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米国では10月中旬以降、2024年7-9月期の企業決算が本格化しています。米金融機関は、早めの日程で決算発表を行うため、その期の決算の方向性を確認する上で注目されます。金融機関の決算内容については、下記の2点が注目されていました。
①クレジットカードローンの貸倒率
②純金利収益の見通し

下図の赤色の線は、JPモルガン・チェースのクレジットカードローン等のカードサービスの貸倒率です。2021年から2022年にかけては、コロナ禍支援の財政政策による給付金やローン返済の猶予、また、緩和的な金融政策などにより急低下しました。その後、政策の正常化などにより急上昇し、2024年4-6月期には3.50%と、コロナ禍前の水準や2024年12月期通期見通しの3.40%を超えて上昇し、信用悪化が懸念されました。2024年7-9月期は3.24%に低下し、会社は通期見通しを3.40%に据え置きました。

FRBが発表する、米国の全金融機関のクレジットカードローンなどのリボルビングローン残高(灰色の線)は、物価の上昇などを背景にコロナ禍前の水準を大きく超えて増加しました。このため、「借りて使う」消費がいつまで継続するかが注目されます。また、積み上がったローンの貸倒率の上昇は、いわゆる「バブルの崩壊」を意味するため懸念されます。ローンの返済能力に直結する雇用について、米国の失業率が上昇傾向にあることから、貸倒率の上昇が「正常化」なのか悪化が継続するのかが注目されていました。決算内容から、ひとまず懸念は後退したと考えられます。

(注)米リボルビングローン残高は、データは月次で直近値は2024年8月時点。JPモルガン・チェースのカードサービス純貸倒率は、データは四半期毎で直近値は2024年7-9月期時点。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

2点目の純金利収益は、銀行の収益の柱で、銀行の財務、ひいては金融システムの健全性にとって重要な項目です。下図の、米大手3行(JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ)の純金利収益は、過去においては金利水準との相関が高いといえそうです。JPモルガン・チェースは2024年9月に、FRBによる利下げや長期金利の低下を背景に、2025年12月期通期の同社に対する市場の純金利収益の見通しは楽観的過ぎる、とコメントし、同社の株価は下落しました。しかし、その後の2024年7-9月期の決算時には、純金利収益について、2024年12月期通期の見通しを引き上げ、2025年についても年央までは減少するものの、その後成長基調に戻る可能性があるとコメントしました。

金融機関の貸倒率や収益性からは、状況の悪化がさらに悪化を招くような負のスパイラルに陥る可能性が低下し、景気のソフトランディング(軟着陸)の可能性が高まったといえそうです。

(注)米大手3行は、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ。国債利回りは、データは日次で直近値は2024年10月18日時点。米大手3行の純金利収益は、データは四半期毎で直近値は2024年7-9月期時点、2024年10-12月期以降はLSEG集計による市場予想平均。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

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