韓国、インドが堅調だった一方、タイ、香港、フィリピン、中国のパフォーマンスは相対的に劣後した。米国が利上げ終了局面に近づく中、特に年前半は米国株の上昇がグローバル株式市場全体をけん引し、AI(人工知能)の普及や半導体市況の底入れ観測も台湾や韓国などのテクノロジー株の追い風になった。 しかし、足元では、米長期金利が再上昇し、中東の地政学リスクも意識され、グローバルに株価は軟調に推移している。インドについては、足元の景気が堅調で、かつ、中長期の成長ポテンシャルに注目が集まっているが、9月中旬に過去最高値を更新した後は、上値の重い展開となっている。 ゼロコロナ政策解除後の回復の勢いが失速し、低調が続いていた中国本土や香港(以下、中国株)は、8月の主要経済指標や9月製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)で示された景気の安定化の兆しが相場を下支えした。不動産市場の支援策や金融緩和、在庫調整の進展、米中対立の緩和期待が景況感の改善に寄与していよう。 しかし、10月入り後に発表された経済指標に見る中国景気の足取りは勢いを欠く。9月物価統計が市場予想を下回り、需要の弱さを反映してデフレ圧力の継続が示唆された。9月貿易統計は輸出入ともに前年比でのマイナス幅が縮小したが、アジアの主要輸出国との比較では依然として強い逆風に直面していることが明らかになった。 また、製造業の循環的な回復により中国景気は緩やかな持ち直しが期待されるものの、後述する通り、構造的な問題が山積みで、回復には時間を要そう。 岐路を迎える中国経済 アジア株の本格的な底入れには中国景気の回復がカギになろう。そのためには中国の不動産市況の底入れ、米中関係の改善、及び民間企業に対する支援の実現が重要になると見ている。 8月から中国では住宅取得時の頭金規制の緩和や、住宅ローン金利の引き下げが実施され、大都市の住宅需要を押し上げたが、不動産セクターの悪化スパイラルを食い止めるには十分でないと見ている。足元では中国不動産開発大手の資金繰り懸念が続いており、多くの建設プロジェクトが完工しておらず、新たな資金調達へのアクセスが制限されているため、依然として流動性不足に陥っている。オフショア債(中国本土外で取引される債券)が債務不履行に陥り、再建案について債権者から合意を得られない場合には、金融市場に混乱をきたす可能性があり注意が必要である。 他方、米中関係にも目配せが必要である。テクノロジー分野での米中のデカップリング(経済分断)は、バイデン政権で半導体製品に関する輸出管理が強化されるなど更に進展し、米国の対中貿易依存度は低下している。それに対抗して中国では半導体国産化を進めているが、2022年の半導体設備の国産化率は約22%に留まる。23年8月に中国通信機器大手が先端半導体搭載の携帯電話を発売し、生産能力が向上したと評価を得たが、大量生産は困難とされ、自国内での供給網の完結には程遠い状況である。足元では、米中双方の産業界から輸出規制の追加措置の実施に懸念を示す声が上がり、両政府が対話を活発化させている。しかし、安全保障や先端分野での覇権争いは今後も続く可能性が高く、中国の輸出や技術革新の阻害要因となり続けよう。 中国政府は民間企業の統制を強める方針から支援に舵を切っている。23年7月には民間企業に対する政策支援の強化、9月には専門機関を設置し、民間支援策の制定などを進める意向を示した。中国の民間企業や金融市場が懸念しているのは、それが着実かつ継続的に実施されるかである。 これまでも中国政府には規制を強化する時期と緩和する時期が交互に訪れる政策サイクルが存在していたが、現在は緩和の方向にある。中国政府の政策に対する信頼感と政策の予見性が回復し、冷え込んだ企業や家計のマインドが回復しなければ、景気の本格的な持ち直しは見えてこないだろう。中国経済は長期的な停滞に向かうのか、再び成長路線に回帰するのか、岐路を迎えていよう。 ( 野村證券投資情報部 坪川 一浩 ) ※野村週報 2023年10月23日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/23 09:30
【銘柄紹介】アサヒ/日本ゼオン/JVC ケンウッド
アサヒグループホールディングス(2502) 食料品 国内、海外で盤石な収益基盤 国内酒類を核に飲料、食品、海外など事業領域が多岐に亘る総合食品メーカー。スーパードライという圧倒的なビールブランドを有し、国内のビール類シェアは業界トップにある(2022年)。16年以降、欧州、オセアニアのビール会社を買収し、海外事業を急速に拡大した。海外事業は売上収益の48%、無形資産償却前事業利益の66%を占める(22.12期)。欧州ではチェコ共和国やポーランドなどでトップシェア、豪州でもトップシェアである(22年)。日本、海外ともに盤石な収益基盤を持っている。 23.12期の事業利益は、国内酒類、欧州では値上げでコスト増、数量減をカバーし、前期比5%増益の2,570億円と予想。 持続的な利益成長が可能 日本において23年10月に2度目の酒税改正が実施され、26年10月にも予定されている。酒税改正では酒税が下がるビールの店頭価格が安くなる。ビールに強い当社にとって酒税改正はポジティブであろう。 24年1月からAsahi Global Procurementの運営を開始する予定。グループ全体の調達機能の集約・強化に加え、グローバルサプライヤーと関係を強化し、24.12期から5年間を目処に年1億ドル以上(150億円)のコスト削減を計画。ブランド投資枠を確保し、同投資を更に強化でき、持続的な収益性改善、利益成長が可能と考える。24.12期以降、事業利益で年率8~10%増益を予想する。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 藤原 悟史) 日本ゼオン(4205) 化学 高機能材料事業が伸びてきた 当社の事業はエラストマー(タイヤやエンジン周辺など自動車向けゴム製品が多い)と高機能材料に分けられるが、近年は特に付加価値の高い高機能材料の売上が2013.3期の514億円から23.3期の1,054億円へと大きく伸びてきた。 高機能材料事業は独自性の高い技術に支えられた利益率の高い製品が揃っている。COP(シクロオレフィンポリマー)を用いたフィルムや樹脂は当社を特徴付ける製品群で、低吸水性(高湿度でも寸法が安定)、低不純物、高い光学特性(透明、低複屈折)などの特長があり、ディスプレイ用フィルムやレンズなどの光学材料、シリンジ(注射器)などで用いられている。 電池用バインダーで更なる成長を期待 リチウムイオン電池用バインダー(電極の活物質を集電体に付着させる役割)では特に負極用で強みがあり、約4割の高い世界シェアを持つと見られる。電池の性能や安全性・寿命など特性向上の技術開発を行ってそれを提案・提供できることが当社の強みで、販売先は中国・韓国・日系の有力電池メーカーに広がる。加えて直近は正極向けバインダーの売上が伸びており、今後の成長ドライバーとして期待される。 23年現在、バインダーは日本のみで生産しているが、24年にはタイで生産を開始予定で、将来的には米国生産の可能性も検討しているとしており、拡大する需要を取り込む準備を進めている。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 河野 孝臣) JVC ケンウッド(6632) 電気機器 キャピタル・アロケーション戦略を評価 2008年に日本ビクターとケンウッドの統合により設立。モビリティ&テレマティクスサービス(M&T)分野、セーフティ&セキュリティ(S&S)分野、エンタテインメントソリューションズ(ES)分野で事業を展開する。 防災やBCP(事業継続計画)対策の重要性が高まる中で、無線システムの需要が拡大しており、S&S 分野を中心とした利益成長を予想する。M&T 分野のカーナビ・カーオーディオでは残存者利益を確保し、これを原資に成長投資と株主還元を充実させる戦略である。メリハリあるキャピタル・アロケーション戦略は前向きに評価できるだろう。 北米で無線システムの好調が続く 4~6月期の事業利益は前年同期比11倍の50億円となった。北米を中心に無線システムが大幅な増収となり、決算説明会では「政府関連や警察・消防など公共安全市場向けが引き続き好調で、マレーシア工場の増産効果から民間市場向けのバックオーダー解消も進んだ」とコメントがあった。セキュリティ対策で学校向け需要も強いとのことである。 24.3期の事業利益は前期比12%増の178億円を予想する。無線システムの北米向け受注残が4~6月期末時点でも高水準で推移していることなどを踏まえ、S&S 分野を中心に会社計画に対する上振れ余地が大きいと考える。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 岡崎 優) ※野村週報 2023年10月23日号「銘柄研究」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/23 08:28
【モーニングFINTOS!】米国株続落 VIX指数は3月以来の高水準(10/23)
海外市場の振り返り 20日の米国株式市場で、NYダウは前日比-0.85%、S&P500指数は同-1.25%、ナスダックは同-1.53%となり、主要3指数揃って続落しました。軟調な企業決算や中東情勢悪化への懸念が株価を押し下げました。VIX指数は21.71と、2023年3月以来の高水準となっています。 相場の注目点 アジア時間23日早朝の外国為替市場でドル円は一時、再び1ドル=150円台を付けました。ただし、当局による介入に加え、日銀による政策修正への警戒もあり、150円台の定着には至っていません。21日の日経新聞では、日銀内でYCCの再修正論が浮上していると報道されています。7月会合での運用柔軟化により、日銀はYCCを形式上は維持しながらも、物価・賃金上昇定着の確度が高まるのを待つ腹積もりであったとみられますが、足元の米金利上昇圧力の強さは日銀にとって誤算であった可能性があります。日本の10年債利回りの動向次第では、7月と同様に早期政策修正が行われるとの見方も市場では浮上しています。こうした状況の下、27日発表の10月東京都区部消費者物価指数(CPI)など、今週発表される物価関連指標を受けた、日本の債券市場の動向が注目されます。 本日のイベント 今週から2023年7-9月期の決算発表が本格化します。本日日本市場引け後には、ニデックの2023年4-9月期の決算発表が予定されています。その他、岸田首相による所信表明演説が予定されています。 (投資情報部 大坂 隼矢) (注)データは日本時間2023年10月23日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【特集】野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(前編) 【今週のチャート分析】25・75日線を再度割り込む、二番底形成なるか注目(10/20) ご投資にあたっての注意点
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2023/10/22 18:00
【特集】野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(後編)
野村證券の社内企画「四季報の会」。『会社四季報』(東洋経済新報社刊)を読破して分析した投資情報部のリサーチャーらが、全国のパートナー(個人投資家向け営業担当者)らに現在の日本企業の動向を伝える取り組みで、社内で長年にわたって受け継がれている。今回は「秋号」の前半に続き、後半(銘柄コード6000~9000番台)の解説の一部をお届けする。 【6000番台】低PBR企業に対するM&A、脱中国に注目 6000番台の中心となる機械や電気機器では、4000~5000番台と同様に自動車関連の部品や機器を手掛ける企業の業績は堅調に推移しています。特にEVに関連する記述が目立ちました。一方、工作機械などを中心に、中国の景気悪化の影響を受けている企業も多くみられました。足元では、一部で需要の弱さが見られるものの、総じて成長に備えた設備投資への意欲が旺盛だと感じました。 工作機械中堅のTAKISAWA(6121)には、「ニデック(6594)が完全子会社化を目的としてTOB(株式公開買い付け)を企図」とあります。前年のPBRが0.43倍、3年前は0.39倍だったTAKISAWAに対してニデックは約2倍の株価でTOBを開始し、TAKISAWA側もこの提案を受け入れる方針を示しています。 この案件は実質的に、2023年8月に経済産業省が策定した「企業買収における行動指針」に即した最初のM&A案件です。 こうした案件は、低PBR企業の経営者に大きな影響を与えるとみられ、今後このような案件が増加していくか注目したいと思います。 ソディック(6143)では、「柱の工作機械は中華圏の需要減が想定超で大苦戦」とありました。注目したいのは2つ目の見出し「脱中国」です。「生産拠点再編の機運受け、インド、メキシコの販売体制拡充」とあります。西部電機(6144)でも、2つ目の見出しが「リスクヘッジ」で、「中国向け中心の精密機械は東南アジア、北米へ展開模索」とあります。 この2社に限らず、インド、ベトナム、インドネシアなどへの投資が増えてきている印象があります。中国に依存しないサプライチェーンを構築しようと考えている企業が増えつつあると言えそうです。 【7000番台】防衛予算の本格寄与と活況の自動車業界 ここまで見てきた企業でも、自動車関連の部品や機器が好調でしたが、自動車メーカーの業績も大変好調でした。一方、重工メーカーでは防衛関連の受注が好調だったことが印象的でした。 三菱重工業(7011)の見出しは「増額」となっており、「防衛は予算増で受注大幅拡大」とあります。そして、2つ目の見出しが「防衛」で、「スタンドオフミサイルなど防衛・宇宙事業で4~6月で6,491億円受注」とあります。 川崎重工業(7012)の見出しは「一転増益」となっていて、「防衛・民間向けに航空伸長」とあります。防衛予算の増額の影響がしっかりと業績に寄与してきていることがわかる内容でした。 次は注目の自動車業界を見ていきます。日産自動車(7201)の見出しは「増益幅拡大」、いすゞ自動車(7202)も「独自増額」となっており、四季報の記者が独自に営業利益の予想を増額しています。 そして、トヨタ自動車(7203)の見出しも「独自増額」となっており、好調さがうかがえます。 【8000番台】「消費の二極化」と変化の兆しが見えた銀行 アパレルや小売では、節約するモノとお金をかけるモノがはっきり分かれる「消費の二極化」の傾向が見られました。百貨店や高額衣料品を扱う企業と、スーパーや低価格の衣料品店などがいずれも好調です。 三陽商会(8011)の見出しは「上振れ」となっています。かつて国内で「バーバリー」を展開していた企業です。2015年にバーバリーとの契約が終了し、一気に営業利益が下がってしまったのですが、足元の業績は好調です。オンワードホールディングス(8016)も同様に中・高価格帯の製品を展開するアパレルメーカーですが、見出しは「増益幅拡大」です。高額消費が活況なことが、この2社の業績からもわかります。 また、スーパー大手のライフコーポレーション(8194)の見出しは「増額」、マックスバリュ東海(8198)も「上向く」となっていて、スーパーの業績も堅調です。低価格帯のアパレルを展開するしまむら(8227)の見出しも「連続最高益」でした。 次は、金融政策の修正に絡んで注目されている銀行です。三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)はマイナス金利の状況にもかかわらず、最高益になっています。「預貸金利ザヤ拡大」、これは海外の金利上昇で利ザヤが拡大しているということなのですが、国内の利回りも良くなっています。三井住友フィナンシャルグループ(8316)は「法人役務手数料も好調」ということで、利ザヤ以外の収益も稼げるようになってきているようです。 地方銀行も好調です。千葉銀行(8331)は「法人、個人の貸出残高が漸増」とあって、利ザヤが堅調になっています。2つ目の見出しは「利上げ」で、「市場金利の上昇を受け金利更改に本腰、固定の貸し出しの実効金利を引き上げへ」とあって、実際に貸出残高がかなり増えています。富山銀行(8365)の「利回りが改善、貸出金利伸長」、滋賀銀行(8366)の「預貸金利ザヤが反発」など、変化の兆しが見えています。 【9000番台】アフターコロナ、インバウンドの好影響 鉄道各社の堅調な業績が確認されました。 西日本旅客鉄道(9021)の見出しは「大幅増額」となっています。「新幹線の旅客数が想定超える伸び」「ホテルは観光軸に復調」で四半期の営業利益進捗率も45.4%です。東海旅客鉄道(9022)も「独自増額」という見出しに「レジャー需要好調、インバウンドの伸びが想定超える」とありました。 都市部の私鉄もJR各社と同様です。東武鉄道(9001)の見出しは「独自増額」で、ホテルは訪日客需要の回復は想定を上回り、鉄道も行楽など定期以外の利用が増加しているとのことです。小田急電鉄(9007)も「絶好調」で「箱根観光需要復活」とあります。西武ホールディングス(9024)でも「ホテルは訪日客回復で客室単価上昇」とあり、四半期進捗率は40.7%と高くなっています。 プロ野球・阪神タイガースのセ・リーグ優勝で沸く阪急阪神ホールディングス(9042)は「一転増益」で、こちらもホテルの訪日客などが回復しているようです。 電力会社は料金値上げの効果がかなり大きく出ています。ただ「前号比増額」の企業を探してみると中国電力(9504)だけでした。同社は四半期進捗率が82.5%と高く、「復配」の予想となっています。 空運はコロナ禍が落ち着き、活況期を迎えています。日本航空(9201)は見出しが「独自増額」です。ANAホールディングス(9202)の見出しも同じく「独自増額」でした。空運に関しては、四季報の記者は強気で見ていることがわかります。 総じて、日本企業はコロナ禍が終わり、勢いを取り戻してきている印象です。真の実力が問われるのはこれからと言えそうです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/10/22 13:00
【注目トピック】9月小売売上高から見た米国の個人消費動向
不透明感強まる中、9月は堅調維持 9月の前月比は+0.7% 10月17日に米商務省が、2023年9月の小売売上高を発表しました。小売売上高(合計)は前月比+0.7%となり、ロイター集計による市場予想の同+0.3%を上回りました。8月については、前月に発表された速報値の前月比+0.6%から同+0.8%に上方修正されました。 業種別では、インターネット小売を含む無店舗販売が前月比+1.1%となったほか、自動車・同部品が同+1.0%、飲食店が同+0.9 % 、化粧品を含む健康用品が同+0.8%などとなりました。 一方、電気製品が同-0.8%、衣料品が同-0.8%となりました。 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、9月は前月比+0.6%でした。8月分は、速報値の同+0.1%から同+0.2%に小幅に上方修正されました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 9月の前年同月比は+3.8% 9月の小売売上高(合計)の前年同月比は+3.8%と、8月改定値の同+2.9%から伸び率が加速しました。8月は、前月の発表時点の同+2.5%から上方修正されました。 業種別では、飲食店が前年同月比+9.2%、無店舗販売が同+8.4%、化粧品を含む健康用品が同+8.3%、自動車・同部品が同+6.2%などとなっています。 一方、家具が同-5.9%、百貨店が同-4.7%、建設資材・ガーデニング用品が同-4.0%、電気製品が同-2.2%、など、裁量的な品目の比重が高い業種の多くで減少しています。ガソリンスタンドは同-3.5%となっていますが、前年と比べたガソリン価格の下落が影響していると推察されます。 前年同月比で拡大基調が続く 小売売上高(合計)の前年同月比の推移をみると、9月は+3.8%と、8月改定値の同+2.9%よりも増加ペースが加速しています。 無店舗販売は、8月改定値の同+7.9%に対し9月は同+8.4%と、こちらも伸び率が加速しています。 ミシガン大学消費者マインド調査 10月13日に発表されたミシガン大学消費者マインド調査の10月速報値は63.0と、9月確報値の68.1から悪化しました。 一方、併せて発表された消費者期待インフレ率調査では、1年先は9月確報値の3.2%から3.8%に、5年先については同じく2.8%から3.0%に上昇しました。 今後の留意点 9月小売売上高は、前月比が市場予想を上回り、前年同月比の伸び率が加速しており、金利高やインフレの影響は受けながらも、足元の米国の個人消費は底堅さを維持していると見受けられます。 小売売上高の中で唯一のサービス業である飲食店は、前月比、前年同月比共に増加しています。個人消費の向け先が、財に対する支出からサービス関連の支出にシフトしていて、財中心の小売売上高から受ける印象よりも、個人消費は堅調である可能性も考えられます。 一方で、ミシガン大学の調査では、消費者は経済の先行きに対しマインドが低下している上、インフレへの警戒感が強いことが窺えました。 なお、小売売上高統計は名目値で、支出額の増加がインフレによって押し上げられている可能性もあり、この点には注意が必要です。 また、小売企業の業績動向を見る上では、小売売上高統計は売上高についての統計である点にも留意が必要です。企業によっては、売上高は増加しているものの、仕入価格の上昇や人件費上昇の影響で、利益が圧迫されているということも考えられます。 いずれにせよ、単月の動向では個人消費の傾向は判断できません。他の経済指標などとも併せて、米国個人消費の状況を確認していきたいと考えます。 (野村證券投資情報部 村山 誠) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2023/10/22 09:00
【野村の動画】40代向けのNISA活用法 – 「投資が怖い」Cさんはリスク許容度を選べる投信で
2024年、新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まります。こちらの動画では「なんとなく投資は怖い」40代向けのNISA活用法について詳しく解説致します。 NISA口座のご利用にあたっての留意事項 ご投資にあたっての注意点
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2023/10/21 18:00
【特集】野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(前編)
野村證券の社内企画「四季報の会」。『会社四季報』(東洋経済新報社刊)秋号の発売に合わせて10月上旬に実施し、数百人のパートナー(個人投資家向けの営業担当者)が、四季報を読破して分析した投資情報部のリサーチャーらの解説を聞いた。今回は秋号の前半(銘柄コード1000~5000番台)の解説の一部を紹介する。 【1000番台】建設は「政策保有株売却」が目立つ 1000番台の中心である建設会社では、資材高や人件費増の影響により夏号から引き続き、軟調な企業も散見されましたが、空調や電設などの設備関連企業の業績が改善しつつある印象を受けました。 大成建設(1801)の見出しには「下ぶれ」とあり、まだ改善していない状況です。厳しい資源・資材高により、業績自体はあまり振るいませんが、株価は上昇傾向にあります。その要因であると考えられるのが、左側の見出しにある「資本効率向上目的に政策保有株縮減 30年度まで2000億円売却意向」という部分です。 銀行などにはかなり前から政策保有株を売却する動きがありましたが、東証からの要請を受け、建設会社など他業種でも同様の動きが活発化しています。大林組(1802)や清水建設(1803)も政策保有株を縮減する意向について記載があります。四季報のコメント欄だけでは、売却した資金の使途はわかりませんが、ゼネコン各社が資本効率向上に向けた施策を打っている点は市場から評価されているとみられます。 土屋ホールディングス(1840)をご覧ください。北海道地盤の注文住宅の会社ですが、見出しに「ラピダス」と書いてあります。土屋ホールディングスは、国策の半導体会社の進出による業績向上が期待されているようです。すでに、TSMC(台湾積体電路製造)の工場が進出する九州では景気への波及効果が出てきています。北海道でも同じことが起こるかどうか今後注目が集まりそうです。 【2000番台】食品は値上げ浸透でV字回復 食料品の企業は「上ぶれ」や「V字回復」「最高益」などの見出しが目立ちました。夏号と比べ、原材料高の価格転嫁がより幅広いセクターや企業に浸透してきている様子がうかがえました。 ニップン(2001)や日清製粉グループ本社(2002)など製造業でも値上げが浸透し業績改善につながっているようです。ただ、販売数量の伸びはコロナ後の回復から一服しているようで、持続的にここから利益を伸ばしていくための次の一手、戦略に注目です。 ヒガシマル(2058)、東洋精糖(2107)などを見ても原材料高による値上げが浸透している様子がうかがえます。夏号の時点で原材料高や物流高に苦しんでいた飼料や砂糖などのメーカーでも、原材料高などが一服してようやく値上げが浸透してきたようです。 森永製菓(2201)など、菓子メーカーの業績も好調です。 以前から値上げは実施していましたが、原材料価格を吸収しきれず、「軟調」や「大幅減益」といった見出しが目立っていました。しかし今回は値上げが続くといったコメントも目立っており、需要に堅調さがうかがえます。 ブルボン(2208)の2つ目の見出しは「増産」とあります。チョコレート市場が成長し、生産設備を増設したようです。値上げだけでなく、より効率化した生産設備に投資することで「次の一手に動いているな」と感じました。 プリマハム(2281)、日本ハム(2282)、丸大食品(2288)なども業績が伸びているようです。菓子やハム・ソーセージのメーカーには「コンビニ向けの販売が伸びた」といったコメントがいくつも見られました。確かにローソン(2651)の見出しは「増額」となっています。 【3000番台】経済正常化で活況呈する飲食店 3000番台は値上げが奏功したり、インバウンドの恩恵を受けたりして好調な企業が多かったと思います。夏号では電力・ガスなどの銘柄の欄に値上げに関する記載が多かったため、外食を中心に、光熱費などのコスト上昇を懸念するコメントが目立ちました。今号では、コスト上昇分を値上げでカバーして、「前号比増額」となった企業も増えています。 銚子丸(3075)は回転寿司チェーンですが、見出しが「増益続く」です。値上げの寄与だけでなく「都心、郊外の両方で新規出店狙う一方で、経済正常化を受けて持ち帰り専門店を順次閉鎖」という記述がありました。経済情勢に合わせて業態を変化させる取り組みを進めているようです。 ドトール・日レスホールディングス(3087)は、星乃珈琲店やドトールなどを展開している企業です。「店舗純増65」という記載があります。前期は「純減30」ですから、出店ペースが加速しています。営業利益も大きく伸びる予想になっています。 物語コーポレーション(3097)は、焼肉店を展開しています。見出しは「連続最高益」。そしてこちらも「店舗純増72」で前期より出店ペースが加速しています。 紙・パルプの銘柄の業績改善も確認できました。王子ホールディングス(3861)は見出しが「好転」、三菱製紙(3864)は「急回復」となっています。株価を見ていただくと、今年に入ってから、反転上昇している企業が目立ちます。価格転嫁による業績改善への期待に加えて、紙・パルプは、多くの企業がPBR1倍を割りこんでいることから、資本政策への期待も含まれているのかもしれません。 【4000番台】半導体関連は「底打ち」か レゾナックホールディングス(4004)、旧昭和電工は今回「大幅赤字」と書いてありますが、 夏号では半導体・電子が前工程材料、後工程材料ともに低迷して「赤字転落」とありました。秋号では後工程が上向いたものの、補いきれなかったようです。しかし2024年12月期には回復する見通しのようです。 東京応化工業(4186)は、半導体製造の際に使われるフォトレジストで世界首位の企業です。ArF(フッ化アルゴン)関連など先端品が底堅いと書いてあります。足元では顧客の在庫調整が長期化したものの、2024年12月期には回復する見込みであるとのことです。やはり半導体関連は今が「底」なのかもしれません。 住友ベークライト(4203)は「主力の半導体封止材はパワー半導体など車載向けが伸びてけん引」しているそうです。この企業などを見ていると、やはり自動車関連は好調なのではないかと見て取れます。積水化学(4204)も「好採算の中間膜が自動車用回復」とあります。半導体関連の企業でも自動車業界向けは好調との印象を受けます。 オービック(4684)や日本オラクル(4716)など、SIer(システムインテグレーター)の業績は依然として好調のようです。以前と比べDXという言葉を聞く頻度は減ったかもしれませんが、システム投資が下火になったというより、DXという言葉が当たり前のものとして、世間に浸透してきたと捉えた方がよさそうです。 【5000番台】鉄鋼メーカー、PBR改革の行方 4000番台でも目立ちましたが、5000番台でも自動車生産回復の追い風が見受けられました。横浜ゴム(5101)やTOYO TIRE(5105)、ブリヂストン(5108)などのタイヤメーカーをはじめ、自動車部品を手掛ける企業も好業績でした。 ワイパーやブレーキなどの自動車用ゴム製品を手掛けるフコク(5185)も見出しが「最高益」となっており、業績は好調です。また、「27年3月期にROE12%を達成する」目標が掲げられているとの記載もあり、ここでもPBR1倍割れに対する施策がみられました。 PBR改革で注目されるのが鉄鋼業界です。 日本製鉄(5401)の見出しは「減配」となっていて、経常利益、税引き前利益ともに減益になっています。 鉄鋼市況の低迷など、記事の内容はあまりよくない印象ですが、キャッシュフローはしっかり稼げています。 日本製鉄系の企業である中山製鋼所(5408)も見出しが「反落」で営業減益予想ですが、そもそも利益が高水準です。2021年3月期から2023年3月期にものすごく伸びていることがわかります。このように、海外の市況が低迷しても、鉄鋼メーカー各社の業績は高水準が継続すると予想されています。東証の改革だけではなく、利益水準が上昇した点も、PBRの改善につながっていると言えます。 収益性の改善に加え、PBRそのものの改善に向けた取り組みももちろん活発化しています。日本製鉄の子会社である山陽特殊製鋼(5481)ではPBR対策がかなり具体的に言及されています。「適性マージン確保、高付加価値化による収益性改善や政策保有株の相互売却通じ流通株式比率向上、IR強化など図る」と、PBR改善に向けた施策のオンパレードになっています。もちろん親会社である日本製鉄も同様の施策を行っています。 (6000番台から9000番台の銘柄「【特集】野村證券「四季報の会」秋号を徹底解説(後編)」はこちら) ご投資にあたっての注意点
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2023/10/21 13:00
【オピニオン】なぜFRBと市場の間で政策金利見通しに温度差があるのか
米国金融市場では、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)以降、長期金利の上昇ペースが加速し株価が調整する事態となりました。主因は、FRB(米連邦準備理事会)が2024年末の政策金利見通し(中央値)を、6月時点から0.5%ポイント上方修正したことです。このため、市場では政策金利の高止まりが想定以上に長期化するとの見方が高まり、長期金利の上昇につながりました。 なぜFRBと市場参加者の間で、政策金利見通しに温度差があるのでしょうか。その背景として第1に、今回の利上げ局面でFRBが「経済データに基づいて判断する」との姿勢を強めていることが挙げられます。金融政策は政策変更からその効果が発揮されるまでに相当な時間差があるため、中央銀行は1~2年先の見通しに基づいて判断するのが一般的です。 ただし、今回はコロナウイルスのパンデミック(世界的な感染拡大)からの景気回復という未曽有の事態に際して想定以上にインフレが粘着的なことから、FRBは利上げ打ち止めに慎重な姿勢をより強めています。一方、市場参加者の多くは経済見通しに基づいて政策金利を予想していることから、両者の温度差が拡大する一因になっていると考えられます。 第2は、実質政策金利見通しの違いです。経済学の世界には景気にとって引き締め的でも緩和的でもない均衡(中立)金利という概念があります。この均衡金利は様々な要因の影響を受けるものの、一般的にはインフレ部分を除いた実質均衡金利は概ね潜在成長率と一致すると想定されます。つまり、実質政策金利が実質均衡金利よりも高い場合は景気に対して引き締め的、低い場合は緩和的と解釈することができます。 下図は、米国の政策金利とインフレ見通し、そこから逆算される実質政策金利について、FRBと市場コンセンサス、野村證券の予想を比較したものです。これを見ると、FRBと市場の政策金利予想の差(0.4%ポイント)のうち4分の3(0.3%ポイント分)は、実質政策金利に対する見方の違いであることが判ります。 実際の実質均衡金利の水準は観測できませんが、OECD(経済協力開発機構)などの試算では、米国の潜在成長率は+1.8%程度です。この試算値を踏まえると、現時点ではFRBも市場コンセンサスも、2024年末の政策金利は引き締め的な水準にあると予想していると解釈することができます。 FRBはインフレが低下する中で、利上げ打ち止め後も当面は、政策金利を据え置く姿勢を示しています。このことは実質金利の高止まりを通じて、引き締め的な金融政策を続けることを意味しています。 逆に、景気減速が鮮明化し、インフレ再燃懸念が後退すれば、実質金利を実質均衡金利程度までは引き下げることが予想されます。ここで、仮に実質均衡金利を潜在成長率並みの+1.8%程度、期待インフレ率を目標の2.0%程度とした場合、3.8%程度までの利下げが十分視野に入ると言えそうです。 ※2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2023/10/21 07:00
【マーケット解説動画】日経平均、不安定な値動き続く(10月20日引け後収録)
テクニカル展望(10月20日引け後収録) 今週の「テクニカル展望」動画では、弊社の山内シニア・ストラテジストが 、チャート分析の観点から、今後の展望や注目点について15分ほどで解説しています。今後の投資の参考にご覧ください。 今週の収録内容 「日経平均、不安定な値動き続く」 1.1週間の振り返り2.日経平均株価:日足3.日経平均株価と東証プライム騰落レシオ4.米国10年債利回り:月足5.来週の注目イベント (解説)野村證券投資情報部シニア・ストラテジスト 山内 正一郎 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点