1分で読める今週の米国株

5月12日~19日の振り返り:債務上限で揺れる市場

米国株主要3指数は週半ばまでは一進一退でしたが、米政府債務上限問題の進展への期待で、週後半にかけて上昇しました。

Point1.債務上限問題は今週がヤマ場

今週も、引き続き債務上限問題が相場を左右しそうです。政府が資金繰りに行き詰まるまでの期限は、早ければ6月1日(米財務省)であることを考えれば、週末が合意の目処と見込まれます。先週金曜日の協議中には共和党側交渉者が突然退席するなど、協議は難航している模様です。バイデン大統領とマッカーシー下院議長(共和党)は22日(月)午後にも会談する予定となっています。トップ会談での合意期待は残っていますが、週を通した株式市場の不安定化要因となりそうです。

Point2.FOMC議事要旨

次の注目点は、24日(水)発表の5月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨です。FOMCは年内利下げを示唆していませんが、市場は依然として年内の利下げを織り込んでいます。議事要旨でFOMCの潜在的な次のアクションの想定が利下げではなく利上げであることが強調されれば、先々での利下げ期待は一旦縮小すると考えられます。

Point3.景気後退の兆候を確認

もっとも、市場が利下げを期待する背景には、過去のインフレや労働市場のデータよりも、今後起こるであろうリセッションを先んじて織り込んでいることが挙げられます。23日(火)の5月S&PグローバルPMI(速報値)といった経済指標や小売・情報技術セクターの企業決算発表が市場の景気後退予想にどのように影響を及ぼすかに注目です。

(以上、「1分で読める米国株」)

補足1:28日(金)発表のコアPCEデフレーター

コアPCEデフレーターとは

コアPCEデフレーターは、FRB(米連邦準備理事会)が金融政策を決定する上で重視しているインフレ指標です。足元では、エネルギー・食品を含む総合指数を、エネルギー・食品を除くコア指数が上回っています。このことは、サプライチェーンの問題に端を発するエネルギー・食品のインフレが落ち着いてきていることを示す一方で、家賃やサービス価格などではインフレが続いていることも示唆しています。

利下げとの関係は

2023年3月FOMCで示された見通しによれば、利下げが予定される2024年末のコアPCEデフレーター予想は前年比+2.6%で、これを月次換算すると前月比+0.2%程度となります。足元のコア指数は同+0.3%前後で推移しており、一段のインフレ鈍化が、利下げの条件となると考えられます。

補足2:24日(水)のエヌビディア

2022年2-4月期決算発表が本格化します。決算発表企業数では小売セクターが多くなりますが、情報技術セクターにも目立つ企業が散見されます。今回は半導体大手のエヌビディアに注目し、同セクターを見通すヒントにしたいと考えます。

前四半期の実績・会社予想を超えられるか

会社は、2023年1月期通期決算発表において2022年2-4月期の売上高を、中央値で65億ドルと予想しています。前年同期比では22%減となりますが、前四半期比では+7%となる水準で、業績の底打ちを予想していることになります。前四半期の売上高では、ゲーム用(暗号通貨のマイニング用途が大きい)が前年同期比46%減となる一方で、データセンター用がチャットGPTなどのAI需要で前年同期比+11%と下支えしました。データセンター用で高い成長を維持できるかに注目が集まります。

競合企業のデータセンター部門にも底打ち感

同社のGPUにおいて直接的な競合となるのは、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)です。AMDは1-3月期決算発表をすでに終えており、データセンター用は前年同期比ほぼ横ばいとなっています。GPU市場においては、エヌビディアの方が支配的な立場にあることから、エヌビディアの売上高が前年同期比プラスとなる可能性は十分にあると考えられます。

在庫水準はどうか

在庫水準は大きく増加しており、前年同期比+98%の52億ドルまで積み上がっています。成長領域とは言え、年後半に景気後退が見込まれる中で高い在庫水準が続けば株価には下押し圧力となります。半導体セクター全体の株価変動にも影響しうるため、注視する必要があります。

半導体は2023年の牽引役となっているセクターです。米国株全体を見る上でも、試金石となる決算発表になりそうです。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点