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【7月の投資戦略】銘柄選択は、関税の影響を受けにくいテクノロジーやサービスを軸に

(注)画像はイメージです。 リスクはいずれ克服され得る 米国と主要国・地域との関税交渉の着地は不透明で、イランを取り巻く中東地政学リスクが急浮上しています。我々の基本観は、株式市場は最終的に、企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って推移するとみます。リスクが企業業績に悪影響を及ぼす事態に発展する場合は、株価は下落することになるでしょう。しかし、リスクの所在が明確化し、主要国・地域の経済や企業活動などへの悪影響は克服可能/限定的となれば、企業業績の復調や拡大とともに、株式市場への信頼感は回復してゆくとみられます。 ホルムズ海峡封鎖なら原油価格急騰だが・・・ 核開発問題が切迫する中、イスラエルと米国がイランの核関連施設を攻撃しました。地理的に地上戦のリスクは低いものの、イランがホルムズ海峡封鎖を試みる場合は、原油価格の急騰リスクとなります。ただし、イランが世界経済を混乱させ、ますます孤立化する手段を採るかは疑問です。現時点で、WTI原油価格は世界的なインフレ要因となる水準ではありません。 米国の企業業績は2026年には問題一巡から再加速へ 米国と主要国・地域との関税交渉ははかどっておらず、7月9日の期限が延長されて交渉が続く可能性があります。米国では、関税の悪影響を訴える企業の声が強まっていますが、コスト転嫁によるインフレはまだ強くありません。雇用環境も底堅い状況です。夏ごろに対応期限を迎える連邦政府債務への手当てや、大型の減税などを盛り込んだ法案が審議中です。法案が成立すれば、景気の下支えとなります。FRBは、関税や経済、インフレの状況を見極めるまで、政策金利の据え置きを続けるとみられます。2025年の業績成長は減速しますが、様々な問題が一巡する2026年には、業績は二桁増益に再加速するとみられます。引き続き、テクノロジー分野が業績のけん引役となり、AI市場の拡大は関連企業に大きな追い風となるでしょう。 米国と中国との通商協議は継続 米国の政策の不透明さから、対米ドルでユーロが上昇しています。ユーロ圏のインフレは落ち着きつつあり、ECBの利下げ局面は終わりが近付いています。中国では景気減速が続く中で、政府は財政や金融政策で景気を下支えしています。米国とは2度の通商合意に至っていますが、詳細が明らかではなく、最終合意には至っていないことから、協議は継続するとみられます。 日本の企業業績は2026年度に再拡大へ 日本の貿易統計に、米国関税政策の悪影響はまだみられていません。実質賃金は低迷しており、政府はコメやエネルギー価格など、家計を支援する政策を打ち出しました。日本銀行は経済や米国通商政策などの状況を見極めるまで、利上げは行わないとみられます。国債市場で、超長期国債利回りが上昇し不安定化していますが、その超長期国債の発行減額や国債買い入れでの配慮などで、政府や日本銀行は対応を講じています。政府の政策や金利の方向感から、円は米ドル高には向かいにくくなる可能性があります。企業業績は、米国の関税政策の影響から、主力製造業の多くで減益が見込まれています。しかし、影響が一巡する2026年度には二桁増益に転じるとみられます。日経平均株価のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)はここ数年のレンジ内にあり、野村證券は年末の予想を39,500円とみます。 投資戦略については、トランプ政権の政策判断により、国内外の株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる場面はまだあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくく、成長が続くテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えず、悪材料の一巡と共に企業業績が復調に向かう局面となれば、株式市場の再評価が進むとみます。 ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 7月号」(発行日:2025年6月23日)「投資戦略の概要」より 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト 小髙 貴久 1999年野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。日本の経済・財政・金融動向、内外資本フローなどの経済・為替に関する調査を経て、2009年より投資情報部で各国経済や為替、金利などをオール・ラウンドに調査。現在は日本株に軸足を置いた分析を行う。2013年よりNomura21Global編集長を務める。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点

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