チャットGPTで注目を集める生成系AI

生成系AI(Generative AI)は、画像、動画、音声、自然言語(人間が話す言語)などを学習し、新しい独自のコンテンツを生成することのできるAIを指します。生成系AIが注目を集めるきっかけとなったのが、2022年11月に米新興企業オープンAIが発表したテキスト生成AI「Chat GPT(チャットGPT)」です。登場からわずか2ヶ月でユーザー数が1億人を突破するなど、注目を集めています。

生成系AIは、様々な領域におけるビジネス環境を変えるとみられています。特にテキスト生成AIは、ホワイトカラーの書類作成や事務作業の効率化への大きな貢献が期待されています。

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)野村證券フロンティア・リサーチ部、各種資料より野村證券投資情報部作成

生成系AIのモデル開発はテクノロジー大手が主導

生成系AIに関連する企業を大きく分けると、汎用的なAIモデル※の開発を行う企業と、開発されたAIモデルを活用してアプリケーションを提供する企業に分かれます。

AIモデルの開発には、膨大なテキストや画像のデータを集め、それを処理する必要があります。多額の投資が必要であることから、米国の大手テクノロジー企業が中心となり開発が進んでいます。

開発されたAIモデルの中には、オープンソース(無償公開)のツールもあり、AIアプリケーションの市場に参入するスタートアップ企業も増加しています。

※ テキスト生成AIではLLM(大規模言語モデル)を指す。

AI技術の進展は半導体市場を押し上げる

(注)AI及びML(機械学習)関連半導体市場。2023年3月31日時点のモーニングスター社による推定・予想。
(出所)ピッチブック社より野村證券投資情報部作成

生成系AIの開発には、高性能なロジック半導体が必要不可欠です。ディープラーニング(深層学習)など、AIモデルを開発する過程では、アクセラレーター※としてGPUを使用し処理速度を高めるといった手法が一般化しています。AIに関連する半導体市場の拡大が見込まれることから、ロジック各社はAIの開発、実装に特化した半導体の開発を積極化させています。

※ コンピューターの処理能力を高めるために、追加して利用するハードウエアやソフトウエアの総称。

ご参考:生成系AI関連銘柄の一例

生成系AIモデルアプリケーション

・アドビ(A1066/ADBE US)

2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI「Adobe Firefly(アドビ・ファイアフライ)」を発表した。

・マイクロソフト(A2218/MSFT US)

クラウドサービス「Azure(アジュール)」や検索エンジン「Bing/Edge」、ソフトウエア「Microsoft 365 Copilot」などに「Chat GPT」をはじめとする生成系AIを組込み強化している。Chat GPTを開発したオープンAIに多額の資金を出資している。

アマゾン・ドットコム(A3311/AMZN US)

2023年4月、当社が手掛けるクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」を通じて、自社でつくった生成AIや新興企業が開発した技術基盤を提供すると発表した。

・セールスフォース(A4967/CRM US)

2023年3月、世界初のCRM(顧客管理システム)のための生成AIテクノロジー「Einstein GPT(アインシュタインGPT)」を発表した。この生成AIには、オープンAIの「Chat GPT」の技術が組み込まれている。

・アルファベット(A株)(A4987/GOOGL US)

傘下のグーグルで、AIチャットボット「Bard(バード)」を発表し、検索エンジン機能を強化している。また、自社のクラウドサービスにも生成系AIの導入を進めている。

・メタ・プラットフォームズ(A6161/META US)

2023年2月、傘下のAI研究所が大規模言語モデル「LLaMA(Large Language Model Meta AI)」を研究者向けに発表した。

AI半導体

・アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(A0055/AMD US)

CPU、GPUなどを手掛ける大手ロジック半導体メーカー。2022年に買収したザイリンクスの技術などを応用し、AIに特化した半導体の開発を積極化させている。

・インテル(A0346/INTC US)
売上規模で世界最大の半導体メーカー。CPUで世界トップシェア。GPUやAIアクセラレーターにも近年注力している。

・エヌビディア(A2369/NVDA US)

GPUで世界トップシェアを誇る大手半導体メーカー。生成系AIの開発が活発化する中、AI開発におけるデータ処理に適した新型GPU「H100」の需要が拡大している。

(注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

ご投資にあたっての注意点