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07/13 09:00
【マーケット解説動画】日経平均、7月12日の大幅安を受けて(7月12日引け後収録)
テクニカル展望(7月12日引け後収録) 今週の「テクニカル展望」動画では、弊社の岩本ストラテジストが 、チャート分析の観点から、今後の展望や注目点について15分ほどで解説しています。今後の投資の参考にご覧ください。 今週の収録内容 「日経平均、7月12日の大幅安を受けて」 1.1週間の振り返り2.日経平均株価:日足3.ドル円相場:日足・週足4.来週の注目イベント (解説)野村證券投資情報部ストラテジスト 岩本 竜太郎 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、NOMURAアプリではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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07/13 07:00
【来週の予定】バイデン氏撤退論の行方は?共和党は副大統領候補に注目
来週の注目点:FRB高官発言、中国の重要統計とECBの政策理事会 米国では6月27日の大統領候補者討論会以降、民主党内でバイデン大統領に対して大統領候補から辞退することを求める声が高まっています。一方、共和党は7月15日(月)~18日(木)にミルウォーキーで全国大会を開催し、トランプ氏を正式に同党の大統領候補に指名します。市場の関心は副大統領候補に集まっています。 今週も15日(月)のパウエルFRB議長のインタビューを始め、多くのFRB高官の講演等が予定されています。6月FOMC(米連邦公開市場委員会)では24年中は1回の利下げ見通しが中央値となりましたが、議長、副議長やNY連銀総裁など執行部メンバーの多くは年内2回の利下げを予想していると見られることから、1回以下の利下げを予想したと想定されるFOMC委員の発言に変化がないかが注目されます。 今週発表される米国の経済指標では15日(月)の7月NY連銀製造業景気指数、16日(火)の6月小売売上高、17日(水)の6月住宅着工・建設許可件数、6月鉱工業生産、18日(木)の7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が注目度の高い統計です。 中国では15日(月)~18日(木)に中長期の政策を議論する三中全会が開催されます。また、同15日には4-6月期実質GDP成長率を筆頭に、6月小売売上高、鉱工業生産、1-6月固定資産投資と重要度の高い統計が発表されます。消費の行方に加え、不動産市況に好転の兆しが確認できるかが注目点です。 ECB(欧州中央銀行)は18日(木)に政策理事会を開催します。金融政策は据え置きが予想されます。ラガルド総裁は追加利下げに慎重な姿勢を示しており、データ次第との見解を強調することが予想されます。 日本では17日(水)の6月訪日外国人客数、19日(金)の6月全国消費者物価指数が注目度の高い統計です。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年7月12日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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07/12 19:00
【特集】野村證券・池田雄之輔「日経平均株価一時42,000円超えの背景にある3つの理由」
文/斎藤 健二(金融・Fintechジャーナリスト) 2024年7月初旬、日本株は大きく上昇し、連日のように最高値を更新する相場となりました。7月4日にはTOPIX(東証株価指数)が史上最高値を更新し、7月11日には日経平均株価が終値で42,224円となり、初めて42,000円台を突破しました。ただし、7月12日には反落し、日経平均株価が1,000円超の値下がりになるなど、上下動が激しくなっています。 日経平均株価は2024年2月に34年ぶりの最高値を更新したものの、4月から6月にかけて足踏みしてきました。再び上昇した背景には何があるのでしょうか。野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。 2024年に入ってから、日本株の動きはダイナミックでした。年初に日経平均株価は33,000円からスタートし、41,000円まで一気に上がりました。その後は上がった分の半分ほど下げて37,000円台まで下落しましたが、また上昇し、7月11日終値では42,000円を超えるまでに回復しました。 このような急激な上昇を見ると、「高すぎる、今のうちに売却したほうがいいんじゃないか」「株価が高くて今さら投資を始められない」という“高所恐怖症”になる方もいるかもしれません。しかしこれは一過性の強さではなく、日本経済の構造的な変化の反映だと考えています。 日経平均上昇の背景にある3つの要素 日本株の急上昇の背景には、3つの重要な要素があると考えます。1つ目はデフレ脱却、2つ目は脱中国の動き、そして3つ目がコーポレートガバナンスの改革です。 1つ目のデフレ脱却は、日本株が昨年来これだけ強くなってきている最大の理由だと考えています。日本経済は90年代以降、長くデフレに苦しんできました。バブル崩壊後、経済は縮小均衡にあり、企業が値上げに踏み切れない世界を長く経験してきたのです。それが今、30年ぶりにデフレ脱却に向かっています。 2つ目は、グローバルな投資家が中国からお金を逃がそうとしている、「脱中国」とも呼べる出来事です。世界の投資家の間で、中国がデフレに突入するのではないかという警戒感が特に昨年から強まっています。中国がかつての日本のように不動産バブル崩壊を機に、長期停滞に陥るのではないかという不安から、中国株に投資していたお金の逃げ場所として日本が選ばれやすくなっているのです。 3つ目は、コーポレートガバナンスの改革です。2023年3月、東京証券取引所から上場企業に向けて、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をするようにという要請がありました。これが予想以上に実のある改革につながっています。 この3つの要素が同時に進行していることが、日本株の強さを支えているという見方をしています。 6月にかけてなぜ株価の調整が起きたのか では、6月にかけてなぜ株価の調整が起きたのでしょうか。 まず、デフレ脱却に関しては、良いニュースがいったん出尽くしたという状況だったと思います。3月中旬に春闘の第1回集計が出て、5%を超える賃上げがされたことがわかりました。さらに、日銀が3月の決定会合でマイナス金利を解除するという歴史的な決定をしました。これらのイベントが、デフレ脱却の象徴的なターニングポイントとなり、ある意味で「良いところは出尽くした」という捉え方をされ、利益確定も進んだと見ています。 次に、中国に関しては、3月から4月にかけて、意外にも中国経済が回復するのではないかという見方が出てきました。春先に経済指標が一時的に上向いたこともあり、中国株が買われる時期がありました。そのため、それまで日本に逃げ込んでいたお金の一部が中国に戻るという動きが見られました。 最後に、コーポレートガバナンスについても、一旦の出尽くし感が出ていました。5月の連休前後に企業の決算発表がありましたが、自社株買いの発表など良いニュースがある一方で、2024年度の業績見通しについては増益を見込まない企業が多く、やや保守的な印象が強まりました。 さらに、日銀の金融政策に関する不透明感も株価の重石となりました。6月14日の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額を検討すると発表があり、これも市場に不透明感をもたらしました。 懸念払拭し再上昇始めた日本株 では、ここに来てなぜ日経平均は再び上昇に転じたのでしょうか。実は、先ほど述べた3つの要素自体は変わっていません。それぞれの要素について、市場の見方が再び前向きになったことが大きいと見ています。 まず、デフレ脱却に関しては、日本のインフレの持続性や賃金の強さが改めて認識されました。今回のインフレが始まった当初は、輸入物価の上昇によるコストプッシュ型のインフレだという見方もありましたが、人手不足と相まって賃金上昇が起こり、より持続的なインフレに変化しつつあります。象徴的なのは、輸入物価が22年9月にピークアウトし、今年6月にかけて8.8%低下しているのですが、同じ間に国内企業物価は5.9%上昇しています。このような「ワニ口現象」は日本が今まで経験しなかった姿です。7月1日に公表された日銀短観でも、全規模・全産業の販売価格見通し(1年後)が2.8%と、2四半期連続で上昇し、値上げカルチャーの浸透を示唆しました。アナリストが追っている個別企業の動向を見ても、値下げを再開するところは少なく、インフレの定着が進んでいることが分かってきました。 次に中国については、米国大統領選におけるトランプ元大統領の再選の可能性が再び意識され始めました。日本時間の6月28日に行われたテレビ討論会の「直接対決」でバイデン大統領の健康不安が高まったことが一つの転機になっています。トランプ氏は対中国で厳しい政策を取ることが予想されるため、再び投資マネーの「脱中国」が注目され始めました。加えて、中国経済の弱さも顕在化し、結果として日本市場の相対的な安定性が再評価されることにつながっています。 コーポレートガバナンスについては、企業業績の保守的な見通しは日本企業の特徴であり、それほど悲観する必要はないという見方に落ち着いてきました。むしろ、今年の自社株買い設定額は6月までで9兆円というレベルになっており、2023年までの水準から約5割増という異次元の増加をみせています。これまでと異なり、株価上昇局面でも自社株買いが積極化しているということは、企業がガバナンス改革に真摯に取り組んでいることの表れと言えます。この点は海外の長期投資家からも高く評価されています。 円安は株価を押し上げた 円高の心配は? 為替市場の動向も株価を後押ししました。円安が進行したことで、日本企業全体としては業績にプラスの影響がありました。ただし、以前のように極端な円安依存ではなく、為替に対する耐性が高まっているのも特徴です。例えば、10円の円安で利益が3%程度押し上げられる効果があります。現在の企業の為替前提は143円程度ですが、そこまで円高が進むと想定した上でも、今年度と来年度は8%台の増益が確保できると試算しています。多少の円高には十分耐えられる体質になっています。 野村では、今後為替は米国の緩やかな金利低下とともに円高ドル安傾向に動くと予想しています。24年12月は148円、25年12月は140円という見立てです。逆に、円安がそろそろ天井に近づいているとみる日本側の理由もあります。例えば1ドル170円を超えるような水準まで円安が進むと、インフレ期待が2%を超える可能性が出てきます。そうなると、日銀も追加利上げを急ぐ必要が出てくるため、「日銀が放置してくれる円安」には限界が訪れると見ています。 為替レートが円高方向に進んだとしても、必ずしも株価の下落に直結しないと考えられます。過去、円高は、世界経済の減速が原因であることが通例でしたが、今回予想する円高は、米国のインフレが明確に沈静化することによる、利下げ転換が主因となりそうです。世界景気の基調は崩れないまま緩やかな円高へと移行するシナリオが考えられます。ドルベースで運用している海外投資家にとってはベストの「円高・株高シナリオ」が実現する可能性は高いと見ています。 2026年3月末の日経平均株価予想レンジの上限は48,000円 以上の理由から、現在の42,000円台という水準は、決して違和感のあるものではないと考えています。ただし、今後のリスクについても考慮する必要があります。主なリスク要因としては、米国の大統領選挙や世界経済の減速などが挙げられます。 まず、米国大統領選挙について、一時的に市場が荒れる可能性があります。特に、トランプ氏の政策は減税期待など株式市場にとってプラスの面もありますが、対中政策に関する不透明性が最大の問題です。 世界経済、特に米国経済の動向も重要です。現在のメインシナリオは景気後退(リセッション)に陥らずソフトランディングすることですが、リセッションのリスクも完全には否定できません。特に注意すべきは米国の消費動向です。これまでコロナ禍で蓄積された貯蓄による消費の下支えがありましたが、その効果も徐々に薄れつつあります。米国の消費が予想以上に弱くなれば、日本の輸出企業にも影響が出る可能性があります。 こうしたリスクにも十分注意しながらも、先に挙げた3つの要素に関する前提が大きく崩れない限りは、株価は上下動を繰り返しながら、基調としては上がる方向を見ています。今の状況で、「株価が高すぎる」と過度に恐れる必要はないでしょう。 野村證券では2025年3月末の日経平均株価の予想レンジを36,000円から44,000円とみています。今の株価水準から考えると、このレンジの上限に達する可能性があると見ていいでしょう。2026年3月末の予想レンジの上限は48,000円としています。日本企業の構造的な変化と、それに伴う持続的な成長への期待が、今後の株式市場を支える大きな要因となりそうです。 野村證券 市場戦略リサーチ部長 池田 雄之輔 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「モーニングサテライト」に定期的に出演中。 ご投資にあたっての注意点
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07/12 18:00
転換期の人工光型植物工場 - ①わが国における人工光型植物工場の歴史 -
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・アドバイザー 伊地知 宏 (2024年7月5日) はじめに 近年、人工光型植物工場への関心が世界規模で広がりを見せている。 わが国では世界に先駆けて1980年代から人工光型植物工場への研究開発が始まり、他国に先んじた歴史と経験を有しているが、植物工場分野全般では、オランダが長きにわたり太陽光型植物工場(環境制御型大規模施設園芸)分野のフロントランナーとして君臨し、世界的には人工光型植物工場への関心は決して高いとは言えない状況であった。 2010年代に入り、海外で人工光型植物工場への関心は急激に高まり、2013年以降、欧米で人工光型植物工場の新興企業が勃興しはじめ、2017年以降には大規模な資金調達に成功した企業が続出した。また近年では中国やオランダ、イタリアなどでも研究熱が高まっている。 人工光型植物工場への関心の高まりの背景には、今後予想される世界的な人口増加による食料需給の逼迫懸念、環境負荷増加への問題意識の高まり、異常気象や世界的な農地・労働力の不足による食料生産の不安定化懸念などがある。 しかしながら、世界的な投資の過熱傾向が見られる中、人工光型植物工場事業は投資家の期待に沿った十分な実績に結び付いているとは言い難い。また、わが国においても採算の見通しが立ち始めて10年程度と日が浅く、依然として厳しい経営状況を強いられている事業者も見られ、その後の環境変化の影響もあり、決して楽観視できる状況下にはない。 本レビューでは人工光型植物工場を3回にわたってシリーズ化し、①「わが国における人工光型植物工場の歴史」を振り返り、②「これまでのビジネスモデルを検証し、現状認識と課題」を明らかにしたうえで、③「今後の発展の可能性」を考察する。 1.わが国における人工光型植物工場の起源、進化 野村證券フード&アグリコンサルティング部(旧野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱、以下F&ABC部)では、わが国の人工光型植物工場の進化を「開発期」(第一世代:1980年代~1990年代)、「スタートアップ勃興期」(第二世代:2000年代)、「他産業への普及期」(第三世代:2010年代)と定義してきた[1]。本稿では、第三世代の時期を細分化し、「市場拡大期」(2009~2013年)、「技術進化期」(2014~2020年)、「環境変化対応期」(2021年以降)と定義し、それぞれの時期を検証することで今後の見通しにつなげたい。 最初に、わが国における人工光型植物工場の起源と歴史について振り返る。人工光型植物工場は、1970年代から研究が始まり、1980年代に入ると商業生産を開始する事業者が現れ始めた。この時期は高圧ナトリウムランプなどが主な光源であった[2]。その後、1990年代には蛍光灯が活用されはじめ、2000年代に入ると光源の進化により多段栽培が可能になり、面積生産性が向上した。さらに、2010年台前半のLED価格全般の顕著な低下や2015年前後から始まった白色LEDのコストパフォーマンス向上[3]などが相まって、蛍光灯からLEDへの転換が進み、進化を続けながら現在に至っている。 野村證券F&ABC部の調べでは、1990年以降に稼働を始めた人工光型植物工場は、工場ベースで410件確認されている[4]。本レビューでは、410件のうち開始時期が特定できる404件を対象とし、さらに葉菜類を生産している382件を対象に分析を試みたい(図表1参照)。 人工光型植物工場の開発期である1990年代は、栽培システムの種類は限定的であり、日産1,000~3,000株の規模の植物工場が大半であった。 2000年代に入り、日産3,000株以上の事業者が現れ始め、日産1万株以上の事業者も登場したが、件数的には顕著な変化は見られなかった。 業界の変化の契機となったのが、2009年度の農林水産省と経済産業省の補助金である[5]。その後押しにより、2009年以降人工光型植物工場の生産開始件数が伸長した。しかしながら、2009年から2013年までの「市場拡大期」に新設された施設の6割以上は日産500株未満であり、多くの施設は実験栽培、店産店消などを目的にした小規模な水準にとどまっていた。 日産3,000株以上規模の施設の比率が高まりだしたのは2013年以降である。日産3,000株ならば年間で1億円前後の売上が期待されたため、この時期に商業生産への意識が生じ始めたと言えるだろう。 「技術進化期」と定義した2014年以降は、日産1万株規模の人工光型植物工場が毎年建設されるようになった。この時期は、栽培技術の進化に加えて蛍光灯からLEDへの転換が進み、照明や空調の効率が高まり、労働生産性の上昇により人件費も低減、物流費低下への工夫も相まって、採算性が向上した。 2021年以降の「環境変化対応期」に入ると、人工光型植物工場を取り巻く経営環境は厳しくなった。最大の逆風は光熱費の上昇であり、事業者の経営を大きく圧迫した。加えて最低賃金の上昇による人件費の増加、物流費や資材価格、建築コストの上昇が重なり、2020年以降はほとんどの事業者の採算性が大きく悪化した。2023年以降、光熱費の上昇は一服しているものの、他のコスト要因(人件費、物流費、資材費、建築費)に関しては、依然として厳しい環境が続いている。 図表1 国内人工光型植物工場事業者の開業動向 (注1)2024年は4月30日時点。(注2)小売向けは1株80g、業務用は1株150gで計算。(出所)日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」、公開情報、各社HP等より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.海外の動向 次に、海外の人工光型植物工場への取り組みを俯瞰することにより世界の潮流を理解し、グローバルに人工光型植物工場の状況を確認したい。 欧米で人工光型植物工場への関心が高まったのは、2013~2016年頃である。米国の人工光型植物工場でビッグ4と称されたAeroFarms、Bowery Farming、Plenty、80Acres Farms[6]のうち、AeroFarmsを除く3社が事業を開始したのが2013年から2015年の間であり、2017年から2019年にかけて4社はいずれも累計1億USドル以上の資金調達を行っている。4社以外にも、Infarm(ドイツ)や日系のOishii Farm(米国)などが数億USドルの資金調達を達成し[7]、2022年には老舗スタートアップのKalera(米国)がナスダック市場に上場を果たした。 特に2021年にかけて巨額の資金が様々な業種のスタートアップに向かい、人工光型植物工場事業者も例外ではなかった。しかし、2022年に入り米欧の金融引き締めの影響で、環境が大きく変わり苦境に陥る事業者が続出した。行き過ぎた期待先行のひずみが顕在化したと言えるだろう。 上記企業ではAeroFarms、Infarm、Kaleraなどは、いずれも2022年までは新工場の建設など事業を拡大していたが、2023年には180度反転し、3社とも法的整理の申請(グループ会社申請を含む)に追い込まれた[8]。 このように、海外での巨額の投資が必ずしも結実しているとは言えず、今後も淘汰が進む可能性が高い。一方で、Oishii Farm、80Acres Farms、ZERO(イタリア)などが逆風下で業容を拡大し[9]、中国のSANANBIOも桁違いの投資により開発を進展させていると考えられ、注視が必要であろう。 わが国は、人工光型植物工場に関して2015年頃までは先行者の優位性を保持していたものの、海外の勝ち残り企業が資金力を背景に技術を高め、グローバルに攻勢を強める可能性は十分に考えられ、わが国の事業者も一層の技術力・経営力の強化が必要であろう。 3.国内人工光型植物工場での栽培品目、特色 対象とした410件の人工光型植物工場の栽培品目は、葉菜類のみ366件、葉菜類とイチゴ6件、イチゴのみ14件、葉菜類とその他15件、その他のみ8件、葉菜類・イチゴ・その他すべて網羅1件となっている(図表2)。 国内における人工光型植物工場での栽培品目はほとんどが葉菜類である。レタス類が大半で、ベビーリーフやハーブが一部並行している構図となっている。イチゴに関心を示す事業者は多いものの、一部の事業者が相応の規模で取り組んでいる以外は小規模な事業者がほとんどである。米国では、Oishii Farmがイチゴの量産化に成功しており、世界各国でわが国以上にしのぎを削っている感がある。今後グローバルに競争が高まることが予想される。 レタス類、イチゴ以外の品目で、本格的に事業化に成功した事例は限定的である。エディブルフラワー(食用花)に挑戦している事業者は複数見られるが、規模的には小規模にとどまっている。 図表2 人工光型植物工場における生産物別工場数分布(N=410) (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 栽培の安定性や収支を考慮すると葉菜類(特に非結球レタス[10])への傾倒は理に適っていると言え、非結球レタスの市場もまだまだ拡大余地が考えられる。 しかし、国内向け非結球レタスの市場だけならば、数年後には頭打ちになる可能性があり、人工光型植物工場が業界として大きく飛躍するには、栽培品目の拡充が最大のポイントになるであろう。イチゴや医療用大麻、ワクチン原料植物などへの関心が高まっているが、現時点で栽培・事業化が困難と考えられる品目をいかに開発して拡大するかが今後の成長を左右するであろう。 4.レタスの市場規模と人工光型植物工場の可能性 2024年時点での、わが国における人工光型植物工場による葉菜類の生産能力は日産約94t(年産約34,500t)と推定される。卸値を1,000円/kg、稼働率を85%と仮定すると、2024年の販売額は年間約293億円と予想される。日産1万株以上の規模[11]で稼働中の工場は37件(30社)、生産能力は日産約68t(年間約25,000t)と推定され、当該30社のシェアは72%に達する。また、連携関係がある企業群を一体と見なすと、28工場が主要4グループに含まれ、その生産能力は年産約20,100t(シェア約58%)となり、寡占化が進んでいると推察される。 国内のレタスの総出荷量は50万t台前半で足踏みし、総産出額(生産者出荷ベース)は765億円(2022年)と、2017年に記録した1,068億円をピークに減少している。2018年以降の価格低下が主因だが、結球レタス生産資源の減少傾向も相まっている。露地栽培の担い手の減少は以前から懸念されていたが、2018年以降で作付面積が約9%減少しており、懸念が現実化しつつあると考えられる(図表3)。 図表3 レタスの作付面積と出荷量の推移 (出所)農林水産省「作物統計」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 結球レタスの生産が頭打ち傾向の一方で、非結球レタス市場は拡大しており、出荷量は2004年の48,973tから2022年には71,900t(レタス全体519,900tのうち約14%)と47%増加している(図表4)。足元でもレタス全体の生産量は微減となっている中で、非結球レタス全般、人工光型植物工場産非結球レタスのシェアが拡大していることがうかがえる[12](図表5)。 図表4 レタス出荷量の推移 図表5 レタス出荷量の現状推定 (出所)農林水産省「作物統計」、「地域特産野菜生産状況調査」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 レタスの露地栽培においてはワーカーの確保に苦慮している事例を耳にすることが増えており、今後露地栽培レタスの生産が底打ちして供給が増加することは容易ではない、と予想される。したがって、(太陽光型、人工光型とも)植物工場産の非結球レタスが結球レタスを代替して拡大する可能性は十分に考えられる。 加えて非結球レタスに関しては、2015年頃から加工用(業務用)の需要が立ち上がっている。加工用(業務用)レタスの用途はレストラン・ホテル・テーマパーク向け、中食向け、スーパー・百貨店・ベーカリーなどの総菜向け、コンビニ及びベンダー向けなどが挙げられる。コロナ禍には、レストラン・ホテル・テーマパーク向けや、航空向けなどの比率が高かった事業者が特に深刻なダメージを受けたが、コロナ禍以前を上回る回復が期待され始めた。 コンビニ及びベンダー向けは、低菌数で日持ちの長さが訴求ポイントであったが、菌数のバラツキやコストがネックとなっていた。しかし、近年改善が進みつつあり、品質が安定した製品への需要は着実に拡大している。コンビニの店舗数を56,500件、1店舗当たりのレタス使用量を1.2kg/日と仮定すると、コンビニの業務用レタス需要だけで年間24,750tに達する。 非結球レタスの場合、生食用と加工用の割合は4:1~5:1と推定される[13]ので、現在の人工光型植物工場による推定出荷量28,600tのうち加工用は5,000t前後と推定される。コンビニ以外の用途も含めて今後の需要拡大余地は大きい。 5.人工光型植物工場の参入と撤退動向 現在、葉菜類栽培で稼働している人工光型植物工場の施設数は280~300件程度と推定する。前述の通り、葉菜類の栽培に取り組んで開始時期が判明している事業者は382件だが、事業継続状況は図表6のように、「事業継続」265件、「撤退」83件、「不明」34件となっている。 図表6 人工光型植物工場(葉菜類)の事業継続動向 (注1)2024年は4月30日時点。(注2)一部野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部の推定を含む。(出所)日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」、公開情報、各社HP等より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 「開発期」及び「スタートアップ勃興期」に生産開始した事業者は半数以上が撤退し、「市場拡大期」に生産開始した事業者も約3割が撤退している[14]。 撤退の理由としては、①生産ノウハウやコスト管理が不十分で数年で撤退を決断する、②生産ノウハウやコスト管理の改善に努めたものの(補助金の制約などの影響もあり)10年程度で撤退する、③外部環境の悪化で経営が困難になり撤退する、④生産設備が経年で陳腐化し栽培効率が相対的に低下する、⑤試験的意味合いが強く、当初から長期間の継続を想定していなかった、などが主因であろう。 野村證券F&ABC部調べでは、2020年以降で撤退した事業者の生産規模は年間約4,000tに相当する。生産ノウハウの不足、光熱費及び人件費の上昇、コロナ禍による業務用需要の減少などによる経営悪化が主因と考えられ、近年の経営環境の悪化が淘汰を促進しているように感じられる。光熱費の上昇や業務用需要の減少は足元で改善されているものの、苦戦している事業者は少なくない。今後、非結球レタスを中心とした人工光型植物工場産葉菜類の堅調な需要は予想されるものの、生産ノウハウや経営力が不十分な事業者には厳しい環境が続くだろう。ノウハウやコスト競争力を有するか否かによって優勝劣敗の色分けが一層明確になると予想される。 実際、2020年前後には20年以上事業を継続してきた事業者が撤退する事例が散見され、事業環境の厳しさが表れている。「市場拡大期」、「技術進化期」の2010年から2015年にかけて多くの新規参入が見られたが、その時期に参入した事業者は10年前後が経過し、今後撤退件数が増加する可能性を秘めている。 寡占が進んでいる国内の主要グループもすべてが盤石な経営体制が確立されているわけではなく、業界再編の可能性もあり、どの企業(グループ)がイニシアチブを取るかは予断を許さない。 結び 当レビューのシリーズでは、人工光型植物工場の過去、現在を検証したうえで、未来の可能性を探ることを目指している。 今回のレビューでは、国内外での取り組みの歴史と海外の現状把握から、人工光型植物工場の将来を展望する足掛かりを構築することを目的とした。 次回のレビューでは、人工光型植物工場の収支状況を検証し、優良な経営に必要な要素を検討する予定である。「人工光型植物工場の黒字化は容易ではない」というのが一般的な見解であろうが、その要因を時系列で深掘りすることで、持続的な人工光型植物工場経営の一助となることを目指す。 [1] 「2030年のフード&アグリテック」(佐藤光泰・石井佑基著)参照。 [2] 高圧ナトリウムランプ以外にはメタルハライドランプなどが使われた。 [3] 青色LEDへの黄緑蛍光物質のコーティング等の技術進化により、発光効率の向上と価格低下がもたらされた。 [4] 生産物が、苗、スプラウト、もやし、きのこなどの事業者は含んでいない。また、同一の事業者が複数の工場を建設した場合は別々にカウントし、事業譲渡やM&A等で経営母体が代わった場合は、「前事業者が撤退し、新事業者が開始」と見なしている。件数は野村證券F&ABC部が把握しているデータに基づいているため、国内の施設すべてが網羅されてはいない。生産規模、開始時期、撤退時期など諸データには、一部野村證券F&ABC部の推定が含まれる。 [5] 農林水産省が97億円、経済産業省が50億円の補助金を予算化した。 [6] 4社目としては、80Acres FarmsではなくKaleraが挙げられたこともある。 [7] Infarmは(円換算)700~800億円、Oishii Farmは(円換算)約255億円(2021年にシリーズAで約55億円、2024年にシリーズBで約200億円)を調達。 [8] NOMURAフード&アグリビジネス・レビュー Vol.2 「フード&アグリテック・スタートアップのグローバル事業環境と今後の展開シナリオ」参照。 [9] 一例として、Oishii Farmは、2017年にプロトタイプの植物工場を初稼働、その後数回の拡張や新設を経て、2022年に大規模人工光型植物工場を建設。2024年にはニュージャージー州の22,000㎡の敷地に「メガファーム」を建設し、事業を大きく拡大している。 [10] フリルレタス、グリーンリーフ、ロメインレタス(コスレタス)、サニーレタス(レッドリーフ)、サンチュ、サラダ菜などが人工光型植物工場で栽培されている主な品種であるが、サラダ菜以外は非結球レタスである。ロメインレタスやサラダ菜は半結球レタスと分類されることがあるが、統計上は、ロメインレタスは非結球レタスに含まれ、サラダ菜は含まれない。 [11] 日産1万株もしくは日産800kg以上。 [12] 野村證券F&ABC部では、人工光型植物工場の国内総生産能力を年間34,500tと推定。現状の出荷量は生産能力の85%と仮定した。 レタスの出荷量は2022年実績519,900t、及び2003年から2022年までの平均値523,170tより、2024年を520,000tと推定。 非結球レタスの出荷量は2022年実績71,900t及び近年のトレンドより、2024年の出荷量を74,000tと推定。 [13] 農林水産省「地域特産野菜生産状況調査」データに基づいて野村證券F&ABC部が推定。 [14] 「市場拡大期」に生産開始した事業者の撤退率は28%だが、動向不明先を考慮すると撤退率は3割を超えていると考えられる。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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07/12 16:04
【野村の夕解説】米国ハイテク株安を受け、日経平均株価1,033円安(7/12)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 米国で発表された6月CPI(消費者物価指数)は市場予想を上回るインフレ鈍化を示しました。これを受けてFRB(米連邦準備理事会)の9月利下げ観測が強まり、米国債券相場は上昇(利回りは低下)しました。金利低下の追い風を受けながらも、株式市場ではハイテク株や半導体株は高値警戒感から下落し、ナスダック総合指数は前日比ー1.95%と8営業日ぶりに反落しました。また、為替市場では政府・日銀が円買い・米ドル売りの為替介入に踏み切ったとの見方が広がり、一時1米ドル=157円台と急速に円高米ドル安が進行しました。米国ハイテク株下落の流れを引き継ぎ、本日の日経平均株価は前日比555円安の41,668円で始まりました。主力ハイテク株に加えて前日好決算を発表したファーストリテイリングも下落し、日経平均株価を押し下げました。一方で、円高でも好調な企業業績への期待は維持され、東証プライム市場の約6割強の銘柄は上昇し相場を下支えしました。寄り付き後も主力株は下げ幅を拡大し続け、日経平均株価は前日比ー1,033円の41,190円と大幅に反落して本日の取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日米国では6月PPI(生産者物価指数)が発表されます。他にはJPモルガン・チェースやシティグループなどが2024年4-6月期の決算発表を予定しています。15日(月)日本は祝日で休場となります。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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07/12 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価、7月に入り大幅上昇し、史上初の42,000円台に
※2024年7月11日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 一部テクニカル指標に過熱感みられるも、長期的には上昇余地あり 今週の日経平均株価は、米国株が堅調に推移したことや円安進行を受けて大幅上昇し、11日まで3日連続の史上最高値更新となりました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、6月26日に5月20日高値(39,437円)を超え、チャートの好転が鮮明となりました。 7月に入り株価は史上最高値を更新し、11日には史上初の42,000円台にのせました。急騰した反動をこなしつつ、この先、今年3月以降の押し幅の倍返し水準(44,708円)や心理的フシの45,000円などを目指す動きが期待されます(図1)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1直近値は2024年7月11日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、これまでの大幅上昇で一部テクニカル指標は短期的な過熱感を示唆する水準にあります。目先の上値が重く、3月高値(ザラバベース:41,087円)を割り込んで押しを入れる場合は、心理的フシの4万円の水準が下支えとなるか注目されます(図2)。 (注1)直近値は2024年7月11日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 次に月足チャートで中長期的な動きを確認してみましょう。新値累積数値という新高値(安値)の更新回数をカウントした数値をみると、今年7月高値は、起点から9回の高値更新となっています。過去の長期上昇トレンド(図3:①~③)では11~21回の高値更新となっており、同局面と比較した場合、この先も上昇余地があると考えられます。 (注1)直近値は2024年7月11日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)2023年12月22日から新値累積数値の起点を天井形成時の高値・底値形成時の安値とした。(出所)日本経済新聞社、各種資料より野村證券投資情報部作成 米国株、年前半大幅上昇なら年後半も堅調 2024年、早くも半年が過ぎ、既に年後半に突入しています。年前半の米国主要指数の上昇率は、NYダウこそ3.8%に留まったものの、S&P500指数は14.5%、ナスダック総合指数は18.1%の大幅上昇となりました。 1950年以降の米国株(S&P500指数)について、年前半大幅上昇だったケースをみると、年後半も堅調な動きとなるケースが多く見られました(図4)。特に1990年以降において、年前半に10%以上上昇した10回のケースについては、年後半もすべてのケースで上昇し、上昇率は平均で10%を超えています。尚、S&P500指数が大幅上昇した年においては、ナスダック総合指数も年後半に大幅上昇となっています。これらアノマリーを参考とすれば、2024年後半にも期待できそうです。 (注1)左図の直近値は2024年6月末。1950年~2023年のデータに基づく。ケース別月間騰落率の平均値を基に算出。右図の年前半は昨年末~6月末、年後半は6月末~12月末。(出所)S&Pダウジョーンズ・インデックス社より野村證券投資情報部作成 さて、ナスダック総合指数は、これまで大幅上昇となり、7月に入ってからも史上最高値の更新が続いていますが、さらなる上昇余地はあるのでしょうか。チャート面で見れば、上昇余地が残っていると考えられます(図5)。リーマンショック以降の過去5回の中長期上昇局面(図5中:①~⑤)のうち、コロナショックで高値形成となった局面(同:④)を除けば、株価は安値から1.9~2.3倍となっていましたが、今回はまだ1.8倍の上昇に留まっています。この先、急騰の反動はみられる可能性がありますが、上昇基調自体は続くと考えられます。 ((注1)直近値は2024年7月10日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む。(出所)ナスダックより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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07/12 08:23
【野村の朝解説】米CPI発表後、ドル円は一時157円台(7/12)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 11日の米国市場は、米6月CPI(消費者物価指数)の発表をきっかけにリバーサル的な動きとなりました。ドル円は年初の1ドル=141円台の水準から円安基調が継続しましたが、CPI発表直後に161円台半ばから、一時157円台後半まで急速に円高が進みました(執筆時点では158円台後半)。為替介入について神田財務官は、慣例通りコメントしない、と述べました。 米6月CPIは、前月比-0.1%と、市場予想(同+0.1%)や5月実績(前月比横ばい)を下回りました。ガソリン価格が同3.8%下落したほか、航空運賃や中古車価格も下落しました。CPIを受け米10年国債利回りは4.30%から一時4.18%程度まで低下しました。米国株式市場では、年初来で大型株に対して出遅れていた中小型株指数のラッセル2000が3.57%高、ダウが小幅続伸した一方で、大型テクノロジー株の反落などによりS&P500とナスダック総合は反落しました。 相場の注目点 12日のJPモルガン・チェースを皮切りに、2024年4-6月期の米国企業決算発表が本格化します。米大手銀行については、2024年1-3月期の決算は、純金利収益がやや市場予想を下回り、より変動の大きい投資銀行部門の手数料や市場部門の収益が市場予想をやや上回るケースがみられ、今回もそれらの状況が注目されます。また、経済がコロナ禍から正常化する過程で上昇してきた、クレジットカードなどの消費者ローンの貸倒率の水準についても景気循環の点から注目されます。 23日のビザの決算からはEコマースや旅行消費の状況が、また、7月後半以降のマイクロソフトやアルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、アップルなどのテクノロジー企業の決算ではAI関連事業の収益化の進捗が注目されます。 (投資情報部 竹綱 宏行) (注)データは日本時間2024年7月12日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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07/11 16:01
【野村の夕解説】日経平均株価は初めて42,000円を突破 米株高が追い風(7/11)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前日の米国株式市場では、パウエルFRB議長が米下院で「インフレ鈍化については幾分自信がある」と証言したことで、米国の早期利下げ期待の後押しとなり、主要3指数は揃って上昇しました。米株高が追い風となり、日経平均株価は、前日比511円高の42,343円で本日の取引を開始しました。個別では、半導体関連銘柄で構成される米国のSOX指数が前日比+2.42%と大きく上昇したことを受けて、東京エレクトロンやレーザーテックなどの半導体関連銘柄が上昇したほか、ファーストリテイリングやソフトバンクグループといった高PERな成長株も上昇し、日経平均株価を押し上げました。 ただし、本日、米国で6月消費者物価指数(CPI)が発表されるため、この結果を見極めたいとする投資家心理から寄り付き後の上値は重く、その後は42,250円を挟んだレンジでの推移となりましたが、前日比392円高の42,224円と初めて節目の42,000円を突破し、本日の取引を終了しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では、11日、6月米消費者物価指数(CPI)の発表が控えます。米国の金融政策を見通すうえで、食品・エネルギーを除くコアCPIの伸び率が鈍化するのか、注目されます。経済統計以外では、アトランタ連銀のボスティック総裁やセントルイス連銀のムサレム総裁といったFRB高官の講演等が予定されています。 (野村證券投資情報部 金井 一宜) ご投資にあたっての注意点
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07/11 08:18
【野村の朝解説】9月利下げ期待が継続し、米国株は上昇(7/11)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 10日の米国株式市場では、主要3指数が揃って上昇しました。半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)が寄り前に発表した24年4~6月期の売上高が前年同期比40%増と市場予想を上回ったことを受けて、半導体関連を中心とした情報技術セクターが相場を牽引し、小確りで寄り付きました。米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長による米下院の議会証言は、前日の米上院の議会証言と概ね同様の内容で、サプライズはありませんでしたが、質疑応答で「インフレ鈍化については幾分か自信がある」と発言したことが好感されました。9月利下げへの期待が継続し、相場全体を押し上げました。 相場の注目点 引き続き米国の金融政策に注目が集まります。9日及び10日に行われたパウエルFRB議長による半期に一度の議会証言では、インフレだけでなく、景気の失速にも目を配る必要性を強調しました。利下げ時期に関する具体的な言及を避け、データを確認したいとのこれまでの姿勢を継続しましたが、9月利下げも視野に入っているように見受けられました。議会証言を終えて、市場の目線は11日発表の6月米消費者物価指数(CPI)に移ると見ています。コア(食品・エネルギーを除く)CPIの伸びに鈍化傾向が確認されれば、年内の利下げ開始に向けた後押し材料になると見られます。また、11日にはアトランタ連銀ボスティック総裁の質疑応答、セントルイス連銀ムサレム総裁の講演が予定されています。FOMC(米連邦公開市場委員会)内でも年内の利下げ回数の想定は0~2回の間で分かれていると見られます。パウエル議長などFOMC執行部の利下げ回数は2回が優勢となる中、両総裁は1回以下の利下げを予想するタカ派(景気より物価を重視)と目されています。早期利下げに向かうには、タカ派委員の意見が傾くことが必要と見られるため、発言に変化がないかが注目されます。 (投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2024年7月11日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点