-
昨日 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅠ:第3回 見逃すな、特徴的な1本足
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は、特徴的な1本足について説明します。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
-
09/07 19:00
【来週の米国株】アップル新製品発表会と大統領候補者討論会に注目(9/7)
※執筆時点 日本時間5日(金)12:00 今週:景気懸念が引き続き焦点に ※8月30日(金)-9月4日(木)4営業日の騰落 重要なマクロ指標が下振れ、株価は下落 軟調な経済指標の発表が相次ぎ、今週の米国株主要3指数は揃って下落しました。3日(火)に発表された8月ISM製造業景気指数は、総合指数が47.2と市場予想(47.5)を下回りました。また、5日(木)に発表された8月ADP雇用統計の民間部門雇用者数は前月比+9.9万人と市場予想(同+14.5万人)を下回りました。生産活動や雇用への懸念が広がり株価の下押し圧力となりました(執筆時点は6日(金)の8月雇用統計発表前)。 もっとも、5日(木)に発表されたISMサービス業景気指数は総合指数が51.5と市場予想(51.4)を上回り、米景気は全体で見れば依然として底堅いとの見方もできます。 市場の関心は「金利より景気」 米長期金利(10年国債利回り)が先週末の3.9%台から3.7%台に低下しましたが、金利低下は株価の追い風とはなりませんでした。米国株の主要3指数を比較しても、金利低下の恩恵を受けやすいとされるナスダック総合指数が他の2指標より大きな下落率となっています。引き続き、市場はインフレ鈍化(利下げ期待)より景気の方向感や企業業績を重視していると考えられます。 来週の注目イベントは3点です。 来週:アップル新製品発表会や大統領候補者討論会 ①9日(月)にアップル新製品発表会 FRB(米連邦準備理事会)は7日(土)よりブラックアウト期間(金融政策に関する発言の自粛期間)に入るため、今週はFRB高官の講演等は予定されていません。また、FOMC(米連邦公開市場委員会)1日目となる17日に発表される8月小売売上高まで雇用・消費関連の重要指標の公表もありません。こうした中、9日(月)のアップル(AAPL)による新製品発表会へ関心が集まる可能性は高く、スペックや販売見通しなどが注目されます。 オンデバイスAIの普及が次の視点に 今回の発表会は、単にアップルの業績や株価を動かすだけでなく、オンデバイスAIの未来を考える上で市場の関心を集めています。オンデバイスAIとは、大規模言語モデル(LLM)を簡易化した言語モデルであるSLM(Small Language Model)をOSに搭載し、スマホやタブレット、PCなどデバイス側でAI処理を実行する技術を指します。SLMは、AIエージェントとして音声アシスタントや画像・映像処理、会話・文章の要約、アプリの実行などを担います。Chat GPTのような第1世代のLLMは、質問に対する回答を文章を通じて得る仕組みでしたが、オンデバイスAIに用いられるエージェント型の言語モデルは、アプリやユーザーデータに対する知識・検索能力を有し、アプリを駆使して回答を実行する点が進化のポイントです。また、高度な演算はクラウド側のLLMに橋渡しもできるようになるとみられます。 AI市場の成長性に加え、5日(木)に決算を発表したブロードコム(AVGO、5日の時間外取引で終値比6.73%下落。5日20:00時点)など、アップルを顧客とする部品メーカーへの業績寄与への影響が大きいため、注目の機会となりそうです。 ②10日(火)に大統領候補者討論会 今週のもう一つの注目点は、10日(火)に予定されている大統領候補者討論会です。6月に開かれた討論会で精彩を欠いたことが、バイデン大統領が大統領選から撤退する契機となりました。民主党の大統領候補に指名されたハリス副大統領の支持率は、主要な激戦州でもトランプ前大統領を上回っている模様です。この討論会を経て、更に差を広げることができるのか、あるいはトランプ前大統領が巻き返すのか、注目されます。 ③6-8月期決算スタート その他、11日(水)には8月消費者物価指数と10年物国債入札も予定されています。前述の通り、景気に比べて物価指標の注目度は下がっていますが、沈黙期間中でもあり市場予想と大きく乖離する内容だった場合には、市場が動揺する可能性もあり目配りが必要です。また、9日(月)にオラクル(ORCL)、12日(木)にアドビ(ADBE)の2024年6-8月期決算発表が始まります。多くの主要企業が控える7-9月期決算の前哨戦として注目が集まります。 (編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
-
09/07 12:00
【特集】米国株式と米ドル建て債券 リスク・リターンの比較 野村證券投資情報部が解説
2024年8月初めには日経平均株価の歴史的な乱高下がありました。ダウ平均株価も大きく下げ、個別株に投資している方、米国株式の代表的指数であるS&P500や世界株式インデックスに連動する投資信託に投資している方などにとっては、資産の変動が激しかった期間となりました。 新しいNISAでそうしたアセットへの投資を始めたという人は、初めて大きな下落を経験したということで、不安を感じているかもしれません。株式市場が下落する局面で、資産が大きく減るのを避けるためには、どのような投資を心がけるといいでしょうか。 株式と併せて、値動きの異なる債券を持つことは資産運用のリスクを低減させる一つの方法だとされています。過去の米国株式と米ドル建て債券のリスクとリターンを比較しながら、資産ポートフォリオの考え方を野村證券投資情報部が解説します。 債券と株式は収益の源泉が異なる ――債券と株式の収益を比べたとき、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。 野村證券投資情報部・坪川一浩(以下同)まず、リターン(利益)の源泉の内訳が大きく異なります。債券では金利収入がリターンの多くを占めています。一方で、株式のリターンの源泉は配当収入によるものと、価格変動によるもの、つまり株価の値上がりによるものに分かれます。 (注)データは月次で、2000年1月~2024年7月。米国債券は投資適格の米ドル建て固定利付債券で、The Bloomberg US Aggregate Bond Index。米国株式はS&P500指数。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 この図は2000年1月~2024年7月、米国債券(国債、投資適格社債などの動きを表す指数)と米国株式(S&P500指数)のトータルリターンとその内訳を比較したものです。2000年1月を100としたときに、米国債券は2~3倍に、米国株式は6~7倍程度までトータルリターンが伸びていますが、そのうちインカムゲインと呼ばれる金利・配当の収益と、キャピタルゲインと呼ばれる売却差益で得られる利益の割合は大きく異なります。 この期間は米国株式が上昇したのでキャピタルゲインが膨らむ形になっているのに対し、債券市場はそれほど値動きがなく金利収入によるリターンが積み上がりました。 米国での社債と株式のリスクとリターンは ――そもそも、金融商品のリスクとリターンとは、何を意味するのでしょうか。 リターンとは資産運用で得られる収益を指します。年率のリターンとは、その金融商品で1年間運用した場合に期待できる投資利回りのことです。リスクとは直訳すれば「危険性」ですが、金融の用語では「リターンの変動(振れ幅)の大きさ」を意味します。言い換えれば、期待している収益に対するブレ、不確実性を指します。リスクが高いということは、期待リターンが得られない可能性がより高まるということです。 ――株式と債券、それぞれのリスクとリターンはどんな特徴がありますか。 下のグラフは、米国国債、米国社債(投資適格債)、米国株式を5年間継続保有した場合の年率のトータルリターンとリスクを示したものです。トータルリターンは米国債券が一番低く、4%でした。米国社債のうち、投資適格債と呼ばれる格付けの高いものを中心としたものは6%、米国株式は10%です。一方でリスクは米国国債、米国社債ともに3%、米国株式が9%でした。 比較すると、米国の株式の方が米国国債、米国社債に対してリスクが大きいことが分かります。株式は期待リターンが大きい反面、価格変動リスクが大きく、ハイリスク・ハイリターンの資産で、社債はミドルリスク・ミドルリターンの商品と言うことができます。 (注)データは月次で、1996年12月~2024年7月。米国国債はブルームバーグ米国債指数、米国社債はブルームバーグ社債指数(適格社債)、米国株式はS&P500指数。指数はいずれも米ドル建、トータルリターン指数。リスクはトータルリターン指数の標準偏差。上記は将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではない。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 米国国債と米国社債の違い ――株式は、特にS&P500指数などのような様々な企業に分散されていれば、リスクが分散されていると思いがちですが、ハイリスク・ハイリターンなのですね。債券、特に米国社債は、リスクは小さめでリターンもある程度確保できるということですね。 はい、そうです。たくさんの銘柄に分散して投資したとしても、株式は総じてマーケットの動きに大きく左右され、相対的にハイリスク・ハイリターンです。株式資産は大きく値上がりする時期もあれば、元本を下回る時期もあります。 一方で債券は、満期まで持つと元本が償還される、購入した時点で満期まで得られる利率が決まっているという性質から、ミドルリスク・ミドルリターンとされます。ただし、債券は債務不履行(デフォルト)リスクはあり、特に外国債券は為替リスクがあります。 また、債券と株式は異なる動きをする傾向があり、株価が下がると債券価格が上昇し、債券価格が下がると株価は上昇する、というように逆の値動きをする時期も少なくありません。 このような点を踏まえると、株式と債券の両方を持つことは、株式や株式指数に連動した投資信託のみを持つよりも、資産全体のリスク・リターンを安定させると言えるでしょう。 ――米国国債と米国社債を比べると、リターンは米国社債のほうが大きいのはわかりますが、リスクは同程度なのはなぜでしょうか。 比較している米国社債は、投資適格債と呼ばれるデフォルトリスクが相対的に小さい、格付けの高い社債です。米国が発行する債券である米国国債よりは、デフォルトリスクはあるため金利が高く設定されるのですが、実際に市場でデフォルトした経験が少ないことが一因です。また、相対的に高く安定した金利収入がクッションとなって債券単価の変動をカバーし、リターンを安定化させます。 米国では、投資家たちが好む伝統的なポートフォリオに「60・40ポートフォリオ」というものがあります。資産の60%を株式、40%を債券で持つという考え方で、上記のような理由から根強く支持されています。 実際の国際分散投資の例としては、日本の公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式にそれぞれ25%ずつ投資するのを基本としています。 参考:ノーベル賞の主催財団に学ぶ資産運用の考え方 野村證券投資情報部が解説 また、米国の景気減速に伴って利下げ局面が到来すると考えるのであれば、債券優位の展開になることが期待されます。実際、米国の企業年金は、利下げ局面の到来を見据えて、株式を減らして債券などへの配分を増やす動きもあるようです。 株式のリスクを低減しながら、一定の収益を得たいという方は、債券、特に米国社債を合わせて持つことを検討するのがよいでしょう。 ※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。 ご投資にあたっての注意点
-
昨日 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅠ:第3回 見逃すな、特徴的な1本足
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は、特徴的な1本足について説明します。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
-
09/07 19:00
【来週の米国株】アップル新製品発表会と大統領候補者討論会に注目(9/7)
※執筆時点 日本時間5日(金)12:00 今週:景気懸念が引き続き焦点に ※8月30日(金)-9月4日(木)4営業日の騰落 重要なマクロ指標が下振れ、株価は下落 軟調な経済指標の発表が相次ぎ、今週の米国株主要3指数は揃って下落しました。3日(火)に発表された8月ISM製造業景気指数は、総合指数が47.2と市場予想(47.5)を下回りました。また、5日(木)に発表された8月ADP雇用統計の民間部門雇用者数は前月比+9.9万人と市場予想(同+14.5万人)を下回りました。生産活動や雇用への懸念が広がり株価の下押し圧力となりました(執筆時点は6日(金)の8月雇用統計発表前)。 もっとも、5日(木)に発表されたISMサービス業景気指数は総合指数が51.5と市場予想(51.4)を上回り、米景気は全体で見れば依然として底堅いとの見方もできます。 市場の関心は「金利より景気」 米長期金利(10年国債利回り)が先週末の3.9%台から3.7%台に低下しましたが、金利低下は株価の追い風とはなりませんでした。米国株の主要3指数を比較しても、金利低下の恩恵を受けやすいとされるナスダック総合指数が他の2指標より大きな下落率となっています。引き続き、市場はインフレ鈍化(利下げ期待)より景気の方向感や企業業績を重視していると考えられます。 来週の注目イベントは3点です。 来週:アップル新製品発表会や大統領候補者討論会 ①9日(月)にアップル新製品発表会 FRB(米連邦準備理事会)は7日(土)よりブラックアウト期間(金融政策に関する発言の自粛期間)に入るため、今週はFRB高官の講演等は予定されていません。また、FOMC(米連邦公開市場委員会)1日目となる17日に発表される8月小売売上高まで雇用・消費関連の重要指標の公表もありません。こうした中、9日(月)のアップル(AAPL)による新製品発表会へ関心が集まる可能性は高く、スペックや販売見通しなどが注目されます。 オンデバイスAIの普及が次の視点に 今回の発表会は、単にアップルの業績や株価を動かすだけでなく、オンデバイスAIの未来を考える上で市場の関心を集めています。オンデバイスAIとは、大規模言語モデル(LLM)を簡易化した言語モデルであるSLM(Small Language Model)をOSに搭載し、スマホやタブレット、PCなどデバイス側でAI処理を実行する技術を指します。SLMは、AIエージェントとして音声アシスタントや画像・映像処理、会話・文章の要約、アプリの実行などを担います。Chat GPTのような第1世代のLLMは、質問に対する回答を文章を通じて得る仕組みでしたが、オンデバイスAIに用いられるエージェント型の言語モデルは、アプリやユーザーデータに対する知識・検索能力を有し、アプリを駆使して回答を実行する点が進化のポイントです。また、高度な演算はクラウド側のLLMに橋渡しもできるようになるとみられます。 AI市場の成長性に加え、5日(木)に決算を発表したブロードコム(AVGO、5日の時間外取引で終値比6.73%下落。5日20:00時点)など、アップルを顧客とする部品メーカーへの業績寄与への影響が大きいため、注目の機会となりそうです。 ②10日(火)に大統領候補者討論会 今週のもう一つの注目点は、10日(火)に予定されている大統領候補者討論会です。6月に開かれた討論会で精彩を欠いたことが、バイデン大統領が大統領選から撤退する契機となりました。民主党の大統領候補に指名されたハリス副大統領の支持率は、主要な激戦州でもトランプ前大統領を上回っている模様です。この討論会を経て、更に差を広げることができるのか、あるいはトランプ前大統領が巻き返すのか、注目されます。 ③6-8月期決算スタート その他、11日(水)には8月消費者物価指数と10年物国債入札も予定されています。前述の通り、景気に比べて物価指標の注目度は下がっていますが、沈黙期間中でもあり市場予想と大きく乖離する内容だった場合には、市場が動揺する可能性もあり目配りが必要です。また、9日(月)にオラクル(ORCL)、12日(木)にアドビ(ADBE)の2024年6-8月期決算発表が始まります。多くの主要企業が控える7-9月期決算の前哨戦として注目が集まります。 (編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
-
09/07 12:00
【特集】米国株式と米ドル建て債券 リスク・リターンの比較 野村證券投資情報部が解説
2024年8月初めには日経平均株価の歴史的な乱高下がありました。ダウ平均株価も大きく下げ、個別株に投資している方、米国株式の代表的指数であるS&P500や世界株式インデックスに連動する投資信託に投資している方などにとっては、資産の変動が激しかった期間となりました。 新しいNISAでそうしたアセットへの投資を始めたという人は、初めて大きな下落を経験したということで、不安を感じているかもしれません。株式市場が下落する局面で、資産が大きく減るのを避けるためには、どのような投資を心がけるといいでしょうか。 株式と併せて、値動きの異なる債券を持つことは資産運用のリスクを低減させる一つの方法だとされています。過去の米国株式と米ドル建て債券のリスクとリターンを比較しながら、資産ポートフォリオの考え方を野村證券投資情報部が解説します。 債券と株式は収益の源泉が異なる ――債券と株式の収益を比べたとき、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。 野村證券投資情報部・坪川一浩(以下同)まず、リターン(利益)の源泉の内訳が大きく異なります。債券では金利収入がリターンの多くを占めています。一方で、株式のリターンの源泉は配当収入によるものと、価格変動によるもの、つまり株価の値上がりによるものに分かれます。 (注)データは月次で、2000年1月~2024年7月。米国債券は投資適格の米ドル建て固定利付債券で、The Bloomberg US Aggregate Bond Index。米国株式はS&P500指数。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 この図は2000年1月~2024年7月、米国債券(国債、投資適格社債などの動きを表す指数)と米国株式(S&P500指数)のトータルリターンとその内訳を比較したものです。2000年1月を100としたときに、米国債券は2~3倍に、米国株式は6~7倍程度までトータルリターンが伸びていますが、そのうちインカムゲインと呼ばれる金利・配当の収益と、キャピタルゲインと呼ばれる売却差益で得られる利益の割合は大きく異なります。 この期間は米国株式が上昇したのでキャピタルゲインが膨らむ形になっているのに対し、債券市場はそれほど値動きがなく金利収入によるリターンが積み上がりました。 米国での社債と株式のリスクとリターンは ――そもそも、金融商品のリスクとリターンとは、何を意味するのでしょうか。 リターンとは資産運用で得られる収益を指します。年率のリターンとは、その金融商品で1年間運用した場合に期待できる投資利回りのことです。リスクとは直訳すれば「危険性」ですが、金融の用語では「リターンの変動(振れ幅)の大きさ」を意味します。言い換えれば、期待している収益に対するブレ、不確実性を指します。リスクが高いということは、期待リターンが得られない可能性がより高まるということです。 ――株式と債券、それぞれのリスクとリターンはどんな特徴がありますか。 下のグラフは、米国国債、米国社債(投資適格債)、米国株式を5年間継続保有した場合の年率のトータルリターンとリスクを示したものです。トータルリターンは米国債券が一番低く、4%でした。米国社債のうち、投資適格債と呼ばれる格付けの高いものを中心としたものは6%、米国株式は10%です。一方でリスクは米国国債、米国社債ともに3%、米国株式が9%でした。 比較すると、米国の株式の方が米国国債、米国社債に対してリスクが大きいことが分かります。株式は期待リターンが大きい反面、価格変動リスクが大きく、ハイリスク・ハイリターンの資産で、社債はミドルリスク・ミドルリターンの商品と言うことができます。 (注)データは月次で、1996年12月~2024年7月。米国国債はブルームバーグ米国債指数、米国社債はブルームバーグ社債指数(適格社債)、米国株式はS&P500指数。指数はいずれも米ドル建、トータルリターン指数。リスクはトータルリターン指数の標準偏差。上記は将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではない。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 米国国債と米国社債の違い ――株式は、特にS&P500指数などのような様々な企業に分散されていれば、リスクが分散されていると思いがちですが、ハイリスク・ハイリターンなのですね。債券、特に米国社債は、リスクは小さめでリターンもある程度確保できるということですね。 はい、そうです。たくさんの銘柄に分散して投資したとしても、株式は総じてマーケットの動きに大きく左右され、相対的にハイリスク・ハイリターンです。株式資産は大きく値上がりする時期もあれば、元本を下回る時期もあります。 一方で債券は、満期まで持つと元本が償還される、購入した時点で満期まで得られる利率が決まっているという性質から、ミドルリスク・ミドルリターンとされます。ただし、債券は債務不履行(デフォルト)リスクはあり、特に外国債券は為替リスクがあります。 また、債券と株式は異なる動きをする傾向があり、株価が下がると債券価格が上昇し、債券価格が下がると株価は上昇する、というように逆の値動きをする時期も少なくありません。 このような点を踏まえると、株式と債券の両方を持つことは、株式や株式指数に連動した投資信託のみを持つよりも、資産全体のリスク・リターンを安定させると言えるでしょう。 ――米国国債と米国社債を比べると、リターンは米国社債のほうが大きいのはわかりますが、リスクは同程度なのはなぜでしょうか。 比較している米国社債は、投資適格債と呼ばれるデフォルトリスクが相対的に小さい、格付けの高い社債です。米国が発行する債券である米国国債よりは、デフォルトリスクはあるため金利が高く設定されるのですが、実際に市場でデフォルトした経験が少ないことが一因です。また、相対的に高く安定した金利収入がクッションとなって債券単価の変動をカバーし、リターンを安定化させます。 米国では、投資家たちが好む伝統的なポートフォリオに「60・40ポートフォリオ」というものがあります。資産の60%を株式、40%を債券で持つという考え方で、上記のような理由から根強く支持されています。 実際の国際分散投資の例としては、日本の公的年金資産を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式にそれぞれ25%ずつ投資するのを基本としています。 参考:ノーベル賞の主催財団に学ぶ資産運用の考え方 野村證券投資情報部が解説 また、米国の景気減速に伴って利下げ局面が到来すると考えるのであれば、債券優位の展開になることが期待されます。実際、米国の企業年金は、利下げ局面の到来を見据えて、株式を減らして債券などへの配分を増やす動きもあるようです。 株式のリスクを低減しながら、一定の収益を得たいという方は、債券、特に米国社債を合わせて持つことを検討するのがよいでしょう。 ※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。 ご投資にあたっての注意点