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09/29 12:00

【10月の投資戦略】日米主要企業の業績は過去最高益が続き、株価に反映するとみる

目次・ボラティリティーの高い状況は時間と共に和らぐ・米国の景気悪化リスクは限定的・米国企業は増益拡大へ・中国のデフレ輸出懸念・日本は物価安定への信頼感が増せば追加利上げ・日本の企業業績の拡大に対しバリュエーションは低下したまま ボラティリティーの高い状況は時間と共に和らぐ 日経平均株価は、米国景気敏感セクターと同じように、ボラティリティー(変動率)の高い状況が続きます。米国の景気減速懸念や、日米の金融政策の方針や金利の修正ペースに対する不透明さと円高リスクが理由とみられます。しかし、米国S&P500指数やNYダウは史上最高値を更新しており、米国経済は順調な拡大が続いています。我々は、時間の経過とともに高水準のボラティリティーは低下し、日本株市場も落ち着きを取り戻すとみており、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った株価動向に回帰するとみます。 米国の景気悪化リスクは限定的 主要国・地域の景況感は、製造業と比べて非製造業は比較的良好です。米国では、インフレ率が減速する中で、失業率が小幅に上昇しています。しかし、家計の債務や信用リスクの状況などから判断して、スパイラル的な景気悪化リスクは限定的です。利下げが進めば、住宅投資や消費が復調し、景気の下支えになることが期待されます。 米国企業は増益拡大へ 米国大統領選挙の行方が注目されますが、政府の政策推進力を見る上では議会選挙も重要です。他方、FRB高官の見通しによると、利下げは2026年にかけて続くと予想されていますが、金融市場はより早い時期に3%弱まで政策金利が引き下げられ、着地するとみているようです。逆イールド(長短金利の逆転)が解消し、景気軟着陸の可能性は高いとみられます。増益ペースは、大手テクノロジー企業で減速するものの、幅広い業種に増益拡大が広がり、S&P500指数にみるEPS(1株当たり利益)は、2024年終盤以降、二桁増益が続くでしょう。 中国のデフレ輸出懸念 ユーロ圏は中核国のドイツを中心に悪化懸念が強まっています。ECBは四半期に1度のペースでの利下げを続けるとみられます。中国は、不動産市況の低迷などを理由に内需を中心に景気が減速しており、供給能力の過剰を背景とする海外へのデフレの輸出が懸念されます。 日本は物価安定への信頼感が増せば追加利上げ 日本の輸出は自動車などを中心に弱含んでいますが、中国向けへは半導体の国産化などから半導体関連の輸出が増えています。製造業の在庫水準は十分抑制されており、在庫循環は好転入りに至ったとみられます。また、名目賃金は明確に上昇しています。消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は2%を上回って推移しており、賃金上昇を反映した物価の安定への信頼感が増せば、追加利上げが視野に入るとみられます。 日本の企業業績の拡大に対しバリュエーションは低下したまま 日本銀行は、市場のボラティリティーの低下を見極める一方、2025年度以降における、物価目標2%の見通し達成の実現確度の高まりを見て、追加利上げを行う方針にあるようです。金利は緩やかに上昇するとみられます。米ドル円相場は米日金利差縮小を背景に円高が進んできましたが、米国の利下げ期待はだいぶ織り込まれてきたとみられます。自民党総裁選挙後は、新政権の政策や解散総選挙の時期が注目されます。この様な中でも企業業績の拡大は続いており、バリュエーション(株価に基づく企業価値評価)は、大きく低下したままです。野村證券は、2024年末の日経平均株価の予想レンジ上限を40,500円と予想しています。 投資戦略については、日米の政治イベントや金融政策の見通しが見定められるまで、ボラティリティーの高い状況が続くでしょう。しかし、日米ともに主要企業の業績は過去最高益の更新が続くとの見方は不変で、株価は最終的に業績の趨勢に回帰するとみます。 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10月号」(発行日:2024年9月24日)「投資戦略の概要」より※掲載している画像はイメージです。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点

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09/28 09:00

【オピニオン】「ドル円は金利差で決まる」説、3つの注意点

※画像はイメージです。 ドル円相場は伝統的に日米金利差と連動性が高いことが知られています。特に日米金融政策の行方が市場の関心を集めているような状況下では、ドル円相場の先行きを予想する上で日米金利差が注目を集めやすくなります。ただし、日米金利差とドル円相場の関係から為替相場の行方を予測する上では、以下の諸点に注意する必要があります。 第1は、状況に応じてドル円相場と連動性の高い金利差の年限が変化する点です。通常、「金利のある世界」ではドル円相場は3ヶ月から2年程度までの短期金利差と高い連動性を有します。一方で短期金利がゼロ%に張り付くような「金利のない世界」では、10年金利のようなより長期の金利差と高い連動性を有します。下図は日米の5年国債金利差とドル円相場を並べて描いたものです。2000年代半ばから2013年にかけてドル円相場は、日米5年金利差と高い連動性をもって推移していた様子が確認できます。 (注)データは日次で、直近値は2024年9月20日。日米金利差は米国5年国債利回り―日本5年国債利回り。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 第2は、日米金利差(米国金利-日本金利)の拡大=ドル高円安、日米金利差の縮小=ドル安円高との関係が常に成り立つわけではないという点です。金利差と為替にどの程度の相関があるかは相関係数によって測定することができます。相関係数は+1から-1までの値をとり、+1に近ければ正の相関関係が強いこと、-1に近ければ負の相関関係が強いことを表します。下図の赤線で示したように、日米金利差とドル円相場の関係は、通常想定される相対的に米国の金利が高くなればドル高になるとの関係と、状況によっては真逆となることもあります。このような場合は、なぜ金利差が逆に作用しているのか、あるいは金利差とは全く関係のない要因が作用しているのではないか、といった点を見極める必要があります。 (注1)日米金利差は米国5年国債利回り―日本5年国債利回り。相関係数(期間は60ヶ月)は2種類のデータの関連の強さを示し、値は+1から-1の範囲となり、+1に近づくと正の相関が強くなり、ゼロは相関が見られない。回帰係数(単回帰分析における傾き)はY=aX+bの回帰式においてXが1単位増えた時のYの変化分を示す。右軸は見易さのため表示を制限している。(注2)データは月次で1985年12月末から2024年8月末。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 第3は、金利差の変化が為替に与える影響も状況によって変化する点です。下段右の図の回帰係数は日米金利差が1%ポイント(pt)変化した場合に、ドル円相場はいくら変化するかを推計したものです(直近60ヶ月間のローリング推計)。足元で見れば日米金利差が1%pt縮小すれば、ドル円相場は12円程度円高となるとの結果になります。ただし、過去の推移を見ると、大きく上下に振幅していることが分かります。 市場では推計式などを用いて「日米金利差が〇%になればドル円相場は▲円になる」といった試算を目にすることがありますが、これはあくまでも「日米金利差とドル円相場の関係がこれまでと変わらなければ」という注釈付きです。この点を踏まえた上で計算すると、足元の3.0%ptの日米5年国債金利差に対応するドル円レートは1ドル=136円29銭との結果になります。 ご投資にあたっての注意点

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09/19 09:00

【緊急】FRBは0.5%ポイントの利下げを実施 野村證券ストラテジストの見方

米国市場の反応は株、金利、為替とも一日を均してみれば穏当なものに留まる FRB(米連邦準備理事会)は9月17-18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、政策金利の誘導目標を0.5%ポイント引き下げ、4.75-5.00%とすることを決定しました。この決定に唯一反対したボウマン理事は0.25%ポイントの利下げを支持しました。声明文では「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」と、景気とインフレのバランスを重視する姿勢を改めて示しました。 FOMC参加者の政策金利見通し (注)図中の●はFOMC参加者が予想するその年の年末の政策金利(FF(フェデラル・ファンド)金利翌日物)のレンジの中央値。引き出し線で示されている数値は、参加者の予想中央値。政策金利のレンジ幅は0.25%であるため、例えば4.75%~5.00%のレンジを予想している参加者は中央値が4.875%となる。長期は長期先の着地点(Longer run)。見通しは3の倍数月のFOMCの開催後に発表される見通しで、それぞれのFOMCの日程は2024年6月は6月11-12日、2024年9月は9月17-18日。(出所)FRBより野村證券投資情報部作成 同時に公表した政策金利見通し(19名の参加者の中央値)を見ると、政策金利の誘導目標は24年末が4.25-4.50%、25年末が3.25-3.50%、26年末、27年末ともに2.75-3.00%となっています。このため、24年中に0.5%ポイント、25年中には1.0%ポイントの利下げがFRB内でのコンセンサスであると見られます。景気にとって中立的な金利の目安とされている長期見通し(Longer run)は2.875%と前回6月(2.75%)から小幅上方修正されており、現在のFRBの政策金利見通しはこの中立金利への着地をイメージしていることが示唆されました。一方で、25年末のFF(フェデラル・ファンド)金利先物は2.87%と、FRBの予想を上回る利下げを織り込んでいます。 パウエル議長は会見で今後の利下げペースに関して「FRBは必要に応じ、より急速にも、より緩やかにも、もしくは休止することもできる」と柔軟な姿勢を示した上で、「0.5%ポイントの利下げを新たなペースと見なすべきではない」と行き過ぎた市場の利下げ期待を牽制しました。 FOMCのコミュニケーションがバランスの取れたものであったことから、米国市場の反応は株、金利、為替とも一日を均してみれば穏当なものにとどまり、米国株は小幅安で引け、米ドル円も一時140円台まで円高が進行したものの、その後は142円台で推移しています。市場はFRBの利下げ局面への転換を穏当な形で消化したことから、再び経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)への注目度が高まることが予想されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点