Q:「タワマン節税」防止による取引価格の下落はあるか?

一部の報道によれば、国税庁は「マンション節税」や「タワマン節税」を防ぐため、相続税の算定ルールの見直しを検討しているようです。現状、都心のタワマンがどれほど相続税対策として購入されているのでしょうか。さらに、税制の変更に伴う物件の取引価格の下落はどれくらい心配すべきなのでしょうか?

A:タワマンの需給バランスが大きく崩れる可能性は低い

もし報道が正確であれば、相続税の算定ルールの見直しは、都心のタワーマンションを供給する大手デベロッパーにはマイナスの影響を及ぼす可能性があります。しかし、その影響は一部に限られると野村證券では考えます。なぜなら、タワーマンションは、地価が高く、駅前などの利便性が高い場所に建てられていることが多いからです。節税を主目的としてタワーマンションを購入する人々には確かにマイナスの影響がありますが、多くの人々はその立地や便利さに惹かれて購入するため、実需層には大きな影響はないと考えられます。

日本経済新聞の6月26日の記事によれば、マンションの評価額が実勢価格の3.2倍である1億1,900万円のマンションを1人の子供に相続する際の増税額は、今回のルール変更により約500万円になるとのことです。これを受けて、デベロッパーは高層階と低層階の価格設定を見直す可能性があります。価格差を縮小することで、高層階の相続税負担を軽減し、需要を刺激することができます。簡単な計算で言うと、500÷11,900=4%となり、この分だけ購入価格が下がれば、購入者の増税負担は理論的にはゼロになります。その分、低層階の販売価格を引き上げ、プロジェクト全体の収益性を保つことが考えられます。

現在、マンションの供給は人気のある都心のタワーマンションに集中しており、全体的に供給量は少ない状態が続いています。このため、駅前の高価なタワーマンションの需給バランスが大きく崩れる可能性は低いと野村證券は予想しています。

(FINTOS!編集部)

(出所)野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成

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