1月30-31日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は事前の市場予想通り、4会合連続で政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25-5.50%で据え置くことを決定しました。声明文では、従来の「追加で引き締めの場合には」の文言が、「政策調整の場合には」へと変更され、金融引き締めバイアスが大幅に後退しました。一方で、「インフレが2%へ持続的に向かっていることに確信を持てない限り、政策金利の引き下げは適切ではない」として、当面は政策金利を維持する方針が示されました。FOMC後の記者会見でパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は、「(利下げについて)3月までに確信を持つ可能性が高いとは思わない」と述べ、2024年3月からの利下げ開始に否定的な見解を示した一方、QT(バランスシート縮小)について、「3月により深い議論を開始する」と述べました。総じて市場の想定範囲内のFOMCであったと総括できます。
次回のFOMCは3月19-20日に開催されます。FOMC参加メンバーの経済見通し、政策金利見通し(いわゆるドッツ)がアップデートされます。その中で注目したいのが「中立金利」です。最近では、2024年2月5日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「中立金利が上昇している可能性がある」と述べています。中立金利=自然利子率+趨勢インフレ率、と定義されます。自然利子率は実質ベースであり、貯蓄と投資がバランスする金利水準を指します。労働力や生産性など潜在成長力を決定する要因が影響を及ぼします。趨勢インフレ率は、FRBの場合、2%のインフレターゲット、と言い換えることもできます。FOMCでは2012年から長期のFF金利予想を公表していますが、これは長期の中立金利に該当し、2019年6月以降、ほぼ2.5%で据え置かれています(下図)。中立金利は短期と長期で区別するべきであり、短期的には現在のマクロ経済環境を反映していますので、実際の政策金利との乖離を見て、引き締め的か緩和的かを判断する材料となります。
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今回の利上げ局面において、FRBは急ピッチで政策金利を引き上げ、インフレはピークアウトしてきました。しかし、実質GDP成長率は(今後利上げの影響が顕在化する可能性はあるものの)総じて堅調に推移してきました。従って、実際の中立金利はもっと高いのではないか、との議論が学界も含めて活発化しています。
仮に、次回3月のFOMCでFRBの想定する長期的中立金利が上方修正された場合、相当程度の金利上昇圧力になる可能性があります。
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