宇宙ゴミ(宇宙デブリ、以下デブリ)の対策サービスが、2024年にも始まる。
20年以降、人工衛星(以下、衛星)は毎年1,000機以上打ち上げられ、稼働中の衛星は推定8,000機を超す。衛星は、短ければ数年で稼働を終える。通常は大気圏へ落下させ、大気との摩擦熱で燃やし尽くしてしまうが、失敗するとデブリになる。浮遊するデブリ同士が衝突すると、小さな破片となってデブリの数が増えてしまう。
米国航空宇宙局(NASA)によると、直径約10cm 以上のデブリは2.5万個以上あり、今も増加中である。国際宇宙ステーションでは、小さなデブリとの衝突事故の跡が公表されている。稼働中の衛星が、デブリとの衝突で機能を停止するリスクも現実的な問題となってきた。無線通信や画像取得などの衛星サービスを安定的に行うためには、デブリが深刻な問題と言える。
デブリ対策では、不要となった衛星を適切に処理することが必要であろう。これには、打ち上げ前の衛星へデブリ化防止部品を装着しておく方式と、事前の部品装着は行わず、別の衛星で処理する方式がある。
前者では、衛星に磁石を装着しておく方式がある。不要となった衛星へ回収用の衛星が接近し、磁石を用いて捕獲する。テザー(特殊な綱)を装着しておく方式もある。これは物理法則を利用しており、回収衛星は使わない。不要となった衛星からテザーを伸ばすと、テザーに宇宙空間の電子が集まり、地磁気との関係から力が生じて、不要衛星は大気圏へ落下する。
後者では、レーザー方式がある。処理を行う衛星が、不要となった衛星に接近し、強いレーザーを照射する。不要衛星の一部がレーザーに焼かれ、ガスが発生する。このガスの勢いを利用して大気圏へ落下させる。不要衛星へ補助エンジンを後から付加し、落下させる方式も提案されている。
現状、デブリ化防止を強制する規制は無い。しかし、意識の高い衛星開発企業は、関連部品の装着を自主的に検討している。強制力のある国際規制が制定されれば、デブリ対策市場は急速に拡大しよう。
デブリ対策は、世界で10社以上が事業化構想を発表済みである。複数の企業が宇宙で実証実験を行っており、順調であれば24年にも、サービスインを迎えることになろう。
(野村證券フロンティア・リサーチ部 小澤 育夫)
※野村週報 2023年5月15日号「新産業の潮流」より