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2024/12/18 08:34
【野村の朝解説】FOMCを控え、警戒感から米国株は下落(12/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米国株式市場では、NY主要3指数が揃って下落しました。NYダウは1978年2月以来の9営業日の続落となりました。FOMCの結果発表を翌日に控えて警戒感が広がり、株価の重石となりました。FRBが12月会合での0.25%ポイントの利下げをするとの見方が依然優勢ですが、朝方発表された11月米小売売上高が消費の堅調さを示唆する内容だったことから、2025年の利下げ回数が少なくなるとの見方が相場を下押ししました。個別では、米医療保険大手ユナイテッド・ヘルス・グループ(UNH)が続落し、連日で上場来高値を更新していた米半導体のブロードコム(AVGO)も反落しました。為替市場では、米国債利回りの上昇が一服する中、1ドル=153円台半ばまで円高方向に値を戻しました。 相場の注目点 日米の金融政策に引き続き注目です。市場では12月FOMCでの0.25%ポイントの利下げを概ね織り込んだ状況にあるため、焦点はパウエルFRB議長の記者会見や、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)です。仮に、今会合で政策金利見通しが引き上げられ、25年中の利下げ回数の減少が示された場合には、米金利の上昇とドル高要因となります。ただし、来年以降の市場の利下げ観測は後退しつつあり、25年中の利下げ幅が0.5%ポイントを下回る可能性を織り込みつつあります。また、トランプ次期政権の政策を踏まえて、パウエル議長は今後の金融政策について柔軟な姿勢を示さざるを得ないと考えられます。そのため、市場の反応は限定的になると野村ではみています。他方、本日から明日19日まで開催される日銀の12月会合では、利上げ見送りがコンセンサスです。FOMC後の円安ドル高の勢いが限定された場合には、日銀は利上げを見送りするとの見方が一段と強まり、足元のドル円はレンジ内での動きになりやすいとみています。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2024年12月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/17 16:52
【野村の夕解説】日米中銀の会合を前に 引き続き小動き (12/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 日本時間16日(月)夜、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がトランプ次期米大統領と会談し、今後4年間で米国で1,000億米ドルの投資を行う旨を発表しました。また、昨日ナスダック総合指数は史上最高値を更新しました。 本日の日経平均株価は前日比132円高の39,589円と反発し始まり、ソフトバンクグループの大幅な上昇が日経平均を押し上げました。米国金利の上昇(価格は下落)による円安米ドル高も追い風となり、一時前日比338円高となりました。上昇一服後は、値がさの半導体株であるアドバンテストの大幅安が重石となり、後場に入ってからは下げに転じました。今後の注目イベントを控えて値動きは限定的となり、終値は前日比92円安と、3営業日続落となりました。ソフトバンクグループは前日比4.41%高となり、1銘柄で日経平均株価を82円押し上げた一方、アドバンテストは同9.35%安となり、 1銘柄で日経平均株価を235円押し下げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では本日から18日(水)までFOMCが、日本では18日(水)~19日(木)にかけて日銀金融政策決定会合が開催されます。また、18日(水)はキオクシアホールディングスが東証プライム市場に上場予定です。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/17 08:27
【野村の朝解説】ナスダックは最高値を更新、ダウは続落(12/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場は高安まちまちとなりました。NYダウは朝方に上昇する場面もみられましたが、週内にFOMCを控えるなかで方向感は乏しく、前週末の終値近辺でのもみ合い推移となりました。一方、S&P500は3営業日ぶりに反発し、ナスダック総合指数は11日に付けた史上最高値を更新しました。 この日発表された12月のNY連銀製造業景気指数や同月の製造業PMI速報値は、トランプ次期政権の関税政策への警戒感などもありいずれも悪化しました。もっとも、米国ではサービス業を中心に景況感が堅調であり、同月のサービス業PMI速報値は2021年10月以来の高水準を記録しました。25年以降の利下げペース減速が意識される中、米10年国債利回りは4.4%台に上昇し、ドル円は154円台を回復しました。 相場の注目点 米国では今晩からFOMCが開催されますが(17-18日)、市場はすでに0.25%ポイントの利下げをほぼ織り込んだ状況です。トランプ次期政権の政策を巡り不透明感が高まるなか、足元では25年以降にいったん利下げを打ち止めとの見方も浮上しており、今回の焦点はパウエルFRB議長の記者会見に加えて、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)です。25年の利下げ幅については、9月FOMC時点で1.0%ポイントと想定されていましたが、今回のFOMCで見通しは上方修正される公算が大きいとみられます。米国株式市場では、米長期金利の上昇が株価の重石となる一方で、米経済の軟着陸期待が支えとなってきましたが、長期金利の上昇が続くとこれまでの上昇にブレーキがかかる可能性もあり、先行きの利下げペースについて、どのような見解が示されるのか注目されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年12月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/16 18:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(12月第2週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年12月第2週(2024年12月6日~12月13日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月13日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年12月第2週(2024年12月6日~12月13日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月13日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年12月13日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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2024/12/16 16:23
【野村の夕解説】日米中銀の会合を前に上値は重く、日経平均は12円安(12/16)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前週末比80円高の39,551円で取引を開始しました。米国で12日(木)引け後に好決算を発表したブロードコムを含む、主要半導体企業で構成されるフィラデルフィア半導体株指数が13日(金)に大幅上昇しました。これを受けて、国内半導体関連銘柄が上昇し、日経平均株価を押し上げ、一時上げ幅は161円まで拡がりました。 外国為替市場では、日銀の追加利上げ観測の後退を受けて円安米ドル高が進んでおり、本日11:30頃には、一時153.9円台になりました。しかし、円安進行は株式市場にとって追い風とはならず、日経平均株価は40,000円を前に上値は重く、徐々に上げ幅を縮小しました。今週17-18日の12月FOMC、18-19日の日銀金融政策決定会合を前にした様子見姿勢の強まりも重石となったとみられます。引けにかけて前週末終値近辺での値動きを続け、大引けは前週末比12円安の39,457円で取引を終えました。東証プライム市場の売買代金は、3兆3,314億円と、10月25日以来の低調な水準でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では12月ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表されます。12月FOMCを前に、米国景気の動向を確認するうえで、注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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2024/12/16 08:12
【野村の朝解説】FOMCを控え米株は動意を欠く展開(12/16)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場は動意を欠く展開となり、S&P500は前日比横ばい、ナスダック総合も小幅高で引けています。米国では17-18日にFOMCを控える中で、先週は11月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)と注目度の高いインフレ統計が発表されました。CPIは事前予想通り、PPIは予想比で小幅上振れましたが、市場では今週の利下げ判断を妨げるものではないと評価され、0.25%ポイントの利下げを概ね織り込んでいます。この日注目されたのは円安です。円は一時1ドル153円80銭まで売られ、日中としては11月26日以来の安値を付けました。先週のブルームバーグに続き共同通信が「日銀が金融政策の据え置きを検討している」と報道したことで、市場の利上げ観測が後退し、円安につながっています。 相場の注目点 市場は今週のFOMCでの利下げを概ね織り込む一方で、25年末の政策金利見通しはむしろ上昇しています。結果、米国債市場では長期金利を中心に金利は上昇しています。足元の利下げ観測の後退は景気堅調を織り込んだ「良い金利上昇」の面が大きく、米株は堅調に推移しています。ただし、10年国債利回りが4.5%を明確に上回る展開になれば、トランプ次期政権の誕生など、不透明感の高い中での金利上昇が米国株式市場で嫌気される可能性があり、注意が必要です。 先週発表された日銀短観は、景況感は堅調、企業の設備投資計画も予想に反して上方修正されるなど、日銀の利上げを後押しする結果であったと評価できます。日銀は今週の会合で利上げを見送るとの観測報道が増えていますが、足元で進行している円安に対する日銀の評価が注目されます。ドル円相場が155円を超える際には口先介入の再開なども想定されることから、日銀が円安阻止に向けて政府と足並みを揃える可能性もあります。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2024年12月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/12/15 16:00
水稲メタン削減の将来性と課題
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 ヴァイス・プレジデント 石井 佑基(2024年12月10日) はじめに 二酸化炭素の25倍の地球温暖化係数(GWP[1])を持つメタン(CH4)は、近年削減が求められている温室効果ガス(GHG)である。このうち、昨今報道されるようになったのが家畜由来(げっぷと糞尿発酵)のメタン排出であるが、水稲からのメタン排出も無視できない状況になりつつある。それは、イネがコムギとトウモロコシに並ぶ主要穀物であり、人口増加や所得向上による消費拡大が見込まれるアジア・アフリカ地域での主要食糧であることによる。今後、人口増加や経済発展によって需要の増加が予想され、生産の拡大に伴って水稲からのメタン排出量が増加する懸念がある。 本稿では、世界中で動き始めた水稲メタン削減とそのビジネス化やカーボンクレジットの動向や展望、日本における取り組み可能性について述べる。 1.水稲栽培におけるメタン排出原理と削減手法 (1) 水稲栽培におけるメタン発生メカニズムと発生量 天然ガスの主成分でもあるメタンは、自然界では有機物の嫌気発酵によって排出されるアルカンの一種であり、火力発電や都市ガスなどに利用されている。メタンは2021年には人類の活動によるものだけで6.4億トン(二酸化炭素換算179億トン(GWP-100=28))が排出されている。GHG全体の排出量が590億t-CO2/年であること、過去20年に排出量が10%以上増加しているなど、短期的に気候変動への影響が大きなGHGである。メタンの主要な排出源としては、農業分野が約40%と最も大きく、石油・ガス(23%)、廃棄物処理(20%)、石炭採掘(12%)など、一般に排出が多いとイメージされる産業を上回る。 メタン発生のメカニズムは嫌気発酵である。メタン細菌は酸素がない条件(嫌気条件)でエネルギーを生産し、メタンを副産物として作り出す。ウシなどの反芻動物の消化管内発酵や、家畜糞尿からのメタン排出はこうしたメカニズムによって起こっている。実は、ウシのげっぷメタンと水田からのメタン発生は同じメタン細菌によるものである。似た例として生物による独立栄養生産があり、植物の光合成の場合はエネルギーの副産物として酸素を排出する。 それでは、なぜ水稲からメタンが発生するのか。水田は湛水された状態であり、嫌気発酵する条件が整っているためである。実は、自然界でも湿地などから排出されるメタンが少量存在し、それらも嫌気発酵に由来している。自然に発生するものであるのにも関わらず水田からのメタン排出が問題視されているのは、それが人為的な活動によるものであることと、灌漑設備の普及などで稲作の生産性が改善したことの副作用であるからである。 (2) 世界的な米の増産とメタン発生量増加 米はアジアを中心に主要な穀物であり、人口増加により需要が増加している。このような背景から収量の改善が大きなテーマとなっていたこともあり、灌漑設備の普及や化学肥料の投入、品種改良(緑の革命)が続けられてきた。イネは大きく分けてインディカ種(Oryza sativa subsp. indica)とジャポニカ種(Oryza sativa subsp. japonica)の2亜種があるが、いずれの亜種でも陸稲と水稲がある。陸稲は畑で生産可能な手軽さや水使用量が少ないメリットはあるが、収量が低い。水稲は水田設備が必要なことと水使用量が多いデメリットがあるものの、収量が高い。そのため、灌漑設備の普及によって水稲栽培が広がれば収量が増加するが、負の側面として水稲では水田からのメタン発生を伴う。 (3) 水稲栽培におけるメタン発生抑制法 解決策として、①日本を中心に進んでいる水田中干(AWD: Alternate Wetting and Drying:図表1参照)、②水稲種から陸稲種への切り替えなどがある。AWDでは収量を落とさずにメタンの発生を3割程度削減できるが、削減量の変動が環境や地域で大きいデメリットが存在する。削減量が環境や地域で大きく変動してしまうと、GHG削減効果の検証の際に重要となるMRV(測定、報告及び検証)に影響を与えるという問題がある。AWDでメタンの発生が少なくなる原理は、水田の水を抜く中干によってメタン細菌の働きが抑えられるためであるが、メタン細菌の活動抑制効果が外部環境の影響受けやすいため、前述のように削減量が変動しやすくなる。AWDについてはもう一つメリットとして、水使用量の削減効果がある。農業生産の拡大にとって必要不可欠な水資源だが、FAO(国連食糧農業機関)の「 AQUASTAT」によると、世界の水資源の75%は農業用水として利用されている。AWDを使うことで水資源利用量も削減でき、農業生産者は灌漑コストの低下というメリットも享受することが可能である。 水稲種から陸稲種への切り替えではメタン発生量は大きく減ることと、削減量が安定しているが、収量が低下するデメリットが存在する。この収量の低下を省力化で補うことで普及を促す動きもある(後述)。 図表1 水田中干(AWD)の概要 (出所) 各種資料より、野村證券フード・アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.水稲栽培におけるメタン削減の事業化 (1) 国際的な取組状況とビジネス展開 水田中干は日本の農林水産省が早くから注目して研究し、2023年3月にJ-クレジットの方法論として認められた。これに伴い、農林水産省はフィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国のJCM(日本の炭素クレジット二国間取引制度)を通じた拡大を模索している。日本では、クレアトゥラ株式会社(東京)が東京ガス株式会社およびクボタ株式会社と連携して、株式会社フェイガー(東京)がヤンマーアグリ株式会社とそれぞれ連携して、フィリピンでのAWDのJCM創出に乗り出している。Green Carbon株式会社(東京)はベトナム北中部農業科学研究所と連携して、同国でのAWDのJCM創出を始めている。 陸稲種への切り替えでは、種子メジャーを中心とした推進がみられる。農薬と種苗などの農業ソリューションを手掛けるドイツのBayerは、同社の零細農家支援プログラム「DirectAcres」を通じ、2030年までにインドの水田100万ヘクタールに直播栽培(陸稲への切り替え)を導入し、零細農家200万人以上を支援する計画を実施している。同社は2023年10月16日、コメ生産で、移植栽培(田植え)から乾田直播に移行することで、米農家でのGHG排出量を最大45%、水使用量を同40%、手作業も同50%削減できると発表した。今後、同社は農薬などを組み合わせたソリューション・ビジネスの展開を計画している。 (2) 水稲栽培におけるメタン削減の課題 先にも述べた通り、AWDは削減効果の変動が大きいことが課題であるが、他にも測定手法や検証方法の簡素化が挙げられる。MRVはサンプル測定の結果を元に計算で求められることが一般的だが、削減効果の変動が大きいAWDはカーボンクレジットの正確性に課題がある。そこで、アグリテックを利用してAWDの正確性を向上させようという動きが出てきている。日本のリモートセンシングスタートアップであるサグリ株式会社(兵庫県)は、自社が持つリモートセンシングとAI解析を活用してベトナム政府と共同で実証事業を開始している。 AWDは、国連が主導した炭素クレジットの認証機関であるGold Standardでも方法論として採用されるなど、国際的にも注目されている。しかし、ボランタリークレジット最大の認証機関であるVERRAはMRV算出に課題があるという理由で方法論として採用していないなど、認証機関ごとに対応が異なっている点も課題である。 AWDで課題となっている正確性や低コストでの測定は、日本を中心にリモートセンシングや土壌分析の技術開発が行われているため、技術革新によって正確性が向上していくことを期待する。また、統計的にはAWDの利用面積が増加すれば、それだけ測定データも蓄積されて正確性が改善される。AWDの推進は、正確性の向上にも寄与するであろう。 陸稲種は水稲種よりも収量が低くなるため、陸稲種への切り替え時には最適な農薬との併用などによって農業生産者に省力化を提供できる対策が必要である。そのため、種苗開発と農薬開発などのソリューションを提供してきた種子メジャーが、技術開発と普及を行っている。種苗開発と農薬開発を組み合わせたソリューションは、かつて遺伝子組換え作物の普及の要因となった生産性向上と同じ戦略であり、陸稲種普及の課題を解決してくれると期待している。 3.日本における取り組みの可能性 (1) J-クレジットへの採用と企業の参入状況 先にも述べた通り、クレアトゥラ株式会社、株式会社フェイガー、Green Carbon株式会社、そして株式会社バイウィ(東京)などが国内外の水田におけるAWD事業に参入している。大企業では三菱商事株式会社が2023年にJ-クレジットにプロジェクトの登録を行っているほか、株式会社鈴生は、クミアイ化学工業株式会社と連携し、静岡県でプロジェクトを開始するなど、地域での取り組みも始まっている。2024年8月現在、AWDの国内プロジェクトはJ-クレジットに14,996 t-CO2登録されており、これはバイオ炭の農地施用1,033 t-CO2、家畜糞尿処理146 t-CO2よりもはるかに大きい。 日本国内の水田だけでは市場規模は小さいものの、東南アジア諸国でのJCM制度を活用してより大きなビジネス規模に拡大していくことが可能であることから、いち早く大企業の参入が見られたのも特徴である。 (2) AWDカーボンクレジットの想定市場規模と普及に向けた課題 水田からのメタン排出量について、日本の排出量は1,307万t-CO2と見積もられている。AWDによってこの3割が削減できるとすると、削減量は392万t-CO2となり、現在J-クレジットに登録されているプロジェクト1.4万t-CO2と比較すると大きなポテンシャルがある。直近落札価格(2023年5月入札)の1,551円/t-CO2で見積もると、日本の水田における想定市場規模は約60億円/年である。 また、世界の水田からのメタン排出量は25Tg/年(2021年 IPCC報告書)と見積もられている。2022年以降の数値は公表されていないが、このデータに着目すると25Tgは2,500万tであり、二酸化炭素換算(GWP-100=28)では7億t-CO2となる。AWDで3割のメタンが削減できるとすれば、クレジットの単価を10ドル/ t-CO2とすると、21億ドル/年の市場規模が見込まれる。 このように、AWDカーボンクレジットは十分な市場ポテンシャルを持つが、環境や地域によって削減量が変動しやすいことがMRV上での課題となっている。一方、技術革新は進んでおり、衛星データの活用や、水田に設置するタイプの測定器なども開発されている。MRVの正確性はカーボンクレジットの質に影響する(正確性が高いカーボンクレジットは価値が高い)。そのため、カーボンクレジットの買い手である削減義務者にAWDによるカーボンクレジットが受け入れられるよう、正確性をより向上させる技術革新は不可欠である。 おわりに 日本の畑作地は197.3万haと非常に小さいが、実は、全耕作地の54%を占める水田のAWDによるメタン削減は日本が先行している。そのため、日本企業がJCMの仕組みを活用することで東南アジアでのGHG削減とクレジットビジネスの創出に動いており、注目される分野である。また、Gold Standardを活用すればボランタリークレジット市場にもアクセスが可能である。このように、日本の実情に即した独自のカーボンファーミングや農地関連脱炭素技術を探求できる可能性が、我が国には残されている。 AWDの仕組みを通じて、日本は脱炭素化とビジネス化、そして国際貢献の「一石三鳥」を狙うことを考えていくことが重要である。 [注釈] [1] GWPは温室効果係数。二酸化炭素を1として、その物質がどの程度温室効果が高いかを示す。ただし、物質は分解することもあるので、100年間での温室効果を示すGWP-100、20年間の温室効果を示すGWP-20など種類がある。一般的に温室効果を測る場合はGWP-100を使用する。メタンの場合はGWP-100が28、GWP-20が84であり、短期的な影響が大きい。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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2024/12/15 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅡ:第9回 チャート分析の古典:グランビルの法則
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅡ「相場の見方の強い味方、移動平均線」最終回の今回は、チャート分析の古典と言われる「グランビルの法則」について解説しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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2024/12/14 19:00
【来週の米国株】堅調なテック株、よくみると明暗/FOMCの注目点は(12/13)
※執筆時点 日本時間12月13日(金)12:00 今週:米CPI無事通過&テック決算明暗 ※12月6日(金)- 12月12日(木)4営業日の騰落 11月の米CPI(消費者物価指数)の内容が概ね市場予想通りとなったことから先物金利は2024年12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げをほぼ完全に織り込み、市場金利が低下しました。これを受けて金利に敏感な情報技術関連株が上昇し、ナスダック総合指数は一時、史上初の20,000ポイント台を付けました。 注目決算はまちまちの内容 ただ、情報技術株のファンダメンタルズは必ずしもポジティブなものばかりではありませんでした。注目されたソフトウェア大手2社、アドビ(ADBE)とオラクル(ORCL)の2024年9-11月期決算発表では、いずれも2024年12月-2025年2月期のEPS(一株当たり利益)会社見通しが市場予想を下回りました。アドビは生成AI需要増による画像編集ソフトウェアの業績拡大が、オラクルは生成AI向けを中心としたクラウドサーバー需要増による業績拡大がそれぞれ期待されていただけに、決算発表日翌日にはどちらの株価も下落しました。 一方、通信向け半導体及びソフトウェア大手のブロードコム(AVGO)の2024年11月-2025年1月期のEPS会社見通しは市場予想を上回りました。アップル(AAPL)がAI用半導体を自社開発すると伝わり業績懸念もありましたが、ブロードコムは決算発表の際にアップルとのAI半導体開発が複数年契約になるとコメントし、安心感が広がりました。 同社は、2024年8月-10月期決算で部門別売上高も開示しましたが、インフラストラクチャーソフトウェア部門が市場予想を下回り、半導体部門が市場予想を上回っています。なお、インフラストラクチャーソフトウェア部門の売上急増は買収効果に起因しています。 (ご参考)ブロードコム決算 個社の決算内容だけでセクター全体を判断することに注意は必要ですが、前述の3社を見る限り生成AIの活用によるソフトウェアセクターの業績上振れシナリオにはまだ注意が必要と考えられます。まずは、設備投資などで堅調なハード(特に半導体)が情報技術セクターのけん引役であることに注目すべきでしょう。 AI関連の成長は終わっていないが、それ以外にも目を 野村では、AI関連産業を引き続き強気にみていますが、2025年後半からAIの投資テーマが変化する可能性が高いことから、局面変化に応じ柔軟に投資対象を選抜すべきだと考えています。指標として注目されるのは、クラウド事業者の設備投資計画とAIサーバーメーカーの在庫です。向こう6~9ヶ月間の短期については、エヌビディア(NVDA)のGB200の納入が2025年のAIサイクルの上昇局面を維持するカギになるでしょう。ただし、エヌビディアが公表しているロードマップによると、次のAIシステム性能の大幅な向上は2027-2028年との見通しが示されており、2027年前半頃までに設備投資が鈍化する可能性があります。足元ではGB200自体が米国の大手クラウド事業者の設備投資を一段と高めますが、2年後頃から不透明感が出てくると想定されます。また、足元ではビットコイン採掘の需要も想定されますが、これまでの歴史から考えるとAIサーバーメーカーにおける過剰在庫はAI半導体にとっても良くない兆候とされており、その動向を確認していきたいと考えます。 AI関連以外の情報技術銘柄について、仕様アップグレード(特にオンデバイスAI)とバリュエーションの割安感を踏まえ、L字型サイクルの底から脱しつつあるなかで選択肢の一つであると考えています。 来週:FOMCでは「見通し」の上振れに注意 17日(火)~18日(水)に米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。FRB(米連邦準備理事会)の政策判断を見極める上で注目された11月CPI(消費者物価指数)は食品・エネルギーを除くコア指数の前月比上昇率が市場予想に一致したことから、市場では今回のFOMCにおける利下げをほぼ織り込んでいます。 ただし、コアCPIは4ヶ月連続で前月比+0.3%と、年率換算でインフレ目標である2.0%を上回る上昇率を続けていること、11月PPI(生産者物価指数)は市場予想を上回ったこと、トランプ次期政権が関税の引き上げを公言していること等から、「FRBは早晩、様子見に転じるのではないか」との見方が高まっています。今回の会合では経済・政策金利見通しが公表されることから、FRBが次期政権の政策をどの程度経済見通しに織り込んでいるかを含めて注目が集まります。 株価に水を差す「長期金利上昇」をどこまでとみるか? 足元では米長期金利(10年国債利回り)がやや上昇し、4.3%台で推移しています。米長期金利上昇は株価への下押し圧力となりますが、野村ではインフレ再燃リスクが台頭しても米長期金利が5%超へ上昇することは見込み難いと考えています。米長期金利は、利下げ到達点の市場期待を示す3年先1ヶ月金利と相関が高いことが知られています。過去の相関に基づけば5%超となるのは、 3年先1ヶ月金利が4.5%前後以上となるような場合と想定されます。ただ、12月FOMCで0.25%ポイントの利下げが実施され政策金利が4.25%~4.50%となれば、 3年先1ヶ月金利が4.5%以上となるシナリオは再利上げが視野に入るケースに該当することになります。景気・インフレは1~2年のようなスパンで見れば減速傾向を辿っているため、金融政策は引き締め的と推察され、再利上げはあくまでリスクシナリオの位置づけです。インフレ再燃時に米10年長期金利が4%台後半まで上昇した場合の株価への下押し圧力は想定しなければなりませんが、仮に5%が近づけば行き過ぎと考えることができます。 堅調な景気は続くかを年末商戦でチェック そのほか、11月小売売上高(17日)では、業種別の売上動向等から、年末商戦の個人消費動向を確認したいと考えます。FRBが重視する11月コアPCEデフレーター(20日)は、FOMC直後でもあり、相場に与える影響は限定的とはみられますが、足元のインフレの状況を把握する上で、確認が必要です。 ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール