※画像はイメージです。

2024年7月11日に42,224円(終値)の最高値を更新した日経平均株価は、その後円高進行を嫌気して下落基調をたどり、8月5日には前日比4,451円と史上最大の下げ幅を記録、最高値からの下落率は25.5%に達しました。その後、市場は落ち着きを取り戻し、8月23日時点の日経平均株価は最高値まであと10%、値幅にして3,860円まで回復しています。ただ、最高値まではそれなりの距離感があるのも事実です。今回は日経平均株価が、『近い将来』最高値を奪還できる可能性について考えてみましょう。

まず、下落過程において報道等で盛んに取り上げられたフレーズ、「円高の進展による、企業業績への悪影響を懸念し、株価は大きく下落した」について確認しましょう。この時期は決算発表シーズンだったということもあり、アナリストによる業績予想修正が活発な時期でしたが、2024年度予想を中心に上方修正が優勢でした。

(注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の経常利益予想実額の推移。直近は2024年8月23日時点。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

蛇足ながら、アナリスト予想の上方修正と下方修正の比率から計算されるリビジョン・インデックス(RI)は歴史的に見ても高水準ですし、海外との比較でも日本企業のRIは世界で最も強い状況です。今回の株価調整では、先進国・地域のうち日本市場の下落率がとびぬけて大きくなりましたが、その原因を業績に求めるのは無理がありそうです。

次に、バリュエーション(PER:株価収益率)について確認してみましょう。まず、最高値時(7/11)の2024年度予想EPS(1株当たり利益)は前年度比+7.7%、PERは17.5倍程度という組み合わせでした。その後8月5日には円高による業績懸念にもかかわらず、予想EPSは同+8.7%に上方修正され、PERは過去10年強の平均的レンジ内に収まる13倍前後まで低下しました。現在では、予想EPSは同+9.3%、PERは15倍台半ばとなっています。

(注)2024年度の予想EPS伸び率(前年度比)別、およびPER別の日経平均株価試算値。予想EPS伸び率の下のカッコ付きの数字は日付。2024年7月11日時点の予想EPS伸び率は前年度比+7.7%、PER17.5倍前後。2024年8月5日時点の予想EPS伸び率は同+8.7%、PER13倍前後。2024年8月23日時点の予想EPS伸び率は同+9.3%、PER15.5倍前後。日経平均株価の試算値は、250円刻み。
(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成

1989年末と異なり今局面では、最高値時(7/11)にせよ、その後のボトム時(8/5)にせよ、現時点(8/23)にせよ、常識的なEPSの伸び率と、PERの組み合わせで説明が可能なことは重要なポイントでしょう。この組み合わせが成り立たない世界では、高値奪還の可能性は神頼みになりがちですが、今回はそう言った難易度の高いロジックを持ち出す必要はなさそうです。

最後に、今回の株価下落のメカニズムは、円高⇒業績懸念⇒株安、とされていますが、円高が(業績によらない別のメカニズムにより)株安につながった可能性が高いと思われます。

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