最終的にはデフォルトは回避される見込み

米国の債務上限問題が金融市場で注目を集めています。米国議会は6月1日までに、債務上限の引き上げか、法的効力の一時停止を決定する必要があります。対応が遅れると、米国債の新規発行が停止し、テクニカル・デフォルトのリスクが生じることになります。

現在、上院では民主党が、下院では共和党が過半数を占めており、法的対応には両党の合意が必要となります。下院の共和党は、法定上限の期限を延ばす法的対応と引き換えに、バイデン政権に対して経済政策の撤回や見直しを求める法案を可決しましたが、上院での否決の可能性が高いでしょう。

バイデン大統領は民主党と共和党の代表者と協議を行いましたが、新たな動きは見られず、期限直前までの対立が予想されます。一方で、共和党のマコネル上院院内総務はデフォルトを引き起こす意図はないと示唆しました。最終的には期限直前に法的対応が実施され、米国債の新規発行停止が回避されると見られます。

過去の債務上限問題の経緯

議会の対応が遅れる場合、金融市場では現金志向が強まり、短期金利の上昇が起こる可能性があります。2011年から2013年の債務上限問題を振り返ると、民主党と共和党の対立が金融市場に混乱をもたらしました。

オバマ政権下のねじれ議会では、債務上限問題の法的対応が困難となりました。2011年に共和党が歳出削減を求め、上院が超党派で妥協案を示しました。最終的には2011年に財政調整法が成立し、歳出削減の協議開始と引き換えに法定上限が引き上げられ、米国債の新規発行停止が回避されました。しかし、格付け会社S&Pによる米国債の格付け引き下げが行われ、米国債やドルの信認が損なわれる結果となりました。

2012年の選挙でもオバマ大統領が再選され、ねじれ議会が続きました。2013年には再び債務上限問題が表面化し、議会協議は難航しました。結果として政府閉鎖という事態が発生しました。その後、金融市場の混乱を受けて各種法案が可決され、政府閉鎖と米国債の新規発行停止が回避されました。

議会の混乱が政治に与えた余波

これらの議会の混乱により、共和党は支持を失い、ビジネス界からも批判を浴びました。2014年と2015年の債務上限問題では、共和党は法的対応に応じましたが、党内の保守派から批判を受けました。その結果、2016年の大統領選挙および議会選挙では、共和党が勝利しましたが、主流派と保守派の党内対立が明らかになりました。

2024年の大統領選挙を控え、民主党・共和党は2011年から2013年のような事態を避けるために、歴史から学ぶ必要があります。マコネル上院院内総務は、過去の経験を生かし、債務上限問題の解決に主導力を発揮することが求められるでしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「政治レポート -米国財政:連邦債務上限に関し、バイデン大統領と与野党議会指導者が協議(5月10日配信)」(プレミアムプラン限定)

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