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04/20 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅣ:第8回 騰落レシオ(2) チャートで検証してみよう
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は騰落レシオについて、チャートを用いた解説と、追加のポイントについても説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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04/19 16:00
食農体験型返礼品が切り拓くふるさと納税の可能性
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 コンサルタント 増子 桃子(2025年4月11日) 1. 拡大を続けるふるさと納税―その背景と発展 ふるさと納税は、2008年に総務省の主導で導入された制度であり、「地方で生まれ育ち、都会に移り住んだ人が、税制を通じてふるさとや応援したい地域に貢献する仕組みを作る」という想いのもと創設された。地域を支援する新たな選択肢として導入されたこの制度について、総務省は次の三つの意義[1]を提示している。 ① 納税者が寄付先を選択することで、税の使われ方を考えるきっかけとなる② お世話になった地域やこれから応援したい地域の力になれる③ 自治体が取組をアピールすることで、自治体間の競争が進み、地域のあり方をあらためて考えるきっかけとなる このように、「納税者と自治体が、お互いの成長を高める新しい関係を築いていく」という理念のもとで始まったふるさと納税は、2011年の東日本大震災を契機とする被災地支援への寄付が広がることで認知度が高まった。さらに、2012年には国内初のふるさと納税専門のポータルサイト「ふるさとチョイス」が開設されて利便性が向上したほか、2015年には控除上限の引き上げとワンストップ特例申請の導入によって手続きが簡素化されるなどで、利用者が一気に拡大した。この結果、寄付者数と寄付総額は急増し、2023年度には寄付総額が1兆円を超え、ふるさと納税利用者と言える住民税控除適用数も1,000万人を突破するなど拡大を続けている(図表1)。 現在では、ほとんどの自治体が寄付の「御礼」として返礼品を提供しているが、導入当初は、返礼品を送る自治体はごく一部であり、寄付金の使途を提示することで寄付を募ることが主流であった。2012年のポータルサイト開設以降、寄付する自治体を「返礼品で選ぶ」という文化が徐々に浸透し、返礼品の内容や形式も多様化している。こうした中で、寄付者の動機は「返礼品」が大半を占めるようになり、自分にゆかりがある「ふるさと」を応援するという当初の理念が十分に実現されているとは言い難い状況となっている。また、自治体間の寄付獲得競争が激化する中で、地域振興と直接結びつかない返礼品も見受けられるようになり、制度の在り方が問われる場面が増えている。 図表1 ふるさと納税受入金額と住民税控除適用者数の推移 (出所)総務省「令和6年度ふるさと納税に関する現況調査について」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 しかしながら、「返礼品」をきっかけに寄付先の地域やその魅力を知り、地域支援の輪が広がるというポジティブな側面も見逃せない。ふるさと納税の導入当初に掲げられた意義を再確認し、地域振興や地方創生へと繋げるためには、返礼品を単なる物品提供にとどめるのではなく、地域の持続可能な発展を促進する仕組みへと進化させることが求められる。筆者がその一例として注目したいのが、「食農分野」における返礼品の影響であり、この分野が地域経済に与える影響や課題を掘り下げていきたい。 2. 食農分野に見るふるさと納税の効果と課題 ふるさと納税返礼品の中でも、食品や農産物は人気の高いカテゴリであり、寄付件数の6割強が食農分野に関連している(図表2)。2023年度の寄付受入金額は1.1兆円であり、このうち返礼品調達額は約3割であるため、食農分野の返礼品調達額は1,980億円(1.1兆円×0.6×0.3)と推定される。農業・食料関連産業の国内生産額(概算値)が114兆円(2022年)[2]であることを考えると、規模は小さいものの、食農産業が主要産業となっている地方自治体では、非常に大きな影響力を持つと考えられる。 例えば、2022年および2023年にふるさと納税受入額が第2位となった北海道紋別市は、2022年に194億円の受入額を記録しており、このうち食農分野の返礼品調達額はおよそ35億円[3]と推計される。この金額は市の農業産出額(79.7億円[4])の44%に相当し、地域経済を支える重要な財源となっている。また、宮崎県都城市では、宮崎牛や豚肉、焼酎を返礼品として戦略的に活用し、寄付額全国1位を記録した。市では寄付金を子育て支援や教育施設の整備に充てるなど、地域経済の好循環を生み出している。 図表2 ふるさと納税 返礼品カテゴリ別寄付件数の推移 (出所)総務省「令和6年度ふるさと納税に関する現況調査について」および、ふるさと納税ガイド「ふるさと納税 人気返礼品 ジャンル(https://furu-sato.com/magazine/9440/)」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 一方で、現行の食農分野の「物品型返礼品」には以下のような課題が存在している。 ① 特産品の有無による寄付額格差特産品が地域間競争を左右する状況が続いており、特産品に恵まれない自治体では寄付が伸び悩む傾向にある。特産品の提供が難しい自治体では、寄付者を引き付ける手段が限られ、競争力の格差が拡大している。 ② 自治体と寄付者の繋がりの希薄化と「官製通販」化の懸念1章でも触れたように、寄付の主な動機が「返礼品取得」となっており、寄付先自治体への関心が薄れている。ふるさと納税の本来の目的である「ふるさとを応援する」という意義が薄まり、制度が「官製通販」化しているという批判も存在する。 こうした課題を解決していくために、筆者が注目しているのが、「体験型返礼品」である。近年、寄付件数が増加傾向にある旅行券やギフト券を軸とした体験型返礼品は、物品型返礼品の課題を解決する糸口となり得る。特に、人気の高い食品・農産物と組み合わせた「食農体験型返礼品」は、地域の持続可能性を高めるとともに、寄付者との繋がりを深める有効な手段となり得る。 3. 「食農体験型返礼品」の可能性 近年、消費者の価値観は「モノ消費」から「コト消費」へ移行している。物理的な商品を購入して得られる満足感よりも、心に残る体験や感情的な価値に重点を置き、形として残らない「経験」を求める傾向が強くなっている。この動きは、ふるさと納税返礼品の新しい選択肢として「体験型返礼品」の普及を後押ししている。また、レッドホースコーポレーション株式会社が実施したアンケート調査[5]によると、体験型返礼品利用者の9割が「寄付で訪れたまちにまた訪れたい」と回答しており、寄付者が地域に対して継続的な関心を持つきっかけとなり、体験型返礼品が地域の交流人口だけでなく、関係人口の創出に寄与することも示唆されている。 体験型返礼品の中でも、食農体験型返礼品は、地域独自の農業や食文化を活用し、寄付者が地域を訪問して体験することで、物品返礼品の課題を補完する可能性があると筆者は考える。図表3でまとめるように、食農「物品型」返礼品は、寄付者の利便性や地場産業の短期的な売上増加に繋がるという利点はある一方で、食農体験型返礼品は、返礼品に留まらず、寄付者が寄付先自治体へ訪問することでの地域経済への波及効果や地域住民との交流による関係構築・リピーターや関係人口の創出に繋がり、また、ふるさと納税返礼品以外への展開も可能性があると考えられる。 図表3 食農物品型返礼品と食農体験型返礼品の比較 項目食農物品型返礼品食農体験型返礼品提供内容地域の特産品(食品、農産物等)を寄付者へ送付地域に関連する農業や食文化等の体験やサービスを提供寄付者の利便性寄付手続き後、返礼品の発送を待ち、受け取るのみであるため、寄付者の利便性は高い寄付手続き後、寄付先自治体へ訪問するための交通の手配、宿泊予約が必要であり、手間と時間を要する地域への経済効果返礼品調達先である地場産業の売上増加に貢献寄付者が寄付先自治体へ訪問することで、体験・サービスを提供する地場産業の売上増加の他、宿泊・飲食業等の地域経済への波及効果寄付者との繋がり返礼品の提供後の、継続的な関係構築が難しく、短期的な繋がりとなる寄付先自治体を訪問し、地域住民との交流することで、地域との繋がりが生まれ、リピーターや関係人口を創出ふるさと納税以外への展開・波及地元特産品の知名度向上による販路拡大やブランド力強化食育への展開:都市部の学校のフィールドワーク・教育プログラム化。企業の福利厚生として農業体験導入インバウンド観光への展開:アグリツーリズムやグリーンツーリズム等の地域資源を活用した訪日外国人向けのプラン設計へ波及 (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 それでは、実際にはどのような体験やサービスが食農体験型返礼品として考えられるか。ふるさと納税のポータルサイトで紹介されている返礼品を例に整理を行った(図表4)。いずれの体験においても、地域の魅力や価値を向上させ、寄付者の地域や食農分野に対する理解醸成に繋がり、寄付者と地域の新たな関係性を構築する可能性がある。 図表4 食農体験型返礼品の例一覧 返礼品の種類 内容期待される効果 対地域期待される効果 対寄付者具体例農業体験野菜や果物等、地元特産品の収穫体験畑や田の区画、茶やオリーブの樹のオーナー制度等農業の魅力をアピールし、地域農業の理解と支援を促進休耕地や耕作放棄地等の有効活用普段口にしているものを自らの手で育て、収穫することで、食べ物の価値や生産者の努力を理解新潟県糸魚川市「農業体験+お米の定期便『米主』プロジェクト」愛知県安西市「レンコン掘り体験」漁業体験漁船に乗り、魚を捕る体験を行い、地域の海産物を楽しむ地域漁業の活性化地域の海産物の認知度向上漁業の魅力や海産物の価値を直接体験し、地域の海洋資源への関心が深まる高知県中土佐町「上ノ加江漁港の漁業体験」和歌山県串本町「沖釣り体験」酪農体験酪農現場で牛の飼育や乳搾り等を体験チーズやバター等乳製品の加工体験地域酪農の魅力を発信乳製品のブランド力を強化酪農の現場を知り、食品の生産過程を学ぶ 沖縄県大宜味村「自然の中で酪農&バターづくり体験」北海道広尾町「広尾町の魅力を楽しむ酪農漁業体験ツアー」地元食材を使った料理教室地元食材を使った料理や郷土料理を学びながら、地域の食文化に触れる体験地域の食文化や郷土料理の認知度を向上地元食材のブランド力向上地元食材の魅力や地域ならではの食文化や郷土料理を学ぶことで、地域の歴史も垣間見ることができる新潟県新潟市「新潟強度料理教室」千葉県四街道市「農家キレド 畑と野菜の料理教室体験」酒造り体験地元特産品である日本酒や焼酎等の製造工程を学ぶ体験 地域酒文化の発信観光資源としての価値向上日本酒や焼酎の製造過程を学び、地域の伝統的な酒文化を学ぶ長野県佐久市「KURABITO STAY 蔵人体験」奈良県大和郡山市「中谷酒造 酒造り体験」農村民泊体験農村に宿泊し、農作業や地元の日常生活を体験地域住民との交流を促進し、関係人口を創出地域の日常生活の体験を通じて、地域文化への理解が深まる宮崎県高千穂町「農村民泊」大分県宇佐市「安心院農村民泊」(出所)ふるさと納税ガイド(https://furu-sato.com/)およびふるさと納税なび(https://myfuru.jp/)より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 例示した以外にも、食農体験型返礼品の種類は多岐にわたっている。また、既存のサービスから展開も可能であり、肉や魚介類といった特産品がなくとも、各自治体の工夫次第で、魅力的な体験やサービスを企画することができる。各地域が持つ特性に応じた食農体験型返礼品を開発することは、地域の価値・魅力の再発見する機会に繋がる。 さらに、食農体験型返礼品は、クラウドファンディング型ふるさと納税と組み合わせることで、ふるさと納税の三つの意義を最大限発揮することができるのではないかと筆者は考える。クラウドファンディング型ふるさと納税とは、地方自治体が目標金額・募集期間等を定め、特定の事業・プロジェクトにふるさと納税を募るものであり、寄付者は共感・支援したいプロジェクトに対し、直接応援できる仕組みである。地域の食農産業の課題解決を目的としたプロジェクトも多数存在し、クラウドファンディング型ふるさと納税についても、返礼品を受け取れることがほとんどである。その返礼品をプロジェクトに関連した食農体験型返礼品とすることで、寄付者自らが支援したプロジェクトの現場を体験し、課題解決に寄与したという実感を得ることができる。結果として、寄付先自治体とのより深い関係性を構築し、地域への愛着や継続的な関心へと繋がるのではないだろうか。 おわりに ふるさと納税は、筆者が取り上げた課題以外にも、都市部の税収減少や公平性の問題、制度運営上の課題等、さまざまな課題が議論されている。それでもなお、地方が持つ独自の魅力や価値を再発見し、その魅力や価値を都市住民に向けて発信し、都市住民との関係人口や交流人口といった新しい関係性を築くきっかけとなるこの制度は、都市への人口集中が進み、地方の人口減少や経済的疲弊が進む状況下において、地方創生に繋がる重要な打ち手になると考える。 本稿で取り上げた「食農体験型返礼品」が、現行の制度の課題を解決する一助となり、本来目指している理念や意義を十二分に発揮できるような制度へ進化していくことを期待したい。 [1] 総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税の理念」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/) [2] 農林水産省「令和4年 農業・食料関連産業の経済計算(概算)」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/keizai_keisan/r4/index.html) [3] 194憶円の受入額のうち、返礼品調達額を3割、食農分野の返礼品の割合を6割と仮定し推計 [4] 農林水産省「令和4年 市町村別農業産出額(推計)」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sityoson_sansyutu/) [5]レッドホースコーポレーション株式会社「【ふるさと納税に関するアンケート調査】“コト消費”返礼品が拡大。寄附者の90%が「また、訪れたい」と回答。」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000385.000048395.html) ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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04/19 09:00
【オピニオン】トランプ関税は全く織り込まれていない?
※画像はイメージです。 2025年3月下旬以降、世界中の金融市場の不安定性が高まっています。原因は、ほぼ議論の余地なく、トランプ政権の関税政策がもたらす不透明性といってよいでしょう。今回はトランプ政権の関税政策の織り込み度合いを、日米の企業業績予想の変化から推理してみることにしましょう。 まず震源地の米国ですが、2025年2月以降急速に2025年年間の予想EPSが下方修正されています。ただ、四半期毎でみると、下方修正されているのは関税の本格発動前の1-3月期で、関税の影響が顕在化すると見られる4-6月期以降の修正は緩慢です。関税発動の影響はほぼ織り込まれていないと考えてよさそうです。 (注)S&P500の2025年予想EPSの推移(面グラフ)と、2025年の四半期ごとの予想EPSの推移(折れ線グラフ)。直近値は2025年4月11日。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 次に日本ですが、こちらは米国とは逆に2025年1-3月期は挽回生産の本格化などから3月まで業績予想は上方修正が優勢でした。ただ直近1ヶ月間は予想にほぼ動きはなく、米国と同様に関税発動の影響はほぼ織り込まれていないと思われます。 (注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の予想経常利益の推移。2025年3月3日までは実際の集計値で、直近値の4月14日は、アナリスト予想が非連続/欠損値が存在する企業等を除き集計した変化率で接続している。(出所)市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 加えて日本では、通常4~5月に予定されている期初の会社見通しを公表しない企業が多数に上る可能性が懸念されています。過去においても、東日本大震災(2011年度)や、コロナ禍(2020年度)の際には会社見通しを開示しない企業が多数にのぼり、株式市場は不安定化しました。株式市場は、憂慮すべき事象の影響が定量的に把握できない場合、最悪ケースを前提に動くことから、株価は乱高下しがちです。現在の株式市場はこうした心理状態に相当程度近い、と考えられます。 (注)東証プライム市場上場企業のうち、3月決算企業を対象に集計している。(注2)日経平均VIは、毎年5月末を終点とする50営業日の間の最大値を表示している。直近値のみ2025年4月14日を終点とする50営業日の最大値。(出所)野村證券投資情報部作成 なお、会社見通しのその後ですが、2011年度の場合には当初想定以上にサプライチェーンの回復が早く、第1四半期決算の発表シーズン(7~8月)には期初見通し非開示企業が多い状況は解消されました。2020年の際には、コロナ感染が波状で押し寄せたことから、解消には2四半期を要しました。 今回の場合、①トランプ政権では関税からの税収を来年度以降の減税の原資の一部に充てるとしており、そのため②関税政策においてはスピード感を重視している、という見方が多いようです。この見方が正しければ、2011年度のように7~8月の第1四半期決算の発表シーズン頃から、影響が定量的に把握できるようになる可能性があります。その際、影響が想定よりも大きかったとしても、定量的に把握できるようになれば不透明感が払しょくされ、多くの投資家に安心感をもたらす効果が期待できるでしょう。 ご投資にあたっての注意点
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04/19 07:00
【来週の予定】ブラックアウト期間前、FRB高官は何を語るのか
来週の注目点:FRB高官の発言、IMFの世界経済見通しとPMI速報値 トランプ政権の関税政策と、それに対するFRBや各国政府の対応に市場の関心が集まっています。FRBは5月6日(火)-7日(水)にFOMCを控えて26日から金融政策に対する公式発言を自粛するブラックアウト期間に入るため、今週も今後の政策運営に関するFRB高官の発言が注目されます。 22日(火)のジェファーソン副議長を筆頭に、多くのFRB高官の講演が予定されています。また、23日(水)には地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表されることから、経済活動に対する関税の影響や、それを受けたFRB高官の政策判断が注目を集めそうです。 21日(月)からワシントンでIMF・世界銀行総会が開催されるのに合わせ、22日(火)にはIMFの世界経済見通しが公表されます。今回は米国の関税による世界経済への影響が注目テーマとして取り上げられると見込まれることから、その分析結果が注目されます。 経済指標では23日(水)に主要各国・地域の4月PMI速報値が発表されます。関税の影響を受けた製造業の景況感や、物価の状況、雇用判断などが注目を集めそうです。 米国では23日(水)に3月新築住宅販売件数、24日(木)に3月中古住宅販売件数と3月耐久財受注、25日(金)に4月ミシガン大学消費者マインド確報値が発表されます。速報値では1年先の期待インフレ率が大幅に上昇する一方、消費者マインドは大きく低下し、市場の注目を集めました。確報値でも修正の方向や修正幅が、再び市場の関心を集めそうです。 日本では25日(金)に4月東京都区部消費者物価指数が発表されます。消費動向への影響が大きい食料品やエネルギー価格の動向に注目です。 欧州では景気先行指数として注目度の高い、ドイツの4月Ifo企業景況感指数が24日(木)に発表されます。財政拡張政策と米国の関税が相殺し合う格好になっていることから、その結果が注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年4月18日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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04/18 16:41
【野村の夕解説】日経平均株価は底堅い動き 352円高(4/18)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日寄り付き前に、日本の3月全国消費者物価指数(CPI)が発表され、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+3.2%と、概ね市場予想通りでした。足元では市場の間で日銀の追加利上げ期待が後退しており、この発表による市場への影響は限定的でした。本日の日経平均株価は前日比23円安の34,353円で取引を開始し、その後は上昇に転じました。米大手製薬会社が開発を行っている肥満症薬の治験結果において、減量効果と安全性が確認されたとの発表がされました。この報道を受け、同社に開発・販売権を譲渡している中外製薬は、今後同薬が販売されれば売上額に応じた収入を獲得する可能性が高いとの思惑が広がり、株価は一時前日比+18.9%となりました。業種別では、医薬品やバイオ関連銘柄などが上昇し、日経平均株価をけん引しました。そのほか、米政権が半年後に中国籍の船舶から手数料を徴収する方針を発表したことで、日本国内の海運企業にとっては業績の追い風となるとの思惑が広がり、海運株の一角が上昇しました。日経平均株価は後場にかけても底堅く推移し、引けは前日比352円高の34,730円となり、続伸して取引を終えました。東証プライムの売買代金は約3.3兆円と、18日(金)は米国を含む主要な市場が休場となることもあり、薄商いとなりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 18日(金)はグッドフライデーのため、米国株式市場は休場となります。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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04/18 12:00
【今週のチャート分析】日本株急落の闇に光はあるか、日経平均株価の調整余地は限定的とみる
※画像はイメージです。 ※2025年4月17日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価、大幅反発も上値重い展開。下向きの25日線を突破なるか 今週の日経平均株価は、トランプ政権の関税政策発動の流れが一服し、これまでの下落に対する買戻しの動きがみられ、底堅く推移しました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図1)。日経平均株価は、4月に入り米国による相互関税の発表を受けて大幅安となり、7日には一時30,792円まで下落しました。その後一部関税政策修正を受けて大幅反発したものの、その後は上値の重い動きが続いています。この先、再び上昇基調となり10日戻り高値(34,639円)を超える場合は、下向きの25日移動平均線(4月17日:35,557円)や、昨年12月高値から今年4月安値までの下落幅に対する半値戻し(35,595円)の水準を回復できるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2025年4月17日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、関税を巡る不透明感は当面続くとみられ、再び大幅安となる場合は、2023年10月安値(終値ベース:30,526円)等、多くのフシがある30,000円前後の水準で下げ止まるか注目されます(図2)。 同水準近くには長期月足チャート上の5年移動平均線(4月17日:30,668円)も控えます(図3)。過去10年間の主要な下落局面においては、2020年のコロナショックを除き、概ね5年線が下支えとなってきました。今回も同様の動きとなるか注目されます。 (注1)直近値は2025年4月17日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 (注1)直近値は2025年4月17日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社、各種資料より野村證券投資情報部作成 日経平均株価、調整余地は限定的とみる トランプショックの影響で、米国株を中心に世界の株式市場が大きな打撃を受けましたが、日本株への影響は特に深刻でした。日本株は世界株の中では景気敏感株の位置づけとなっていることも影響を及ぼしているのかもしれません。4月安値形成後に一旦反発した日本株ですが、トランプ大統領の発言や米国の景気動向次第で、さらなる調整となる可能性があります。 ただ、今回の下落局面と2010年代の主要な下落局面を比較した場合、相当程度調整が進展していると考えられます(図4)。日経平均株価では、2010年以降、主要な下落局面が4回ありました。それら局面の下落率は19.4%~31.8%であり、平均下落率は26.9%となります。今回は昨年7月高値から今年4月安値までに既に26.3%下落しており、平均とほぼ同水準です。 仮に、最大の下落率31.8%(コロナショック時)を今回に当てはめると28,796円と試算されます。その水準までは、今年4月安値(31,136円)から2,340円の下げ余地があります。しかし、昨年7月高値(42,224円)から今年4月安値まで既に11,000円を超えて下落しているため、追加の下落余地は限定的と言えるでしょう。 今年4月安値以下には、これまで何度も下支えとなってきた5年移動平均線(4月17日:30,668円)や(図3)、主要な高値や安値の集中する3万円前後の水準が控えています。今後もしばらくは上値が重い状況が続く見込みですが、さらなる調整は限定的であると考えられます。 (注1)直近値は2025年4月17日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む。(出所)日本経済新聞社、各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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04/18 08:25
【野村の朝解説】NYダウは3日続落、企業決算が重石に(4/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米国株式市場でNYダウは終日軟調な値動きとなり、3営業日続落となりました。トランプ関税に伴う景気減速懸念は根強く視界不良の相場環境が続くなか、昨日は構成銘柄であるユナイテッドヘルス・グループが2025年1-3月期決算で、通期利益見通しを引き下げたことを受け大幅安となったことが指数を押し下げました。また、前日の下落を受けて半導体やハイテク株の一部には買い戻しの動きもみられましたが、ナスダック総合の上値は重く、結局マイナス圏で取引を終了しました。なお、18日はグッドフライデーのため、米国株式市場は休場となります。 相場の注目点 4月2日にトランプ大統領が貿易相手国に相互関税を課すと発表して以降、金融市場ではにわかにリスクオフの動きが強まりました。相互関税の上乗せ分は90日間(7月7日まで)停止しており、この猶予期間中に軽減措置などで合意できるか、各国と米国との通商交渉が目先の焦点となります。トランプ大統領はすべての交渉を3~4週間で終えられると自信を示しており、すでにベトナムや日本、イタリアなどと関税政策について交渉を進めています。 ECBは17日の金融政策会合で、市場予想通り0.25%ポイントの利下げを決定しました。24年に利下げを開始して以降、7回目の利下げとなり、中銀預金金利は2.25%に引き下げられました。ECBは中立金利を1.75%~2.25%と考えており、今回の利下げでレンジ上限に達したことになります。ラガルド総裁は会見で、「経済の下振れリスクは高まっている」と話しており、今後はトランプ政権の関税政策を受けた景気下振れリスクに対し、ECBが中立金利以下の水準まで利下げを継続するのかが焦点になるとみられます。野村證券では財政拡張が関税政策の悪影響を和らげるとの見方から、次回6月会合が今利下げ局面で最後の利下げになるとみており、中銀預金金利の着地点は2.00%になると予想しています。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2025年4月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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04/17 16:33
【野村の夕解説】関税交渉の進展期待による円安進行で日経平均反発(4/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 17日の日経平均株価は、外国為替市場で円安が進んだことを受けて上昇しました。米国時間16日に行われた日米関税交渉に参加したトランプ米大統領が、日本時間17日に自身のSNSで、協議の進展を示唆する発言をしたことで円高進行に歯止めがかかりました。また、日本から協議に参加した赤沢経済再生担当相が記者団からのインタビューで、為替は議題に上がらなかったと発言したことで、米国の貿易赤字解消のために日本が円高を容認するのではないか、との市場の懸念が後退しました。また、参院財政金融委員会に出席した植田総裁が、関税政策が日本経済の下押し要因になるとの見解を示し、今後の金融政策判断においては賃金・物価に加え米国の政策動向も注視していくとしました。これらを受けて、東京外国為替市場では円安が加速しました。寄り付きから上昇して始まった日経平均株価は、円安進行に伴い引けにかけて上げ幅を拡大し、終値は前日比457円高の34,377円となりました。16日引け後に発表されたエヌビディアの中国向け製品に対する米国政府の輸出規制は、既に市場で織り込まれていたとみられ、影響は限定的でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国で4月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数が発表されます。米国の関税政策を巡る不透明感の高まりを受けた景況感の悪化が予想されます。特に先行きの設備投資計画への影響に注目です。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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04/17 08:27
【野村の朝解説】米国市場は株安・ドル安・債券高(4/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国市場ではハイテク関連を中心に株価が下落、NYダウは前日比-1.73%、S&P500は同-2.24%、ナスダック総合は同-3.06%となりました。パウエルFRB議長が関税政策の影響が不透明な中では様子見を続ける姿勢を改めて強調し、市場安定のためにFRBが介入する「Fedプット」を否定したことが嫌気されました。また、トランプ政権による中国向け半導体輸出規制の強化や大手半導体製造装置メーカーの受注残高が市場予想を下回ったことも市場センチメントを悪化させました。米ドルはG10通貨に対して全面安となり、対円では141円台まで米ドル安円高が進行しています。 相場の注目点 当面の注目点の第1はFRBの金融政策姿勢です。トランプ関税の発動以降、米国で高まるスタグフレーション(景気減速下でのインフレ高進)リスクに対して、過半のFRB高官は長期インフレ期待の安定を重視して利下げに慎重な姿勢を示しています。そんな中、4月14日に、これまで政策議論に先導してきたウォラー理事が利下げに前向きな姿勢を示したことが注目されました。昨日のパウエル議長の発言は市場の政策姿勢転換期待を挫く結果となり、株安につながったと見られます。第2は日米間の関税交渉です。トランプ大統領も出席の意向を示しており、関税だけでなく軍事支援の費用やドル高の是正などの為替政策も議論の俎上に上がる可能性があります。第3は日銀の金融政策です。野村證券ではトランプ関税の景気下押し圧力、財政政策とのバランス、26年春闘での賃上げ機運の低下を焦点に金融政策見通しを、26年1月に0.75%への利上げへ変更しました(従来は25年7月と26年1月に利上げ) 。市場の一部では「米ドル高是正措置として、日銀の国債保有額の削減ペースを加速するのでは」との見方があり、長期金利上昇に繋がっているようです。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年4月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点