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38分前
【速報・解説】日経平均は4万円台回復、チャート上のメドは? (3/19)
本日の動き 本日の日経平均株価は前日比117円安の39,622円で取引を開始しました。前日の1,000円を超える大幅上昇の反動から、一時、前日比332円安まで下げ幅を拡大する局面もありました。しかし、春闘で賃上げがすすむ日本の景気回復への根強い期待を背景に、バリュー(割安)株では逆行高となる銘柄も多く、日経平均株価は底堅い推移を続けました。昼過ぎに、日銀がゼロ金利解除など17年ぶりの利上げを決定したことが伝わりましたが、ほぼ事前の観測どおりの内容で市場では当面緩和的な金融環境の継続観測が広がりました。その後、長期金利の低下や円安米ドル高が進行したことから、輸出関連株を中心に幅広い銘柄が上昇し、日経平均株価も上昇に転じました。引けにかけて上げ幅を広げ、前日比263円高の40,003円と本日の高値で取引を終了しました。 今後の注目点 19、20日に米国でFOMCが開催されます。市場では政策金利を据え置くことが確実視されていますが、パウエル議長の記者会見やFOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート) が注目されます。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) 日経平均は4万円台回復、チャート上のメドは? 日経平均株価は、3月12日に一時38,271円まで下落する場面がありましたが、25日移動平均線を下支えとして反発となりました。19日には、日銀によるマイナス金利解除を大きな波乱なく乗り越えて4万円を回復しました。 この先、まずは3月7日高値(40,472円)を更新できるかどうか注目されます。同高値を突破すれば、3月7日~12日の押し幅を上に倍返しした水準(42,673円)が先行きの上値メドとして挙げられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年3月19日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方、4万円台を維持することができず、再度下落に転じる場合は、改めて上向きの25日移動平均線(3月19日:39,056円)に向けて下値を固めにいく展開が見込まれます。 (チャート解説:野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 (注)画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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13:50
【速報・解説】日銀、マイナス金利政策解除を発表
金融政策をめぐる不透明感解消で日本株にポジティブ・円安ドル高要因に 日本銀行は3月18-19日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通りマイナス金利政策の解除(利上げ)を含む金融政策の修正を決定しました。日銀の利上げは2007年2月以来、約17年ぶりです。 金融政策の具体的な決定事項は以下の通りです。 ・マイナス金利、YCC(長短金利操作)を撤廃し、政策金利を無担保コール(翌日物)金利に変更し、0.0~0.1%程度で推移するように促す。 ・日銀当座預金の3層構造を修正し、+0.1%の付利金利を適用する(所要準備額相当部分を除く)。 ・長期国債の買い入れはこれまでと概ね同程度(足元は6兆円程度)の買い入れを継続、急激に上昇する場合には、機動的に買い入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。 ・日本株ETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)については、新規の買い入れを終了する。 ・CP等及び社債等については、買い入れを段階的に減額し、1年後をめどに買い入れを終了する。 日銀は声明文の中で、政策変更の理由として「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現することが 見通せる状況に至った」との見解を示しました。今後は「短期金利操作を主たる政策手段」として、適切に金融政策を運営する中で、「当面、緩和的な金融環境が継続する」との見方を示しています。 追加利上げの有無を含む今後の政策運営に関しては、植田日銀総裁の記者会見(15時半)での発言が注目されます。現時点で市場では年内に1~2回程度と非常に緩やかなペースでの利上げを織り込んでいます。野村證券では、24年10月に0.25%ポイントの追加利上げの実施を予想しています。 日銀の金融政策に対する不透明感がいったん解消されたことは、日本株にはポジティブ、ドル円に対しては円安ドル高要因となることが予想されます。3月19-20日には米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されていることから、日銀の政策修正を消化した後は、市場の関心はFOMCの結果と経済・政策金利見通しに向かうと見られます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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12:00
野村證券の「語り部」に聞く投資の疑問 第2回「日経平均最高値、前回と何が違う?」
2024年2月22日に日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新し、その後も上昇しています。バブル期の約10年前、1979年に野村證券に入社し、上場企業の資金調達やIR(投資家向け広報)などを担当、現在は野村ホールディングス ファイナンシャルウェルビーイング室 シニア・コミュニケーションズ・オフィサーとして、大学などで金融についての講義を手掛ける池上浩一に、バブル期から現在に至るまでの日本経済や株式市場の変遷などについて聞きました。 バブル期と現在の違いは? 企業の価値を超える資金と投資家の視線が集中し… ―日経平均株価がかつての最高値を付けたのは1989年末です。この時代と現在の経済や市場環境の違いはどこにあると考えますか。 戦後の為替市場は固定相場制で、1ドル=360円でした。日本企業が高度経済成長で米国の企業とも戦えるほどの力を付けた1970年代、為替市場は変動相場制になりました。 そして、1985年のプラザ合意で米国が日本に円高・ドル安をなかば強引に認めさせたことで、為替市場は一気に円高ドル安へと振れたのです。 1989年には1ドル=120円台に到達しており、1980年代に日本の国内で製品を生産し、世界に輸出することで日本企業の業績が急上昇、「Made in Japan」とまで言われた日本企業の国際競争力は、輸出が難しくなったことで大きく低下してしまいました。 それでも株価だけは上昇を続けました。そして、企業の本来の価値を超えるほどの資金と人々の視線が株式市場に集中したことでバブルが発生してしまったのです。 「失われた時代」からの変化が? 1990年代に入って株価の下落が始まっても労働者の賃金はしばらく上昇を続けました。競争力を失った企業は相次いで倒産し、そこから約30年間にわたって日本は「失われた時代」に陥ってしまいました。 一方この間、余力があった企業は、円高に対応するため人件費が安い国外に工場を作り、そこから世界に輸出するという「Made by Japan」と呼ばれる経営改革を積極的に推し進めました。現在の日本の企業の業績を見ると、国外での製造・販売が大きく増加。自動車産業などを中心に「グローバル企業」にまで成長した企業も目立つようになりました。 そして、現在の株高は、日本がデフレから脱却しつつある中で、再び日本企業の国際競争力が上昇、企業価値も適正に評価されるようになったことによるものだと私は考えています。 同時に、中国の不動産市場の悪化や景気減速が進んでいることもあって、アジアに投資をしようとする世界の企業が、中国から日本へと資金をシフトする動きも見られます。半導体受託生産で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)が、日本の企業などと組んで熊本県内の新工場を2024年中に本格稼働させることも、象徴的な動きの一つと言えそうです。 このような状況のもと、日本株は今、世界から注目されているといえるかもしれません。 今後、国内外の投資家が日本の企業を再評価する流れが強まり、さらなる株高につながるのではないかと私は期待しています。 日本株を取り巻く変化 ついに新たな最高値 ―前回の最高値から現在に至るまで、日本株や日本経済を取り巻く環境はどう変わったのでしょうか。 1990年代初頭のバブル崩壊の後、日本株を含めた世界の株価は大きな変動を繰り返しています。1990年代後半の「ロシア危機」「アジア通貨危機」や2000年代初頭のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックなど、世界の株価が大幅に下落する出来事もありました。 一方、日本では、2013年に「アベノミクスの3本の矢」として、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」が示され、株価の上昇機運が醸成されました。その後、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「コロナショック」によって、一時的に株価が下落することもありましたが、概ね上昇傾向が続きました。そして2024年2月22日、ついに日経平均が最高値を更新したのです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)経常利益はラッセル野村Large Cap。2007年度の経常利益水準を100としている。2023年度以降は野村證券市場戦略リサーチ部による予想(2024年2月16日時点)。構成銘柄は各年度ごとで異なる。日経平均株価のデータは月次で、直近の値は2024年2月16日。(出所)日本経済新聞社、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 上の図は日本企業の経常利益と日経平均株価の推移です。 2007年度を100とした日本企業の経常利益の推移を見ると、38,915円をつけた1989年度の利益は54。その後、2008年のリーマンショックにより大幅減益になった後、徐々に増益に転じ、2024年2月16日時点の野村證券の予測では、2025年度には198と、1989年度の4倍近くに達する見込みです。 世間では、日経平均株価が史上最高値を更新したことに注目が集まっていますが、日本企業の利益は目を見張るほどの上昇が続いているのです。このほか、様々な指標を調べてみましたが、現在の日経平均株価の水準が高すぎるとは決して言えないと考えています。 投資の「次元」が変わったか 1989年から現在に至るまでに、株式市場を取り巻く環境も大きく変化しました。象徴的なのは取引の自動化、高速化の進展です。現在は個人投資家の株式の売買にも、パソコンやインターネットが使われるのが当たり前になりました。野村證券も含め、大半の証券会社でインターネットを使った取引ができるようになりました。 投資環境の観点では、海外の機関投資家が日本の株式市場に大勢参入してきたのも大きな変化の一つといえます。年初来、外国人投資家の「買い越し」が続いたというニュースが目立っています。 一方で、日本では2014年1月から英国のISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)を参考にした制度「NISA」(少額投資非課税制度)がスタートしたほか、2001年に導入された「確定拠出年金(DC)」を導入する企業も増え、個人にとっても投資や資産運用がより身近になりました。 前回最高値を付けた1989年とは、市場や投資の「次元」が変わったと言えるのではないでしょうか。 ※第3回に続く 【池上 浩一】野村ホールディングス株式会社ファイナンシャル・ウェルビーイング室SCO(シニア・コミュニケーションズ・オフィサー)。1979年野村證券株式会社入社、人事部に配属。英ロンドン大に留学後、海外投資顧問室、第一事業法人部、国際業務部を経て、法人開発部長やIR室長、グループ本部広報部長兼宣伝部長などを歴任。2011年から名古屋大客員教授も務める。2023年4月から現職。社内では、日本版金融ビッグバンの際に講演をしていたことから「ビッグバンおじいさん」と呼ばれて親しまれ、社内サイトでの連載コラムは1000回以上を数える。 ※この記事は、2024年3月時点の情報に基づくものです。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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【速報・解説】日経平均は4万円台回復、チャート上のメドは? (3/19)
本日の動き 本日の日経平均株価は前日比117円安の39,622円で取引を開始しました。前日の1,000円を超える大幅上昇の反動から、一時、前日比332円安まで下げ幅を拡大する局面もありました。しかし、春闘で賃上げがすすむ日本の景気回復への根強い期待を背景に、バリュー(割安)株では逆行高となる銘柄も多く、日経平均株価は底堅い推移を続けました。昼過ぎに、日銀がゼロ金利解除など17年ぶりの利上げを決定したことが伝わりましたが、ほぼ事前の観測どおりの内容で市場では当面緩和的な金融環境の継続観測が広がりました。その後、長期金利の低下や円安米ドル高が進行したことから、輸出関連株を中心に幅広い銘柄が上昇し、日経平均株価も上昇に転じました。引けにかけて上げ幅を広げ、前日比263円高の40,003円と本日の高値で取引を終了しました。 今後の注目点 19、20日に米国でFOMCが開催されます。市場では政策金利を据え置くことが確実視されていますが、パウエル議長の記者会見やFOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート) が注目されます。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) 日経平均は4万円台回復、チャート上のメドは? 日経平均株価は、3月12日に一時38,271円まで下落する場面がありましたが、25日移動平均線を下支えとして反発となりました。19日には、日銀によるマイナス金利解除を大きな波乱なく乗り越えて4万円を回復しました。 この先、まずは3月7日高値(40,472円)を更新できるかどうか注目されます。同高値を突破すれば、3月7日~12日の押し幅を上に倍返しした水準(42,673円)が先行きの上値メドとして挙げられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年3月19日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方、4万円台を維持することができず、再度下落に転じる場合は、改めて上向きの25日移動平均線(3月19日:39,056円)に向けて下値を固めにいく展開が見込まれます。 (チャート解説:野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 (注)画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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【速報・解説】日銀、マイナス金利政策解除を発表
金融政策をめぐる不透明感解消で日本株にポジティブ・円安ドル高要因に 日本銀行は3月18-19日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通りマイナス金利政策の解除(利上げ)を含む金融政策の修正を決定しました。日銀の利上げは2007年2月以来、約17年ぶりです。 金融政策の具体的な決定事項は以下の通りです。 ・マイナス金利、YCC(長短金利操作)を撤廃し、政策金利を無担保コール(翌日物)金利に変更し、0.0~0.1%程度で推移するように促す。 ・日銀当座預金の3層構造を修正し、+0.1%の付利金利を適用する(所要準備額相当部分を除く)。 ・長期国債の買い入れはこれまでと概ね同程度(足元は6兆円程度)の買い入れを継続、急激に上昇する場合には、機動的に買い入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。 ・日本株ETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)については、新規の買い入れを終了する。 ・CP等及び社債等については、買い入れを段階的に減額し、1年後をめどに買い入れを終了する。 日銀は声明文の中で、政策変更の理由として「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現することが 見通せる状況に至った」との見解を示しました。今後は「短期金利操作を主たる政策手段」として、適切に金融政策を運営する中で、「当面、緩和的な金融環境が継続する」との見方を示しています。 追加利上げの有無を含む今後の政策運営に関しては、植田日銀総裁の記者会見(15時半)での発言が注目されます。現時点で市場では年内に1~2回程度と非常に緩やかなペースでの利上げを織り込んでいます。野村證券では、24年10月に0.25%ポイントの追加利上げの実施を予想しています。 日銀の金融政策に対する不透明感がいったん解消されたことは、日本株にはポジティブ、ドル円に対しては円安ドル高要因となることが予想されます。3月19-20日には米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されていることから、日銀の政策修正を消化した後は、市場の関心はFOMCの結果と経済・政策金利見通しに向かうと見られます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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野村證券の「語り部」に聞く投資の疑問 第2回「日経平均最高値、前回と何が違う?」
2024年2月22日に日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新し、その後も上昇しています。バブル期の約10年前、1979年に野村證券に入社し、上場企業の資金調達やIR(投資家向け広報)などを担当、現在は野村ホールディングス ファイナンシャルウェルビーイング室 シニア・コミュニケーションズ・オフィサーとして、大学などで金融についての講義を手掛ける池上浩一に、バブル期から現在に至るまでの日本経済や株式市場の変遷などについて聞きました。 バブル期と現在の違いは? 企業の価値を超える資金と投資家の視線が集中し… ―日経平均株価がかつての最高値を付けたのは1989年末です。この時代と現在の経済や市場環境の違いはどこにあると考えますか。 戦後の為替市場は固定相場制で、1ドル=360円でした。日本企業が高度経済成長で米国の企業とも戦えるほどの力を付けた1970年代、為替市場は変動相場制になりました。 そして、1985年のプラザ合意で米国が日本に円高・ドル安をなかば強引に認めさせたことで、為替市場は一気に円高ドル安へと振れたのです。 1989年には1ドル=120円台に到達しており、1980年代に日本の国内で製品を生産し、世界に輸出することで日本企業の業績が急上昇、「Made in Japan」とまで言われた日本企業の国際競争力は、輸出が難しくなったことで大きく低下してしまいました。 それでも株価だけは上昇を続けました。そして、企業の本来の価値を超えるほどの資金と人々の視線が株式市場に集中したことでバブルが発生してしまったのです。 「失われた時代」からの変化が? 1990年代に入って株価の下落が始まっても労働者の賃金はしばらく上昇を続けました。競争力を失った企業は相次いで倒産し、そこから約30年間にわたって日本は「失われた時代」に陥ってしまいました。 一方この間、余力があった企業は、円高に対応するため人件費が安い国外に工場を作り、そこから世界に輸出するという「Made by Japan」と呼ばれる経営改革を積極的に推し進めました。現在の日本の企業の業績を見ると、国外での製造・販売が大きく増加。自動車産業などを中心に「グローバル企業」にまで成長した企業も目立つようになりました。 そして、現在の株高は、日本がデフレから脱却しつつある中で、再び日本企業の国際競争力が上昇、企業価値も適正に評価されるようになったことによるものだと私は考えています。 同時に、中国の不動産市場の悪化や景気減速が進んでいることもあって、アジアに投資をしようとする世界の企業が、中国から日本へと資金をシフトする動きも見られます。半導体受託生産で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)が、日本の企業などと組んで熊本県内の新工場を2024年中に本格稼働させることも、象徴的な動きの一つと言えそうです。 このような状況のもと、日本株は今、世界から注目されているといえるかもしれません。 今後、国内外の投資家が日本の企業を再評価する流れが強まり、さらなる株高につながるのではないかと私は期待しています。 日本株を取り巻く変化 ついに新たな最高値 ―前回の最高値から現在に至るまで、日本株や日本経済を取り巻く環境はどう変わったのでしょうか。 1990年代初頭のバブル崩壊の後、日本株を含めた世界の株価は大きな変動を繰り返しています。1990年代後半の「ロシア危機」「アジア通貨危機」や2000年代初頭のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックなど、世界の株価が大幅に下落する出来事もありました。 一方、日本では、2013年に「アベノミクスの3本の矢」として、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」が示され、株価の上昇機運が醸成されました。その後、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「コロナショック」によって、一時的に株価が下落することもありましたが、概ね上昇傾向が続きました。そして2024年2月22日、ついに日経平均が最高値を更新したのです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)経常利益はラッセル野村Large Cap。2007年度の経常利益水準を100としている。2023年度以降は野村證券市場戦略リサーチ部による予想(2024年2月16日時点)。構成銘柄は各年度ごとで異なる。日経平均株価のデータは月次で、直近の値は2024年2月16日。(出所)日本経済新聞社、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 上の図は日本企業の経常利益と日経平均株価の推移です。 2007年度を100とした日本企業の経常利益の推移を見ると、38,915円をつけた1989年度の利益は54。その後、2008年のリーマンショックにより大幅減益になった後、徐々に増益に転じ、2024年2月16日時点の野村證券の予測では、2025年度には198と、1989年度の4倍近くに達する見込みです。 世間では、日経平均株価が史上最高値を更新したことに注目が集まっていますが、日本企業の利益は目を見張るほどの上昇が続いているのです。このほか、様々な指標を調べてみましたが、現在の日経平均株価の水準が高すぎるとは決して言えないと考えています。 投資の「次元」が変わったか 1989年から現在に至るまでに、株式市場を取り巻く環境も大きく変化しました。象徴的なのは取引の自動化、高速化の進展です。現在は個人投資家の株式の売買にも、パソコンやインターネットが使われるのが当たり前になりました。野村證券も含め、大半の証券会社でインターネットを使った取引ができるようになりました。 投資環境の観点では、海外の機関投資家が日本の株式市場に大勢参入してきたのも大きな変化の一つといえます。年初来、外国人投資家の「買い越し」が続いたというニュースが目立っています。 一方で、日本では2014年1月から英国のISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)を参考にした制度「NISA」(少額投資非課税制度)がスタートしたほか、2001年に導入された「確定拠出年金(DC)」を導入する企業も増え、個人にとっても投資や資産運用がより身近になりました。 前回最高値を付けた1989年とは、市場や投資の「次元」が変わったと言えるのではないでしょうか。 ※第3回に続く 【池上 浩一】野村ホールディングス株式会社ファイナンシャル・ウェルビーイング室SCO(シニア・コミュニケーションズ・オフィサー)。1979年野村證券株式会社入社、人事部に配属。英ロンドン大に留学後、海外投資顧問室、第一事業法人部、国際業務部を経て、法人開発部長やIR室長、グループ本部広報部長兼宣伝部長などを歴任。2011年から名古屋大客員教授も務める。2023年4月から現職。社内では、日本版金融ビッグバンの際に講演をしていたことから「ビッグバンおじいさん」と呼ばれて親しまれ、社内サイトでの連載コラムは1000回以上を数える。 ※この記事は、2024年3月時点の情報に基づくものです。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点