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05/31 16:20
【野村の夕解説】前日の大幅下落を受け、日経平均株価は自律反発(5/31)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、前日比119円高の38,173円で取引を開始しました。前日までの3営業日で累計845円下落していたこともあり反発しました。ただ、前日の米国株市場下落の流れを受けて半導体関連株等が下落したことから、上値を抑えられ、日経平均株価は前日比65円高の38,119円で午前の取引を終えました。しかし午後に入ると、日経平均株価指数先物の上昇を受けて日経平均株価も上げ幅を急速に拡大しました。前日の米国株の下落要因ともみられる米国1-3月期実質GDP改定値の下方修正に加え、本日発表予定の米国経済統計によりインフレ鈍化が示されれば、米国の早期利下げにつながる可能性があり、株価の押し上げ要因になるとみられた面もあるようです。日経平均株価は前日比191円高の38,245円で午後の取引を開始した後も上昇幅の拡大が続き、一時、本日の高値である前日比472円高の38,526円を付けました。その後も高値圏で推移し、同指数は前日比433円高の38,487円で本日の取引を終えました。また、本日の東証プライム市場の売買代金は7兆7,612億円と、今年に入って最高の水準となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国4月個人消費支出・所得統計、ユーロ圏5月消費者物価指数が発表されます。FRBならびにECBが物価の動向を見極める上で重要視している経済指標であることから、その結果が注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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05/31 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価25日移動線を割り込む、早期奪回なるか注目
※画像はイメージです。 ※2024年5月30日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価の下値メドは36,700円近辺、二番底形成なるか 今週の日経平均株価は、日米金利上昇が嫌気され、30日まで3日続落となり、取引時間中に一時3万8000円を割り込みました。日本の10年国債利回りは、約13年ぶりに1.1%に達しました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図1)。5月16日に日経平均株価は、これまで概ね上値を抑えられてきた25日移動平均線(5月30日:38,448円)を上回り、その後もしばらく同線を維持していました。 しかし、長期金利の上昇により上値は重くなり、5月30日の大幅安を受けて25日線を再び割り込みました。この調整が継続となり、30日安値(37,617円)を下回った場合は、4月19日安値(36,733円)の水準が下値メドとして挙げられます。 今年4月安値までの下落率(9.3%)は、波動分析上の参考局面である昨年10月安値までの下落率(9.6%)と比較し、値幅調整は概ね十分と捉えられます(図2)。 日足チャートで昨年10月安値(10月4日:30,487円)形成後の動きをみると、その後“二番底”(10月30日:30,538円)をつけ、本格的な上昇トレンドに移行しました。今回も同様に“二番底”形成の動きに留まるか注目されます(図1)。 一方で、5月30日安値(37,617円)形成後は引けにかけて値を戻し、昨年10月以降の上昇トレンドライン上で下ヒゲを引いて反発しています。この先戻しを試す展開となった場合は、早期に25日線(同:38,448円)を奪回できるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年5月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 (注1)直近値は2024年5月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 新興国株指数は底練り局面を脱するか 新興国株が今年に入り上昇傾向となっています。新興国株の代表的な指数であるMSCIエマージング・マーケット指数(ドル建て)は、2008年10月以降、上下に大きく動きながらも緩やかな長期上昇トレンドを形成してきました(図3)。 2022年10月安値形成時に前述の長期上昇トレンドラインを下支えとして反発、その後はチャート上の底練り局面へと移行しました。今春には、2023年1月高値以降の上値抵抗線を突破しており、今後、本格的な戻り相場入りとなることが期待されます。 (注1)直近値は2024年5月28日時点。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)ドル建てのMSCIエマージング・マーケット指数を使用している。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 新興国株の代表的な存在である中国株は今年2月にかけて下落傾向となっていましたが、当局の相次ぐ景気刺激策や景況感の改善などによって、今春に大幅上昇しました。 上海総合指数(図4)のチャートをみると今年2月安値形成後の大幅上昇で、2021年から約3年続く下降トレンドラインまで値を戻しています。この先同ラインを突破となれば、中長期的な上昇トレンドに入った可能性が高まったと捉えられます。 (注1)直近値は2024年5月28日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 次にインドSENSEX指数(図5)をみると、昨年末にかけて大幅上昇した後、今年に入ってからもじり高となり、史上最高値の更新が続いています。インドではインフレ率が低下する中で成長が加速し、経済は好調な状態を維持しています。 6月4日に開票予定の総選挙では与党・インド人民党が世論調査通り圧勝するか注目が集まります。今後も24ヶ月移動平均線を下支えとする中長期的な上昇トレンドが続くか注目されます。 (注1)直近値は2024年5月28日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)ボンベイ証券取引所より野村證券投資情報部作成 新興国の経済環境は各国で大きく異なりますが、今後米国経済が緩やかな減速に留まる中で米国金利が低下してくれば、投資資金が新興国へ向かいやすくなると考えられます。また、新興国の金融政策の自由度も高まる可能性があります。引き続き新興国株から目が離せません。 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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05/31 08:30
【野村の朝解説】NYダウ3日続落し約1ヶ月ぶりの安値(5/31)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 30日の米主要3指数は、揃って下落しました。寄り前に発表された2024年1-3月期実質GDP改定値が、前期比年率+1.3%(市場予想同+1.3%)と、速報値の同+1.6%から下方修正されました。GDPの約7割を占める個人消費の改定値が、同+2.0%と速報値の同+2.5%から市場予想以上に下方修正されたことなどから、米景気ソフトランディングへの期待の後退につながりました。また、前日引け後に、市場予想を下回る売上高実績とガイダンスを発表したセールスフォースが、前日比-19.73%と大幅下落したことがNYダウを押し下げました。NYダウは3日続落し、約1ヶ月ぶりの安値となりました。 相場の注目点 昨日、日本の10年国債利回りが約13年ぶりに1.1%に達したことなどを受け、日経平均株価は一時900円超下落する場面がありました。6月の日銀金融政策決定会合(13-14日)を前に、当面は日銀の政策修正観測による金利変動が株式市場に影響を与えるとみられます。本日寄り前に、全国の物価の先行指標となる5月東京都区部消費者物価指数が発表されます。また、来週には、4月毎月勤労統計(5日)が発表されます。物価上昇率分を差し引いた実質賃金は、3月まで24ヶ月連続で前年同月比マイナスが続いています。これらの物価と賃金に関連する統計は、日銀の追加利上げのタイミングを見極める上で重要です。加えて、中村日銀審議委員の挨拶(6日)も、市場の関心を集めるでしょう。 本日のイベント 東京時間の午前中に、中国で5月政府版PMIの発表が予定されています。米国では、FRBが物価統計として重要視している4月PCEデフレータ―が発表されます。 (投資情報部 澤田 麻希) (注)データは日本時間2024年5月31日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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05/30 16:14
【野村の夕解説】日経平均株価は続落、502円安 米株安が重石に(5/30)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、前日比444円安の38,112円で取引を開始しました。前日の米国市場で、米国10年債利回りが4.61%と、約1ヶ月ぶりの水準まで上昇し、米国主要3指数が揃って下落したことが重石となりました。ソフトバンクグループやファーストリテイリングといった高PERな成長株のほか、アドバンテストなど半導体関連の下落が目立ち、一時は前日比939円安の37,617円まで下落する場面もありました。 為替市場では、午前の取引時間中、日米金利差の拡大などを受けて、1米ドル=157円台と、前日に比べて円安ドル高で推移しました。これが輸出関連企業への追い風となり、国内株式市場を下支えしました。上海総合指数などアジア株式市場が総じて軟調な中、日経平均株価は、下落幅を縮小させると、午後の取引時間中は38,000円を挟んだレンジでの推移となり、前日比502円安の38,054円で本日の取引を終了しました。個別では、本日、事業説明会を開催したソニーグループが前日比+1.24%と、国内株式市場が軟調な中で、逆行高となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日は、米国で、複数のFRB高官が発言予定です。また経済統計では米1-3月期実質GDP改定値が発表される予定で、市場予想は前期比年率+1.2%と、速報値の同+1.6%からの下方修正を見込んでいます。 (野村證券投資情報部 金井 一宜) ご投資にあたっての注意点
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05/30 09:30
【銘柄特集】日本のお金の増やし方が上手な企業
※画像はイメージです。 企業価値の向上に対する取り組みが広がる中で、ROICへの注目が高まっています。ROICとは、投下資本利益率のことで、企業が事業に投下した資本を活用して、どの程度効率的に利益を獲得したかを示す指標です。 ROICは、税引き後営業利益を、自己資本と有利子負債を合算した投下資本で割って算出します。分母となる投下資本は、企業が事業活動を行うために集めた資金や資産です。自己資本は、株主から集めた資金や資産などを指し、有利子負債は、銀行などの金融機関から借りた資金などを指しています。 一方、分子となる税引き後営業利益は、売上高から材料費などの売上原価、そして人件費などの販売費および一般管理費を差し引いて求められる営業利益から、法人税などを差し引いたもので、企業が本業から獲得した利益を示しています。 つまり、ROICは事業に着目した指標ともいえるため、経営の現場では、企業内の各事業の収益性を判断する基準の1つとして活用されています。例えば、企業が事業単位でROICを算出し、収益性が低いと評価した事業があった場合は、その事業の撤退や縮小に踏み切り、より収益性の高い事業に資本を集めるという判断がなされます。あるいは、収益性は低いものの、市場や競合他社なども合わせて分析した結果、市場シェアの獲得に挑戦するため、生産設備の増強など戦略的投資を行うという判断をする可能性も考えられます。 こうしたROICの活用例が想定される背景には、東京証券取引所が2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などに関するお願い」を発表したことも関係しています。 このお願いは、上場企業に対して、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価したうえで、改善に向けた計画を策定・開示し、投資家との対話の中で取り組みをアップデートしていく、などの対応を要請したものです。 経営層が主体となって、持続的な成長の実現に向けた研究開発や、人的資本、生産設備などへの投資のほか、事業ポートフォリオの見直しなどの取り組みが推進されることで、経営資源の適切な配分を実現していくことが期待されます。 このような取り組みが進展していく中で、企業内で事業ポートフォリオが最適化されROICが上昇し、同時にROEの上昇につながり、最終的には、株式市場からの評価も高まる、という好循環の実現が期待されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)時価総額は、2024年5月17日時点。(注2)業種は、ラッセル野村Large Capの業種分類の大業種分類で、金融を除いている。(注3)ROICはNOPAT/IC。ただし、NOPATは営業利益×(1-税率)。ICは、自己資本+有利子負債。(注4)銘柄はROIC9.0%以上で、各業種で上位に位置している銘柄。(注5)該当銘柄が3社に満たない業種もある。(出所)東京証券取引所、野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 スクリーニング条件 資本の効率的活用や投資者を意識した経営の観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たしたとされるJPX日経インデックス400の構成銘柄より。業種別にROIC(投下資本利益率)の過去10年間平均の高い上位3社の銘柄群です。 (野村證券投資情報部 大坂 隼矢) ご投資にあたっての注意点
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05/30 08:44
【野村の朝解説】米国株下落長期金利上昇を嫌気(5/30)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 29日の米国株式市場では米長期金利上昇が嫌気され、主要3指数揃っての下落となりました。ドイツの5月消費者物価指数が前年同月比+2.8%と4月の同+2.4%から加速したことを受け、ドイツの長期金利が上昇しました。欧州各国の金利上昇に加え、29日実施された米国7年債の入札が2年債や5年債と同様に軟調な結果となったことが、米長期金利上昇につながりました。米金利上昇を受け、為替市場では1ドル=157円台まで円安ドル高が進行しています。 相場の注目点 世界的に金利上昇圧力が高まっており、日本の長期金利も上昇しています。29日には日本の10年国債利回りが12年ぶりの水準である1.075%まで上昇しました。背景には、日銀の利上げや国債買い入れ減額への思惑や、海外金利の上昇などが挙げられます。昨日、日銀の安達審議委員の講演では、「円安が長期化して物価高を招く場合は追加利上げなどの金融政策による対応も選択肢の1つ」と発言すると同時に、国債買い入れは段階的に減額していくことが望ましいとの考えを示しています。日本の長期金利上昇がどこまで継続するか注目されます。株式市場では銀行株や保険株などにとって、金利上昇は業績のサポート材料になると見られます。 本日のイベント 米国では、NY連銀のウイリアムズ総裁とダラス連銀のローガン総裁の講演があります。経済指標では、ユーロ圏の4月失業率や、米国の週間新規失業保険申請件数などが発表されます。 (投資情報部 大坂 隼矢) (注)データは日本時間2024年5月30日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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05/29 16:14
【野村の夕解説】日経平均株価、続落 国内金利上昇が重石に (5/29)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比25円高の38,880円で取引を開始しました。前日に米国株市場でエヌビディアが7%上昇し、日本でも半導体関連株に買いが入り一時日経平均株価は300円近く上げ幅を広げました。前場の取引時間中に、安達日銀審議委員が熊本の金融経済懇談会で挨拶を行い、国債の購入の段階的な減額が望ましいという趣旨の発言がありました。市場には日銀が近い将来に国債買い入れの減額や追加利上げに踏み切るとの思惑が広がりました。これを受け債券が売られ、新発10年物国債利回りは12時台に前日比0.040%高の1.070%となり、12年半ぶりの水準となりました。金利上昇が相場全体の重石となり、日経平均株価は下げに転じました。金利上昇が利ざや改善につながるとの見方から、銀行株が一時的に上昇したものの、その後は勢いを失いました。後場に入ってから株価は下げ足を強め、銀行株指数もマイナスに転じ、日経平均株価の大引けは前日比298円安の38,556円で本日の取引を終えました。新発10年物国債利回りも引け間際に一段上昇し、最後は1.075%まで上昇しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では31日(金)に4月個人消費支出・所得統計が予定されています。コアインフレ率が予想以上に鈍化すれば、市場で7月会合での利下げ開始予想が高まる可能性もありそうです。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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05/29 09:30
【深堀り経済情報】新しいNISAでさらに注目「高配当株」選びのポイント
経済情報に対する疑問を解決するため、野村證券社内の専門家に経済や投資について聞き、真相を深堀りしていきます。初回は新しいNISA(少額投資非課税制度)がスタートし、注目される株式の「配当金」、そして企業の配当性向と配当利回りの高い銘柄の選び方について、日本株専門の投資情報部ストラテジスト・大坂隼矢に聞きました。 「配当利回りがいい銘柄=優良銘柄」は本当? ――新しいNISAもスタートし、また企業が株主還元を重視していることから、株式の「配当金」はますます注目されていますね。ちなみに、企業は配当金の額をどうやって決めているのでしょう? 配当金は、企業がその期に稼いだ利益から税金を差し引いた「当期純利益」などから支払われます。そのため、業績が悪化した際には、配当が減らされる「減配」や配当が無くなる「無配」のリスクがあります。また、企業が当期純利益のうち、どれだけ配当として株主に配分するかを指す「配当性向」の目安をどのぐらいの水準に設定するかによっても配当金は増減します。 日本たばこ産業(JT、2914)は2023年12月期~2025年12月期の3カ年を対象とした中期経営計画の中で、(連結)配当性向を「75%(±5%)を目安にする」と明示しました。 2023年12月期は1株当たりの年間配当金が194円で、配当性向は71.4%でした。2024年12月期の当期利益について会社は減益見通しを示していますが、配当計画は2023年12月期と同じ194円としており、配当性向は75.7%に上昇する見込みです。いずれも中期経営計画で示した配当性向の目安の範囲内に収まっています。 JTの2024年12月期の配当金は、業績などによって変動する可能性があります。ただし、会社が配当性向の目標水準をしっかりと提示していることは、投資家にとって、投資をする際の一つの検討材料になると評価できます。ただ、企業が配当性向の目安を示していても、業績が落ち込めば配当金が減ってしまう可能性はあります。 ――数年前、海運各社の配当利回りがものすごく高まった時期があったように記憶していますが、やはり利益が上がったからなのでしょうか? そうですね。日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)の海運大手3社は、3社のコンテナ船事業をスピンオフさせ設立したオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)が軌道に乗ったことに加え、コロナ禍からの需要回復によるコンテナ運賃の急騰もあり、利益を大きく伸長させました。 結果として、日本郵船と商船三井は、配当性向を大幅に引き上げることなく、配当金が従来の10倍以上にまで膨れ上がりました。2021年3月期まで5期連続で無配だった川崎汽船も復配し、高水準な配当を実現しました。海運3社の配当利回りは一時、10%を超える水準まで上昇しました。 現在の配当利回りは、コンテナ運賃の鎮静化や株価の上昇に伴って低下していますが、依然として3%を超える水準で推移しています。 ――そもそもの話になってしまうのですが、配当利回りが高い銘柄を選べばいいということでしょうか? いいえ。「配当利回りが高い」ことだけを理由に株式を選ぶべきではないと思います。配当利回りは「1株当たり配当金÷株価」です。つまり、何らかの要因で株価が下落し、分母が小さくなっていれば必然的に配当利回りは上昇します。 言うまでもありませんが、株価が下がっているということは、市場に参加している投資家が企業の業績や経営に対して疑問を持っている、といえます。 また、創業50周年や100周年を記念して増配している企業もあり、配当利回りが「高すぎる」銘柄は、それが一過性のものではないかについてもしっかり確認してください。 配当利回りは高ければ高いほどいい? 答え→NO配当性向は高ければ高い方がいい? 答え→NO ――安定的に配当を得られる銘柄を探す時に調べておくべきことはありますか。 株主還元に対する会社の方針は重要だと思います。例えば、投資の神様と称されるウォーレン・バフェット氏が投資をしたことで注目された日本の総合商社は、積極的な株主還元策を講じています。 配当政策では、中期経営計画期間中の下限配当を設定する企業や、伊藤忠商事(8001)や三菱商事(8058)のように、減配をせず配当の維持、または増配を続ける「累進配当」の方針を掲げる企業もあります。 総合商社の業績は資源価格などの商品市況に大きく左右されるため、業績のぶれ幅が大きい点には注意が必要です。ただ、累進配当などの方針を示していることは、中期的な利益計画の達成について、経営陣が自信を持っていることの表れとも考えられます。これも総合商社株の魅力といえるのではないでしょうか。 なお、野村證券の調査では、2022年度の日本企業の配当性向は平均約36%でした。自社の株を市場から買い上げ、消却することにより1株当たりの価値を上げる「自社株買い」を含めた「総還元性向」は平均約55%でした。 一方、米国の配当性向は概ね約4割、総還元性向は100%前後に及んでいます。米国の企業に比べると、日本の企業は遅れているとも言えそうです。 もちろん配当の原資となる利益成長も重要です。月並みではありますが、配当利回りの高い銘柄から、業績がしっかりとしていて、増配あるいは高水準な配当金を維持できる銘柄を選ぶことが大切だと思います。 (注)S&P500、およびラッセル野村Large Capの税引利益に対する配当、自社株買い、内部留保の比率の推移。個々の比率の小数点以下は四捨五入してあるため、合計しても100%にならない場合がある。集計時点や集計方法の違いにより、当レポートに掲載している他の図表と数値が異なる場合がある。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 ――といっても、企業の方針まで調べるのは大変です…配当利回りの高い株式を買い付ける時にまず見ておくべき指標は何でしょうか? 仮に利益が赤字に転落しても、過去に稼いだ利益の積み上げである「利益剰余金」から配当金を支払うことは可能です。利益剰余金は一般的には「内部留保」とも呼ばれますが、自己資本に含まれる利益剰余金などが多い企業であれば、継続的な株主還元が可能と言えるかもしれません。 高配当株選びの際見ておくべき指標は 自己資本比率 企業の方針や財務状況をくまなく確認することができればよいのですが、難しいという人はまず、決算短信などに書かれている「自己資本比率」を見るとよいでしょう。国内の上場企業の平均的な自己資本比率は40%程度です。この数値を超えていればひとまずは安心ですし、大きく超えていれば、多少利益率が悪化しても、資金が潤沢にあるケースが多いので当面は安定して配当を出せるともいえそうです。 ご投資にあたっての注意点
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05/29 08:44
【野村の朝解説】AI需要への期待でテクノロジー株上昇(5/29)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 休場明けの28日の米国株式市場は、金利上昇が株価の重石となりましたが、半導体関連株が需要増に関する報道を受けてテクノロジー関連株は上昇しました。26日に起業家イーロンマスク氏が設立したAI企業のxAI社が、大規模な資金調達によりAI関連半導体を調達すると報道され、エヌビディアなどを筆頭に関連銘柄の株価が上昇しました。一方、28日はミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、確率は低いが利上げの選択肢を排除しないとタカ派的な発言をしたことから、長期金利の上昇がNYダウ銘柄を中心に株価の下押し圧力となりました。NYダウは反落となりましたが、ナスダック総合指数は史上初の17,000ポイント超えとなりました。主要半導体企業の株価指数であるSOX指数は前営業日比+1.86%となりました。 相場の注目点 日本の長期金利が約12年ぶりの高い水準に達しています。昨日、金融株は上昇していましたが、本日も長期金利の上昇が続いた場合、金利上昇が景気を抑制することになりかねず、金融株の下落を誘発するものになるかどうか、注意が必要です。また、xAI社関連の報道は昨日の日本市場ではすでに報じられていたにもかかわらず、日本市場ではむしろ半導体関連株の下落が目立ちました。昨晩の米国市場の半導体関連株の上昇が、本日の日本市場のけん引役になるか注目されます。 本日のイベント 本日は5月末決算企業の配当・優待権利付最終売買日です。10:30に安達日銀審議委員の熊本での挨拶があります。14:00に内閣府から5月消費者態度指数が発表されます。海外では、南アフリカで総選挙があります。米国で地区連銀報告(ベージュブック)が発表され、FRBの金融政策をみる上で経済や物価についての分析が注目されます。 (投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2024年5月29日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点