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07/14 19:00

【特集】株価に影響を与える主な要因~金利・企業業績・リスクプレミアム・VIX指数~

株価に影響を与える要因として主に「金利」「企業業績」があり、「リスクプレミアム」も要因として挙げられます。可視化しにくい要因であるリスクプレミアムについては「VIX指数」という指標が参考になります。株価と各指標の関係や見方について、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの小高貴久が解説します。 株価に影響を与える主な3つの要因 ――最近、米国の金利と株価のニュースをよく耳にします。株価と金利はどのような関係にあるのでしょうか。 一般的に、金利が上昇すると、株価が下がる要因となり得ます。直感的には「金利が上昇すると企業の資金調達コストも上昇し、企業の業績が圧迫されるのではないかと投資家が不安視するため」と考えると分かりやすいのではないでしょうか。 ただ、より重要なのは、金利は「お金の将来の価値を現在の価値に計算し直す(現在価値に割り引く)」役目を担っている、という点です。 金利が上昇すると企業が生み出す将来のお金の価値が同じだとしても、現在の価値に計算しなおしてみると割引率が大きくなり、現在の価値が下がることになります。その結果、企業価値を映し出す株価も下落するのです。 以下の図を例に解説します。 (出所)野村證券投資情報部作成 例えば1年後の価値が2,000円、今の金利が0%と考えてみます。1年後の価値を今の価値に計算しなおしてみると、金利は0%であれば、今の2,000円と1年後の2,000円は価値が同じです。次に、仮にこの瞬間、金利が0%から1%に上昇したとします。すると、1年後の2,000円の価値は、今、1,980円(≒2,000円÷1.01)に下落することになります。 さらに、金利がこの瞬間に2%に上昇したとすると、1年後の2,000円という価値は、今、1,960円(≒2,000円÷1.02)に下落することになります。株価は1年後、2年後……、10年後……、の利益や価値を、市場参加者が「今買うならばいくらか」と考えることによって値付けされるため、金利の影響は小さくないと言えます。 米国では、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が高い金利水準を維持する金融政策によって景気の過熱を抑え、耐え難いほどのインフレが徐々に減速しています。このため、そろそろ金利を引き下げて、金利水準を正常化しても良いのではないか、といった市場の見通しが広がっています。 しかし、毎月発表されるCPI(消費者物価指数)や雇用統計などの景気指標で、まだまだインフレ率が安心できるほど抑制されていなかったり、逆に強い経済指標であったりすると、「利下げが先送りされる」という見方が強まり、金利の上昇とともに株価が下落してしまうケースもあります。 好景気が続いているのに株価が下落する、という理屈が不自然だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これまでに説明した金利による株価への影響を踏まえると、納得いただけるのではないでしょうか。 金利の代表的な指標である国債の利回りは、1年、2年、3年……と様々な年限がありますが、それだけたくさんの金利を全て見ることはできません。このため、代表的な指標と言われる10年国債の利回りを見ることで、株価との関係を判断するのが良いと思います。 日本銀行のマイナス金利政策が2024年3月に解除された影響で、2024年5月22日には約11年ぶりに10年物国債の利回りが1%に上昇しました。長期の住宅ローンなどを組もうとしている方だけでなく、株式や投資信託などに投資し、資産を運用している方も、今後の動向を注視した方がいいでしょう。 ――では、企業の業績はどうして株価に影響するのでしょうか。 これは3つの要因の中でも最も基本的な話ではありますが、企業が事業によって生み出した利益は、設備や新規事業への投資の原資となるだけではなく、配当金などとして株主に還元されます。業績が良くなって利益が拡大していけば、その企業の将来の価値が増えてゆくことが期待されるため、株価の上昇要因となります。 個別の企業に限らず日経平均株価やTOPIXなどでも同様に、組み入れ銘柄の利益が拡大することに関係しそうなニュースや、アナリストなどの業績予想の上方修正などが、値動きに影響すると言えます。 ――「リスクプレミアム」という言葉はやや聞きなれないのですが、これはどういったものなのでしょう。 リスクプレミアムとは、その金融資産を保有した場合の「期待収益率」のうち、長期国債金利など相対的にリスクが低いとされる安全資産の利回りを上回る部分を指します。「危険負担料」などと呼ばれることもあります。リスクプレミアムが拡大すると、株価が下落する要因となり得ます。 例えばある企業を例に考えてみましょう。この企業が進めている事業が、利益が出るかどうかが不透明な事業や、利益の変動の大きい事業、つまり投資資金の回収リスクがあると判断されれば、投資を手控える投資家が増え、株価が下落する要因となります。 具体例を挙げるとすると、ウクライナへの軍事侵攻に対するロシアへの経済制裁は、「ロシアの企業との金融取引ができなくなる」という非常に大きなリスクプレミアムと考えられます。影響範囲はロシアの企業だけでなく、ロシアの企業と取引をしていた他国の企業など世界の市場に影響が及びました。 一方で、リスクプレミアムが大きい金融商品は「期待収益率の不確実性」が大きいため、期待できるリターンも大きくなるとも言えます。 ただ、株式のリスクプレミアムには、CAPM(資本資産価格モデル)といった理論による公式などもありますが、直接的には観測しにくい指標と言えます。 リスクプレミアムの代替指標としてのVIX指数とは ――リスクプレミアムが直接観測しにくい指標なのであれば、ほかに「期待収益率の不確実性」を示す指標はありますか。 「VIX指数(ボラティリティー・インデックス)」という指標があります。株価が大きく下落すると、VIX指数も上昇するケースがあります。VIX指数はCBOE(米シカゴ・オプション取引所)が米国の代表的な株価指数の一つ、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティー(変動率)を基に算出・公表している指数です。 オプション取引は(1)将来のあらかじめ決められた期日に、(2)金融商品を現在取り決めた価格で(3)売買でき、都合が悪ければしなくても良い、という権利の取引のことです。経済の先行き不安などで投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式を売却したいという動きが強まると、「今の時点で一定の価格を決めておいて、その後もっと株価が下がったとしても、下がる前の株価で売り抜けることができる」というオプションの権利の価値が高まります。 他にも細かくは色々とあるのですが、このような変化を指標として反映するVIX指数も上昇します。このため、投資家の恐怖心理を表しているとされ、「恐怖指数」とも呼ばれます。過去の株価変動の結果が将来の株価に影響を与えると考えられるためです。 VIX指数自体は米国株市場の指標ではありますが、米国には世界的な企業も多く、特に米国と日本は経済的な結びつきも深いこともあり、日本経済は米国経済の影響を強く受けやすいと言えます。 このため、VIX指数が変動すると日本の市場にも影響します。ちなみに、日本にも日経平均株価のオプション取引のボラティリティーを基に算出される「日経平均ボラティリティー・インデックス」という指数もありますが、世界的に注目度の高いのはやはりVIX指数の方ではないでしょうか。 VIX指数は20を超えると市場に参加している投資家の不安心理が高いと見なされることが多く、この水準を下回ることが、市場が安定していると判断される一つの目安になっています。VIX指数はこれまで、リーマン・ショック時の2008年10月に89.53、コロナ・ショック時の2020年3月に85.47まで上昇しました。 (注)データは日次で、直近の値は2024年5月30日。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)金利翌日物のレンジの中央値。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ――直近のVIX指数の推移を見てみると、2023年10月と2024年4月に上昇しています。何がVIX指数に影響を及ぼしたのでしょうか。 これは、イスラエルとイランを取り巻く地政学リスクの高まりを受けたものと考えられ、特に、産油地域の混乱が世界経済に悪影響を及ぼす可能性が懸念されました。 ただ、2022年2月のロシアによるウクライナへの侵攻開始や、2022年3月からの米国の利上げが始まった時に比べると、VIX指数の上昇は限定的でした。イスラエルやイランが相互に報復を続けることを自重する動きも見られるため、市場参加者も現時点で中東の地政学リスクが株価に与える影響も限定的なものにとどまると見ているのではないでしょうか。 これは、世界経済における存在感が大きいサウジアラビアなどの主要な産油国に戦闘が広がっていないためとも言えます。ただし今後、主要な産油国にまで戦闘地域が拡大し、原油価格がさらに高騰することになれば、株価下落を通じて株式市場の見通しが変化します。VIX指数が20を超えるような際には、株価が不安定になることを想定していると考えられるため、注意が必要でしょう。 ご投資にあたっての注意点

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07/12 19:00

【特集】野村證券・池田雄之輔「日経平均株価一時42,000円超えの背景にある3つの理由」

文/斎藤 健二(金融・Fintechジャーナリスト) 2024年7月初旬、日本株は大きく上昇し、連日のように最高値を更新する相場となりました。7月4日にはTOPIX(東証株価指数)が史上最高値を更新し、7月11日には日経平均株価が終値で42,224円となり、初めて42,000円台を突破しました。ただし、7月12日には反落し、日経平均株価が1,000円超の値下がりになるなど、上下動が激しくなっています。 日経平均株価は2024年2月に34年ぶりの最高値を更新したものの、4月から6月にかけて足踏みしてきました。再び上昇した背景には何があるのでしょうか。野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。 2024年に入ってから、日本株の動きはダイナミックでした。年初に日経平均株価は33,000円からスタートし、41,000円まで一気に上がりました。その後は上がった分の半分ほど下げて37,000円台まで下落しましたが、また上昇し、7月11日終値では42,000円を超えるまでに回復しました。 このような急激な上昇を見ると、「高すぎる、今のうちに売却したほうがいいんじゃないか」「株価が高くて今さら投資を始められない」という“高所恐怖症”になる方もいるかもしれません。しかしこれは一過性の強さではなく、日本経済の構造的な変化の反映だと考えています。 日経平均上昇の背景にある3つの要素 日本株の急上昇の背景には、3つの重要な要素があると考えます。1つ目はデフレ脱却、2つ目は脱中国の動き、そして3つ目がコーポレートガバナンスの改革です。 1つ目のデフレ脱却は、日本株が昨年来これだけ強くなってきている最大の理由だと考えています。日本経済は90年代以降、長くデフレに苦しんできました。バブル崩壊後、経済は縮小均衡にあり、企業が値上げに踏み切れない世界を長く経験してきたのです。それが今、30年ぶりにデフレ脱却に向かっています。 2つ目は、グローバルな投資家が中国からお金を逃がそうとしている、「脱中国」とも呼べる出来事です。世界の投資家の間で、中国がデフレに突入するのではないかという警戒感が特に昨年から強まっています。中国がかつての日本のように不動産バブル崩壊を機に、長期停滞に陥るのではないかという不安から、中国株に投資していたお金の逃げ場所として日本が選ばれやすくなっているのです。 3つ目は、コーポレートガバナンスの改革です。2023年3月、東京証券取引所から上場企業に向けて、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をするようにという要請がありました。これが予想以上に実のある改革につながっています。 この3つの要素が同時に進行していることが、日本株の強さを支えているという見方をしています。 6月にかけてなぜ株価の調整が起きたのか では、6月にかけてなぜ株価の調整が起きたのでしょうか。 まず、デフレ脱却に関しては、良いニュースがいったん出尽くしたという状況だったと思います。3月中旬に春闘の第1回集計が出て、5%を超える賃上げがされたことがわかりました。さらに、日銀が3月の決定会合でマイナス金利を解除するという歴史的な決定をしました。これらのイベントが、デフレ脱却の象徴的なターニングポイントとなり、ある意味で「良いところは出尽くした」という捉え方をされ、利益確定も進んだと見ています。 次に、中国に関しては、3月から4月にかけて、意外にも中国経済が回復するのではないかという見方が出てきました。春先に経済指標が一時的に上向いたこともあり、中国株が買われる時期がありました。そのため、それまで日本に逃げ込んでいたお金の一部が中国に戻るという動きが見られました。 最後に、コーポレートガバナンスについても、一旦の出尽くし感が出ていました。5月の連休前後に企業の決算発表がありましたが、自社株買いの発表など良いニュースがある一方で、2024年度の業績見通しについては増益を見込まない企業が多く、やや保守的な印象が強まりました。 さらに、日銀の金融政策に関する不透明感も株価の重石となりました。6月14日の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額を検討すると発表があり、これも市場に不透明感をもたらしました。 懸念払拭し再上昇始めた日本株 では、ここに来てなぜ日経平均は再び上昇に転じたのでしょうか。実は、先ほど述べた3つの要素自体は変わっていません。それぞれの要素について、市場の見方が再び前向きになったことが大きいと見ています。 まず、デフレ脱却に関しては、日本のインフレの持続性や賃金の強さが改めて認識されました。今回のインフレが始まった当初は、輸入物価の上昇によるコストプッシュ型のインフレだという見方もありましたが、人手不足と相まって賃金上昇が起こり、より持続的なインフレに変化しつつあります。象徴的なのは、輸入物価が22年9月にピークアウトし、今年6月にかけて8.8%低下しているのですが、同じ間に国内企業物価は5.9%上昇しています。このような「ワニ口現象」は日本が今まで経験しなかった姿です。7月1日に公表された日銀短観でも、全規模・全産業の販売価格見通し(1年後)が2.8%と、2四半期連続で上昇し、値上げカルチャーの浸透を示唆しました。アナリストが追っている個別企業の動向を見ても、値下げを再開するところは少なく、インフレの定着が進んでいることが分かってきました。 次に中国については、米国大統領選におけるトランプ元大統領の再選の可能性が再び意識され始めました。日本時間の6月28日に行われたテレビ討論会の「直接対決」でバイデン大統領の健康不安が高まったことが一つの転機になっています。トランプ氏は対中国で厳しい政策を取ることが予想されるため、再び投資マネーの「脱中国」が注目され始めました。加えて、中国経済の弱さも顕在化し、結果として日本市場の相対的な安定性が再評価されることにつながっています。 コーポレートガバナンスについては、企業業績の保守的な見通しは日本企業の特徴であり、それほど悲観する必要はないという見方に落ち着いてきました。むしろ、今年の自社株買い設定額は6月までで9兆円というレベルになっており、2023年までの水準から約5割増という異次元の増加をみせています。これまでと異なり、株価上昇局面でも自社株買いが積極化しているということは、企業がガバナンス改革に真摯に取り組んでいることの表れと言えます。この点は海外の長期投資家からも高く評価されています。 円安は株価を押し上げた 円高の心配は? 為替市場の動向も株価を後押ししました。円安が進行したことで、日本企業全体としては業績にプラスの影響がありました。ただし、以前のように極端な円安依存ではなく、為替に対する耐性が高まっているのも特徴です。例えば、10円の円安で利益が3%程度押し上げられる効果があります。現在の企業の為替前提は143円程度ですが、そこまで円高が進むと想定した上でも、今年度と来年度は8%台の増益が確保できると試算しています。多少の円高には十分耐えられる体質になっています。 野村では、今後為替は米国の緩やかな金利低下とともに円高ドル安傾向に動くと予想しています。24年12月は148円、25年12月は140円という見立てです。逆に、円安がそろそろ天井に近づいているとみる日本側の理由もあります。例えば1ドル170円を超えるような水準まで円安が進むと、インフレ期待が2%を超える可能性が出てきます。そうなると、日銀も追加利上げを急ぐ必要が出てくるため、「日銀が放置してくれる円安」には限界が訪れると見ています。 為替レートが円高方向に進んだとしても、必ずしも株価の下落に直結しないと考えられます。過去、円高は、世界経済の減速が原因であることが通例でしたが、今回予想する円高は、米国のインフレが明確に沈静化することによる、利下げ転換が主因となりそうです。世界景気の基調は崩れないまま緩やかな円高へと移行するシナリオが考えられます。ドルベースで運用している海外投資家にとってはベストの「円高・株高シナリオ」が実現する可能性は高いと見ています。 2026年3月末の日経平均株価予想レンジの上限は48,000円 以上の理由から、現在の42,000円台という水準は、決して違和感のあるものではないと考えています。ただし、今後のリスクについても考慮する必要があります。主なリスク要因としては、米国の大統領選挙や世界経済の減速などが挙げられます。 まず、米国大統領選挙について、一時的に市場が荒れる可能性があります。特に、トランプ氏の政策は減税期待など株式市場にとってプラスの面もありますが、対中政策に関する不透明性が最大の問題です。 世界経済、特に米国経済の動向も重要です。現在のメインシナリオは景気後退(リセッション)に陥らずソフトランディングすることですが、リセッションのリスクも完全には否定できません。特に注意すべきは米国の消費動向です。これまでコロナ禍で蓄積された貯蓄による消費の下支えがありましたが、その効果も徐々に薄れつつあります。米国の消費が予想以上に弱くなれば、日本の輸出企業にも影響が出る可能性があります。 こうしたリスクにも十分注意しながらも、先に挙げた3つの要素に関する前提が大きく崩れない限りは、株価は上下動を繰り返しながら、基調としては上がる方向を見ています。今の状況で、「株価が高すぎる」と過度に恐れる必要はないでしょう。 野村證券では2025年3月末の日経平均株価の予想レンジを36,000円から44,000円とみています。今の株価水準から考えると、このレンジの上限に達する可能性があると見ていいでしょう。2026年3月末の予想レンジの上限は48,000円としています。日本企業の構造的な変化と、それに伴う持続的な成長への期待が、今後の株式市場を支える大きな要因となりそうです。 野村證券 市場戦略リサーチ部長 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「モーニングサテライト」に定期的に出演中。 ご投資にあたっての注意点

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07/07 19:00

【特集】慎重派ストラテジスト・大川智宏「個人投資家にとっての優良株の探し方」

文/中城邦子 ※写真は全てイメージです。 個人投資家が株式市場のなかで見落とされている優良銘柄を探すとしたら、どんな視点で探せばいいのでしょう。QUICKナレッジコンテンツ本部の中山桂一さんが、智剣・Oskarグループの主席ストラテジスト大川智宏さんに聞きました(対談日:2024年4月2日)。 日本株の継続的な上昇のカギは内需関連株が握る 中山桂一さん(以下、中山)日経平均株価は2月に1989年以来の高値を更新しましたね。また2023年10月に、およそ34年ぶりの円安水準になって以降、円高になっていないことが、余計日経平均の上昇に弾みをつけました。大川さんは、「慎重派」ともいわれるストラテジストですが、これをどうご覧になっていますか。 大川智宏さん(以下、大川)ひと言で言ったら、びっくりですよ。ただ、日経平均株価の高値についていうと、構成銘柄のうちの半導体大手のウエイトが大きいですよね。日本株全体がそうですが、上昇した背景には外部要因が多く、内需関連株はあまり上昇していません。 中山内需関連株のなかでも、特に医薬品、食料品などでは下がっている銘柄が多い印象です。円安が痛手となっているという見方でいいんでしょうか。 大川輸入物価の高騰は、内需関連株にとってダブルパンチです。円安で製造コストが上がって利益を押し下げる。食料品や日用品が値上がりしているから、消費が伸びない。賃金を上げにくい状況です。すそ野が広い内需株が伸びないので、株価の上昇ほどには市場としても高揚感がない。本来、日本株だったら日本の内需で引き上げるべきなのですが、いびつになっていると見ています。 中山2023年3月に、東証が企業に「資本コストと株価を意識した経営」を要請しました。よくPBR(株価純資産倍率)改革といわれるものです。PBR改革によって、海外投資家がより日本株を買いやすくなるのかもしれません。それも外的な要素ですね。 大川PBRが1倍を割っていて、かつ海外投資家も買うような大型割安株は基本的に外需関連株が多かったですね。そのため内需関連株はフォーカスされにくい状況が続いてきました。そこがキャッチアップしてくるかどうかが、日本株の継続的な上昇の中で一番重要なファクターになると見ています。 決算短信で上方修正の有無、業績進捗率を確認 中山個人投資家の強みを活かした、見落とされている銘柄やまだ値上がりしていない優良銘柄の探し方はあるのでしょうか。 大川プロでない方が、どうやったら「出遅れ銘柄」、つまりこれから株価が上がることが期待できる銘柄を見つけることができるのか。その観点では、私は中小型株に注目するといいと思います。個人投資家の強みは自由にリスクを取れることと、中小型株に手が出せることなんです。機関投資家は手が出せない事情がありますから。 せっかく投資できるのだから、それぞれのリスク許容度に合わせて、個人投資家の強みを生かして投資するスタイルの人が増えてもいいんじゃないかなと思いますね。 そして、大事なのは銘柄を探す際に見る指標です。企業の増益率に注目しがちなんですが、そうではなくて業績予想の修正に注目してほしいと思います。 決算は一度出るとすぐに株価に織り込まれてしまいますが、予想の修正幅がどれぐらいなら株価に何%織り込まれるかは、それほど法則がありません。それがミスプライスを生んでいたり、あまり株価に織り込まれていなかったりすることがあります。 しかも、業績予想の修正は決算短信で簡単に確認できる。業績サマリーの下にある「業績予想」欄の有無を見て、修正内容を見るだけでもわかることなので、時間がない方や詳しくない方にも、有用性が高い情報です。 さらに一歩踏み込むなら業績進捗率です。例えば、第2四半期が終わった時点で進捗率85%なのに上方修正していない、そのせいで株価が上がってきていないという銘柄はよく見るとけっこう見つけられます。新興市場で上場している銘柄とか、特に中小型株は投資家でも見ていない人が多いですから。 中山年度の途中で、前もって見込んだ業績予想よりも大きな上振れや下振れが想定されると、業績予想の修正がされます。それと、通期の予想に対する進捗率を確認したほうがいいということですね。 大川はい。株価に織り込まれていない変化を探すことが、ミスプライスを取るうま味でもあるので、丁寧に見つけていくとなると、内需の中小型株がいいと思うんです。海外投資家が興味を持っていないからこそ、チャンスがまだまだ埋まっています。 中山株式市場の中で見落とされて株価が上がっていないし、業績の上向きにも気づかれにくいところですね。 個人投資家の投資リスクの考え方と出遅れ銘柄の探し方 中山PER(株価収益率)やPBRに注目して割安株を見つけるという方法はどうでしょうか。 大川私の持論ですが、PERやPBRが低い銘柄は、基本的に個人投資家は手を出さないほうがいいんです。割安ということには何か理由があり、リスクが隠れている可能性があるということですから。ただ、超低PERかつ増益予想の銘柄なら選ぶ意味もあるんじゃないかと思います。ここまで株価が下がっているなら多少のリスクは取れるんじゃないかという意味で、PERが8倍以下くらいで、12か月EPS成長率がプラスのものを探すのも一案です。 中山増益が予想できるけれども、割安に放置されているとみることができるわけですね。投資家が注目し始めると、上がる可能性がある。 大川逆にいうと、調整局面で下がりにくいともいえます。持っている投資家が少ないのだから。 中山では、好む人が多いと思われる高配当株はどう見ればいいでしょうか。 一定額を定期的に受け取れる投資商品は、年金生活者を中心に需要があったから、日本では毎月分配型の投資信託の販売が伸びた時期があります。また、高配当銘柄で構成された指数に連動する「高配当ETF」も人気が高まっていると聞きます。 大川高配当株を好む人は、新しいNISAが始まって以降、ますます増えていると想像できますね。ただし、高配当株も低PER・低PBR株と同じで、もらえる配当に対して株価が低いということだから、リスクはあるのです。何かの拍子に株価が急落したり、減配したりするリスクもありますから。 そこで配当利回りが高い銘柄を2つに分けて考えました。それが下の図です。株価が下落して配当利回りが3%になったのか、株価が上昇してもまだ配当利回りが3%あるのかで、意味合いが全然違う。 中山どういう変化率でこうなったのかを見ることが大切ということですね。 出所:智剣・Oskarグループ ※上図はイメージです 大川私は「株価下落型」と「そもそも高配当型」を比較したことがあり、その結果、後者のほうがその後のパフォーマンスがよくなる可能性が高いと考えています。 中山株価が下がって配当利回りが高い銘柄よりも、株価が上がっているから安心して持てるという考え方ですね。株価が低いほうがお得だと考えがちなので、この考えを覚えておくといいですね。 自己資本比率もチェックして負けない投資を目指す 大川もうひとつは、高配当株の選び方として、自己資本比率もチェックするといいです。自己資本比率が高い×高配当利回り株の組み合わせに注目すると、その後もパフォーマンスが上がる可能性が高いと考えています。 配当利回りが高いということは、何がリスクとなるかというと減配や無配に陥るということです。でも自己資本比率が高い企業なら、多少の業績の悪化でも配当を払える可能性が高い。リスクを低減するという意味での整合性がある組み合わせなのです。 この指標も、決算短信の1ページ目にある業績サマリーを見るだけで個人でも簡単に計算できます。業種にもよりますが、例えば配当利回り4%以上で、自己資本比率50%以上などが目安になると思います。 中山減配リスクがないことに加え、東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請があったことで、自己資本比率が高い企業にはもっと株主還元するよう求められていますから、増配ないし資本を圧縮するための自己株式の取得などを行う可能性もありますよね。 大川それによってさらに配当利回りが上がるかもしれませんよね。 中山改善に向けた経営改革策を示した企業のリストを東証が公表していますから、確認することも可能です。日本の企業は横並び気質が高いので、まだ何もしていない企業も今年中に経営計画を出すなどの行動に出るタイミングで、株価も評価されやすいかなというのはありますね。 ※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。 ご投資にあたっての注意点

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07/04 19:00

【銘柄特集】配当利回りが魅力的かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(7/4)

(注)画像はイメージ。 業績や流動性の面で不安が少ない高配当銘柄をスクリーニング 配当金は、企業の価値(株価)を決める重要な指標であり、株式投資の魅力のひとつです。配当利回りは、投資した金額に対して受け取れる予想配当金の割合を示したもので、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための指標でもあります。 予想配当利回りが高ければ高いほど、少ない投資額で受け取れる配当金は大きくなります。ただし、配当の源泉は企業利益であるため、対象企業の業績悪化により減配・無配となってしまうケースもあります。 以下の表では、2024年6月26日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄の中から、通期配当利回りが高い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。HDはホールディングス。MS&ADはMS&ADインシュアランスグループホールディングス。株価、業績予想数値、レーティングはいずれも2024年6月26日時点。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2024年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは2024年度予想税引き利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2024年度経常増益率。ソフトバンクは2024年9月30日を基準日として1:10の株式分割を行う予定。1株当たり配当は株式分割調整後の数値。(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点

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07/02 19:00

【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(7/2)

NTT、株式分割実施から1年が経過 日本電信電話(9432)が1位にランクインしました。同社が1株を25株に分割する株式分割を実施してから、1年が経過しました。分割直前の昨年6月28日の株価終値は4,405円(修正株価:176.2円)でしたが、1年後の6月28日の株価終値は151.8円と、この1年間で株価は約14%下落しました。 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が3位にランクインしました。同社への行政処分が金融庁によって6月24日付で公表されました。6月14日には、証券取引等監視委員会からの勧告が公表されており、本件はサプライズではありません。業務改善計画の提出および報告徴求の期限はいずれも2024年7月24日とされています。 三菱重工業(7011)が4位にランクインしました。同社と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した国の大型基幹ロケット「H3」の3号機が7月1日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げからおよそ17分後に、搭載された地球観測衛星「だいち4号」を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功しました。 日立製作所(6501)が7位にランクインしました。同社は2024年7月1日を効力発生日として、1株を5株に分割しました。なお、同社株価は7月1日に年初来高値を更新しています。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注)画像はイメージ。各種データは2024年7月1日時点。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点

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06/25 09:30

【銘柄特集】PBRが低位かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(6/25)

(注)画像はイメージ。 今期中に自己資本が毀損するリスクの低い低PBR銘柄をスクリーニング PBR(株価純資産倍率)は、株価をBPS(1株当たり純資産)で割ったもので、現在の企業価値が手持ちの資産の何倍に評価されているかを示す指標です。PER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための代表的な指標となっています。 PBRの高い銘柄は割高に見えますが、業績の安定性、利益成長への期待の高さを反映しているとも言えます。言い換えると、PBRの低い銘柄、とりわけ帳簿上の解散価値と同義である1倍を大きく割れている銘柄は、将来的に自己資本が毀損するリスクがあると市場から評価されていることになります。 以下の表では、2024年6月7日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄(少なくとも今期自己資本が毀損するリスクの低い銘柄)の中から、PBRの低い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。HDはホールディングス、FGはフィナンシャルグループ。株価、業績予想数値はいずれも2024年6月7日時点。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2024年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは今期予想税引き利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2024年度経常増益率。三井住友FGは2024年9月30日を基準日として1:3の株式分割を行う予定。1株当たり配当は株式分割調整後の数値。(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点

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06/24 09:30

【銘柄特集】配当利回りが魅力的かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(6/24)

(注)画像はイメージ。 業績や流動性の面で不安が少ない高配当銘柄をスクリーニング 配当金は、企業の価値(株価)を決める重要な指標であり、株式投資の魅力のひとつです。配当利回りは、投資した金額に対して受け取れる予想配当金の割合を示したもので、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための指標でもあります。 予想配当利回りが高ければ高いほど、少ない投資額で受け取れる配当金は大きくなります。ただし、配当の源泉は企業利益であるため、対象企業の業績悪化により減配・無配となってしまうケースもあります。 以下の表では、2024年6月7日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄の中から、通期配当利回りが高い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。MS&ADはMS&ADインシュアランスグループホールディングス。株価、業績予想数値はいずれも2024年6月7日時点。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2024年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは2024年度予想税引き利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2024年度経常増益率。ソフトバンクは2024年9月30日を基準日として1:10の株式分割を行う予定。1株当たり配当は株式分割調整後の数値。(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点

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06/21 19:00

【特集】株主優待 “人気ランキング” 総合編 (6/21)

株主優待 – 人気ランキング – (注)データ取得並び株価の数値は2024年6月7日。(注)ランキングは、野村證券ホームページ、オンラインサービスに掲載の株主優待の月間閲覧数をもとに算出。ホームページランキングは毎月第2営業日目に更新。諸般の事情により一部銘柄をランキングから除外している場合があり、順位が変わることがある。(★)マーク・・・株主優待の権利を取得できる最低株数と最低売買単位が異なる。(※1)毎年進呈するものではない。同一の株主番号で得られる最大のdポイント数は4,500ポイント。(※2)2024年9月末を基準日とする株主優待内容を記載。詳細はホームページ等参照。(※3)2025年度より優待制度変更。2025年3月31日時点で保有期間が1年以上となる株主対象。具体的なサービス、特典内容は今後ホームページ等で案内予定。(※4)株主優待制度を新設。初回は2024年8月末基準日。2回目以降は毎年2月末基準日。詳細は、ホームページ等で案内予定。(※5)株主優待制度を新設。初回は2026年3月末基準日。2025年3月末から2026年3月末の間に継続保有していた株主が対象。詳細は、ホームページ等で案内予定。2024年9月末を基準日として、普通株式1株につき10株の割合で分割。(※6)2025年12月末日を基準日より、継続して1年以上保有の株主へ変更。(※7)2024年8月末を基準日として、普通株式1株につき2株の割合で分割。(出所)野村證券ホームページ、オンラインサービス掲載「株主優待-人気ランキング-」“総合ランキング”より野村證券投資情報部作成 実施されている株主優待が変更・廃止される場合があります。また、保有株数・保有期間などにより株主優待内容や割当基準日が異なる場合があります。ご投資に際しては、株主優待内容の詳細及び最新の情報を各企業のホームページなどでご確認ください。 (野村證券投資情報部  山口 菜穂) ご投資にあたっての注意点

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06/16 19:00

【特集】1年で株価が2倍の「バガー銘柄」その傾向とは 実際に2倍になった銘柄を分析

大きく値上がりしそうな銘柄を探して投資できるのも株式の魅力の一つです。しかし、実際に探すとなると難しいものです。1年間で株価が2倍以上になった「バガー銘柄」にはどんな傾向があるのでしょうか。野村證券投資情報部の大坂隼矢が過去の事例に照らし、銘柄探しのヒントについて解説します。 2023年は生成AIや半導体工場誘致が投資のテーマに ――昨年1年間で2倍以上になった「バガー銘柄」には、どんなものがありましたか。 大坂隼矢(以下、同)日本の株式市場に上場している4,000を超える銘柄のうち、2023年に2倍以上に値上がりしたのは計127銘柄でした。 (注)前年末から各年末までの年間騰落率が100%(2倍)以上となった銘柄数を算出。前年末の時価総額で算出。母集団は現在の全上場企業であり、上場廃止になった銘柄は含まない。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 2023年は生成AIが市場の注目テーマとなりました。生成AI向けクラウドサービスを展開するさくらインターネット(3778)や、生成AI向け半導体の生産に用いられる独自の製造装置が注目されたTOWA(6315)などの株価が1年間で4倍以上の上昇となりました。 また、TSMCの熊本工場新設などを受け、国内の半導体関連企業にも注目が集まり、半導体製造に必要な「超純水」を展開する野村マイクロ・サイエンス(6254)や半導体テストの受託事業を展開するテラプローブ(6627)なども株価を3倍以上に伸ばしました。 1年間で株価が2倍になるバガー銘柄は、時価総額の小さな小型株に多く見られます。しかし、時価総額が比較的大きな企業でも株価が2倍になる銘柄は存在します。2023年の年初時点で時価総額が1,000億円を超えていた銘柄で、2023年の1年間で2倍以上になった銘柄は計15銘柄ありました。「生成AI」や「半導体工場誘致」が投資のテーマとなったこともあり、半導体関連企業が過半数を占めています。 また、神戸製鋼所(5406)や山崎製パン(2212)など、かつてPBRが1倍を大きく割れるほど市場の評価が低かった銘柄が、業績の大幅な改善をきっかけとして、評価が「一変」するといったケースもありました。 2023年に株価が2倍以上になった銘柄(2022年末時点の時価総額1,000億円以上の銘柄) (注)2022年末から2023年末までの年間騰落率が100%(2倍)以上となった銘柄のうち、2022年末時点で時価総額1000億円以上の銘柄を掲載している。母集団は現在の全上場企業であり、上場廃止になった銘柄は含まない。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 ――過去にはどういった銘柄の株価が大きく上昇したのでしょうか。 2023年に半導体が投資のテーマとなったように、時代の変化によって、注目される銘柄も移り変わっています。 例えば、新型コロナウイルスの感染が拡大していた2020年は「医療のデジタル化」がテーマとなり、医療従事者向けプラットフォームを展開するエムスリー(2413)や医療データを提供するJMDC(4483)が2倍を超える上昇率を記録しました。 また、コロナ禍での「巣ごもり需要」もテーマとなり、コーエーテクモホールディングス(3635)やネクソン(3659)、カプコン(9697)といったゲーム関連株も大きく上昇しました。 (注)業種は東証33業種分類。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 ――2倍以上に上昇する銘柄は将来的な成長が期待されている銘柄ですので、事業への先行投資などによって赤字になっている企業も多いようなイメージがあります。 1年で株価が2倍になった銘柄を業種別に分けると、「情報通信」や「サービス業」の比率が相対的に高い年が多いです。これらの業種は比較的、新しい企業が生まれやすいとされる業種です。 確かに、新興企業の中には、将来の成長のために積極的な投資を行っているため経常赤字を計上している企業もあり、バガー銘柄の中にも、経常赤字の企業は一定程度存在します。 ただし、その比率は決して高くありません。投資家にとっては、将来の成長を期待できる経常赤字の企業に投資するより、成長も期待でき、なおかつ現状も経常黒字となっている企業に投資をした方が投資リスクを抑えるといった点では有効だからではないでしょうか。 ――バガー銘柄を探すためのポイントを教えてください。 月並みではありますが、社会の動きを読むことが大切だと思います。株式市場は人気投票の場です。生成AIやコロナ禍など、時勢やトレンドを踏まえ、資金が集まりそうなセクターや企業を探してみましょう。 そして、自分なりに見つけ出した企業の売上高や利益が、足元で着実に伸びているかどうかを企業のIR情報などで確認してから投資をするかどうかを決めるのがよいと思います。 ご投資にあたっての注意点

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06/16 12:00

【特集】TOPIX Core30採用銘柄の変遷からみる、日本の株式市場の変化

「TOPIX Core30(以下、Core30)」をご存じでしょうか。東京証券取引所(東証)が算出・公表している、日本の上場企業のうち時価総額と流動性がともに高い30銘柄で構成される株価指数です。1998年に設けられた「日本の代表的企業群」ともいえます。過去から現在までの値動きと採用銘柄の変遷について、投資情報部で株価チャートなどの分析を担当している野村證券投資情報部の岩本竜太郎が解説します。 日本を代表する「超大型株」30銘柄 ――Core30は一般的にあまりなじみのない指数ですが、具体的にどういったものなのでしょうか。 岩本竜太郎(以下、同)東証は上場企業のうち、時価総額100位に入るものを「大型株」としていますが、TOPIX Core30(以下、Core30)は、時価総額が数兆円超の日本を代表する「超大型株」30銘柄で構成される株価指数です。 TOPIXと同じく、東証が算出・公表している株価指数「TOPIXニューインデックスシリーズ」の一つです。東証が毎年8月末時点の株価などを基に、10月末に銘柄の入れ替えを実施します。 銘柄選定の方法ですが、まず、TOPIXを構成する2,100を超える銘柄のうち、その時点での直近の3年間の売買代金の合計額が90位以上の銘柄の中から、さらに時価総額が大きい順に15銘柄を選定します。 このほかの15銘柄は、すでにCore30に入っている銘柄のうち、基準日までの直近3年間の売買代金合計額の順位が90位以上で、さらに時価総額が40位までに入っているものの中から、時価総額が大きい順に15銘柄まで選んでいきます。 しかし、すでに指数に組み入れられている銘柄だけでは、基準日時点の時価総額が40位までに入っている銘柄が15銘柄に達していない場合もあります。その場合は再び売買代金合計額90位以上の銘柄から、上位の銘柄を選定します。売買代金上位の銘柄に絞っているため、たんに時価総額が大きいというだけではなく、流動性も高いのが特徴です。 東証はCore30の公表を始めた1998年4月1日時点を1,000ポイントとして指数を算出しています。2000年代前半のITバブルの時には、当時組み入れられていた日本電気(NEC、6701)や富士通(6702)など、コンピューターなどの製造・販売を手掛けていた「IT企業」の株価が高騰、最高値の1644をつけました。当時の値動きはTOPIXや日経平均株価を相対的に大きくアウトパフォームしていました。 その後乱高下し、リーマンショックを契機とした世界金融危機や、東日本大震災などで日本経済が低迷していた2011年11月に357と底値を付けました。以降、TOPIXや日経平均株価に近い動きとなり、直近では2月22日に1,400台に乗せて以降、おおむね同水準で推移しています。 大型で流動性も高い銘柄群ですので、経営破たんするリスクも相対的に小さく、株式の需給悪化などにより売買しにくくなることもほぼありません。このため、個人投資家の長期投資に向いている、といえそうです。ただし、銘柄は毎年入れ替わっている点には注意が必要です。 (注1)各指数は月次、高値・安値は日次終値ベース。直近値は2024年5月26日。トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。出来事などはすべて網羅しているわけではありません。(注2)相対的なパフォーマンスの差を示すため、目盛りの上限値をTOPIX Core30(左軸)は1800、TOPIXは4000としました。(出所)JPX総研より野村證券投資情報部作成 26年間で過半の銘柄が入れ替わった ――銘柄が毎年入れ替わった結果、構成銘柄も大きく様変わりした印象です。これまでどのように変化してきたのでしょうか。 1998年時点と比較すると、過半の18銘柄が入れ替わっていますね。 とりわけ大きな変化としては、1998年の時点で日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ(8411))や住友銀行(現三井住友フィナンシャルグループ(8316))、東京三菱銀行(現三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306))など銀行が7行も入っていました。金融危機をきっかけに統廃合が進み、現在はメガバンク3行のみが残っています。 また、大手電機メーカーの多くも抜けてしまいました。1998年の時点では組み入れられていた松下電器産業(現パナソニック ホールディングス(6752))や東芝(上場廃止)のほか、先ほどお話ししたIT大手、NECや富士通も除外されてしまいました。現在残っている電機メーカーと言えば、日立製作所(6501)とソニーグループ(6758)ぐらいになってしまいました。 (注)黒色の太字は、1998年4月、2024年3月時点で共にTOPIX Core30に組み入れられている銘柄。赤字は1998年4月には組み入れられていなかった銘柄。セブン&アイ・ホールディングスはセブンイレブン、イトーヨーカ堂、デニーズが統合し誕生した。三菱UFJフィナンシャル・グループは東京三菱銀行、三菱信託銀行等による三菱東京フィナンシャル・グループと、三和銀行や東海銀行の合併によって誕生したUFJ銀行等を含むUFJホールディングスの経営統合により誕生。三井住友フィナンシャルグループはさくら銀行、住友銀行の合併によって誕生した三井住友銀行等を含む金融持ち株会社。みずほフィナンシャルグループは日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行等が経営統合し設立されたみずほホールディングスが、その後社名変更した。東京海上ホールディングスは東京海上火災保険と日動火災保険等の経営統合によりミレアホールディングスとなり、その後社名変更した。富士写真フイルムは現・富士フイルムホールディングス。松下電器産業は現・パナソニック ホールディングス。ソニーは現・ソニーグループ。野村證券は現・野村ホールディングス。(出所)JPX総研、各種データより野村證券投資情報部作成 今では日立の主軸はデジタル関連のサービスや再生可能エネルギー関連です。一方、ソニーの主軸はゲームや音楽、映画などのエンターテインメント、そして金融などのサービスです。スマホのカメラなどに使われるイメージセンサーでも世界シェアナンバー1です。 銀行や電機メーカーが抜けた分の枠には、三菱商事(8058)や三井物産(8031)などの大手商社や、東京エレクトロン(8035)や信越化学工業(4063)、HOYA(7741)など半導体の製造装置や材料を手掛ける企業、キーエンス(6861)やファナック(6954)、ニデック(6594)、村田製作所(6981)といった機械・電子部品メーカーなどが入っています。また、情報サービスを幅広く手掛けるリクルートホールディングス(6098)が入っているのも印象的です。 総じて、時代に合わせて柔軟に業態を転換することに成功した企業は残り、時代に合った新しい産業を展開する企業が入ってきました。 しかし、足元の生成AI関連に代表されるデジタル関連の需要増で、富士通やNECも業績を盛り返してきており、実際に富士通の時価総額は上場企業のうち40位前後に入っています。これらの企業がCore30に再び姿を現す日も来るかもしれませんし、あるいは、新たな成長企業が入ってくるのかもしれません。 ――米国の「ダウ平均株価」もいわゆる超大型株30銘柄で構成されています。銘柄数は同じですので「日本のダウ」と言ってもよいのでしょうか。 「それぞれの国を代表する30社」で構成されているという点では同じと言っていいかもしれません。ただ、共通するのはその点だけのような気がします。 まず、算出方法が異なります。ダウ平均株価は日経平均株価と同じく「株価平均型」です。これは構成銘柄の株価の合計を発行済み株式総数など特定の値で割って算出する方法です。一方、TOPIXやCore30は「時価総額加重平均型」で、構成銘柄の時価総額の合計を、ある時点の時価総額で割って算出する方法です。 また、銘柄選定の方法も異なります。ダウの構成銘柄は数値条件などが厳密に定められていません。成長性や投資家の関心度などから総合的に判断されています。ダウは基準が明確ではないのに対して、TOPIXは基準が明確です。ただ、結果的に国を代表する30銘柄が選ばれており、比べてもさほど違和感はありません。 そして、残念ながら米国のダウ平均株価の構成銘柄と、日本のCore30構成銘柄では世界的な知名度で格段の差があります。トヨタ自動車(7203)やソニーグループ、任天堂(7974)など現在でも世界的な知名度を持つ企業も含まれてはいますが、今後、Core30の中からさらに世界的な存在感を示す企業が現れることに期待したいですね。 ご投資にあたっての注意点