邦画を中心に映画業界は回復

映画業界ではアニメ作品の人気が上昇している。2022 年公開の「ONE PIECEFILM RED」や「すずめの戸締まり」、「THEFIRST SLAM DUNK」はいずれも国内興行収入が100億円超となり、映画業界回復の牽引役となった。19年と比べると全体の興行収入はまだ低位であるが(図表)、23年公開の映画では「コナン」や「ドラえもん」といった定番のアニメ作品が前年を上回っており、更に興行収入が20億円を超える邦画実写作品も複数登場していることから、映画業界の回復感は強まっている。

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日本コンテンツが海外でヒット

国内映画の回復に加え、アニメを中心とした日本のコンテンツの海外ヒットが目立つ。「ONE PIECE FILM RED」や「すずめの戸締まり」、「THE FIRST SLAM DUNK」は海外においてもヒットし、一部地域では日本アニメ映画の興行収入記録を更新する等、従来に比べ日本のアニメコンテンツの人気は上昇している。新型コロナに伴う巣ごもり需要によりアニメやゲーム等に触れる機会が増加し、日本のIP(知的財産)コンテンツのファンが増加したことが一因と推察する。

ゲーム原作の映画が増加

23年4月に公開された「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」はゲームで培った「スーパーマリオ」ファンの多さも相俟って世界的な大ヒットとなっている。近年ゲーム各社では自社IPの映画等への展開を進めており、これは顧客接点拡大の一環であると野村では考える。ゲームソフトの販売本数を拡大させる上では新規ファンの獲得が重要となるが、新規タイトルの発売だけでは従来ファンによる購買が中心となりやすい。映画やアニメといった他領域へIP を展開することで認知度が向上してファン獲得に繋がり、ゲームソフトの販売等への好影響が想定される。

任天堂では着実にファン獲得

任天堂では「スーパーマリオ」だけではなく、様々なIPでファンの積み上げが進んでいる。下図のように当社人気シリーズの販売本数はシリーズを経るにつれて増加する傾向がある。映画だけではなくテーマパークやショップ展開等も進んでおり、更にサブスクリプションサービスであるNintendo Switch Onlineではゲームボーイ等の過去作品をプレイ可能と、獲得したファンが同社IPの理解を深められる施策も進んでいる。今後は映画展開の成功によるマリオ関連作品の販売本数増加や、Nintendo Switch Online の利用増加といった成果に注目したい。

(野村證券エクイティ・リサーチ部 三木 成人)

※野村週報 2023年5月22日号「産業界」より

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