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06/07 09:00【オピニオン】トランプ関税の影響は?韓国の貿易統計から紐解く
※画像はイメージです。 トランプ政権が発動した関税策は①2025年4月9日より一律10%の相互関税(上乗せ分は90日間停止。中国は除く)、②25年5月14日より中国に対しては30%の関税(24%の上乗せ分は90日間停止)、➂25年3月4日よりカナダ・メキシコに対しては25%の関税を賦課(USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に関わる特例措置は除く・25年4月2日より相互関税を不適用)、となっています。品目別では、Ⓐ25年3月12日に鉄鋼・アルミニウム製品、4月2日に自動車にそれぞれ25%の追加関税を賦課(6月4日から鉄鋼・アルミニウム製品に対して50%を適用)、Ⓑ自動車部品に関しては二重関税を回避するため軽減措置を導入、となっています。一方、銅製品、木材、医薬品と半導体については米商務省が国家安全保障への影響に関して調査中です。 米国の主要貿易パートナーの25年3-4月の輸出動向を見ると、3月は駆け込み需要で増加し、4月はその反動減の影響が出ている模様です。中国の対米輸出は25年3月に前年比+9.1%、4月は同-21.0%、日本の対米輸出はそれぞれ同+3.1%、同-1.8%となっています。このように、駆け込み需要のかく乱要因により25年3-4月の貿易統計から関税引き上げの影響を抽出することは難しいため、5月以降の統計が参考になるでしょう。主要国の中では韓国の統計発表のタイミングが早く、既に25年5月分の貿易統計が6月1日に発表されました。米国の対韓国の関税率は基本税率の10%が賦課されていますが、上乗せ分を含めた相互関税率は25%です。輸出総額は前年比-1.3%となり、25年1月以来4ヶ月ぶりのマイナスとなりました。対米輸出は同-8.1%、対中輸出は同-8.4%と大幅に落ち込んでいます。 足元の韓国の貿易統計 (注)MCPはMulti Chip Packageの略で2つ以上の半導体チップを積層して一つにパッケージしたもの。SSDはSolid State Driveの略で、集積回路を用いた補助記憶装置の一種。OLEDはOrganic Light Emitting Diodeの略で有機ELディスプレイ。ASEANはAssociation of South-East Asian Nationsの略で、東南アジア諸国連合。(出所)ノムラ・シンガポール・リミテッド (NSL)、LSEGより野村證券投資情報部作成 一方、台湾向けは25年4月の同+58.2%に続き、5月も同+49.6%と高い伸びが続いています。AIサーバー向けのHBM(High Bandwidth Memory)などの半導体需要が引き続き旺盛であることが、うかがわれます。前述の通り、米商務省は半導体、半導体製造装置、スマホに関して1962年通商拡大法232条に基づき調査中ですが、その結果が出る前の駆け込み需要の側面もあると考えられます。 米国に輸出している半導体関連企業は米商務省による調査に回答する形で、「半導体製造装置や半導体材料の多くは、品質面でも数量面でも米国内では現在入手不可能なものである。米国内での生産コストが大幅に上昇することになるだろう」と懸念を表明しています。AI、半導体関連産業は米国の屋台骨であるだけに、現実的な着地点を探る可能性も否定できないでしょう。 ご投資にあたっての注意点
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06/07 07:00【来週の予定】米CPI発表、トランプ関税の影響に市場の関心集まる
来週の注目点:トランプ関税の帰趨と米CPI、米中貿易などへの影響 4月下旬以降、トランプ関税への懸念の一服、減税期待の高まりを背景とした過度な米景気後退懸念の緩和、米主要企業の概ね市場予想を上回る2025年1-3月期決算などが日米の株価を下支えしています。トランプ政権の支持率が低下する中、トランプ政権の対外政策は軟化したと見られていましたが、足元では強硬な姿勢に戻りつつあります。6月4日に鉄鋼・アルミニウム製品の追加関税を2倍の50%に引き上げる措置を発動しました。対中国ではハイテク製品の輸出規制を一段と強めるなど非関税障壁を強化しています。今後は、相互関税の上乗せ部分の発動延期の期限(7月9日)が近付くにつれ、米国と一部の国・地域では協議が大詰めを迎えると見られるため、要注目です。 景気に減速感が見えつつある米国では、6月17日(火)-18日(水)にFOMCが開催されます。FRBは7日(土)から金融政策に関する公式発言を自粛するブラックアウト期間入りするため、足元の米国景気や金融政策の方向性に関するヒントを得ようと経済指標に注目が集まります。11日(水)に5月消費者物価指数(CPI)、12日(木)に5月生産者物価指数、13日(金)に6月ミシガン大学消費者マインド(速報値)が発表されます。最大の注目点はCPIです。関税引き上げによるコスト転嫁が次第に進み、向こう数ヶ月でインフレ率を押し上げると野村では見ています。 中国では、9日(月)に5月貿易統計が発表されます。5月12日に米中が合意した90日間の暫定的な関税引き下げが輸出の前倒しを促した可能性があります。 日本では、9日(月)に2025年1-3月期実質GDP(2次速報値)、5月景気ウォッチャー調査が発表されます。実質GDPについて野村では、前期比年率-1.1%と、1次速報の同-0.7%から下方修正されると予測します。主因は輸入の増加であり、民間内需は力強さを欠くものの、底堅い推移となる見通しです。他方、景気ウォッチャー調査では、2~3ヶ月先の見通しを示す先行き判断DIが、トランプ関税を受けてどのように変化するか確認したいと思います。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年6月6日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点