33年ぶりの水準を達成した日経平均

2023年5月22日、日経平均株価の終値は31,086円となり、1990年7月以来33年ぶりに31,000円台に乗せました。日経平均株価は、1989年12月に史上最高値を記録して以降、資産価格の下落、株式持合いの解消、企業の競争力低下等が重なり、現在に至るまで最高値の更新にはいたっていません。1989~90年当時と比べ、現在の(経常)利益は当時の3倍に達し、ROE(自己資本利益率)も過去最高水準に並びつつあります。

課題として急浮上する株主還元充実

日本企業のROEはこれまでにも何度か10%に迫る水準に達してきましたが、そのたびに打ち返されてきました。今回も、仮に年率8%で税引利益が安定的に増加しても、現在の50%という総還元性向(配当性向35%+自社株買い15%)ではROEの上昇は緩慢です。ROEの持続的な上昇と、低バリュエーション解消のためには、現在よりも一段高い総還元性向の実現が求められています。

米国にくらべ低い総還元性向

日本企業の総還元性向は、2019年度のように短期的に大きく利益水準が落ち込んだ場合を除いて、50%をやや下回る水準が定位置となっています。これに対して、米国企業の総還元性向は2000年代初頭まではおおむね80%程度でしたが、近年はさらにその水準が上がり、2015年以降で総還元性向が100%を下回ったことは2度しかありません。

日本企業に変化の兆しか?

2022年度の日本企業の配当性向は36%、自社株買い性向は19%となり、総還元性向は55%となりました。2022年度は2020年度を起点に3期連続増益になると同時に、2期連続で史上最高益を更新しています。このように利益水準が極めて高水準な状態で、総還元性向が大きく引きあがった背景には、企業が資本効率や資本コストを意識した経営に舵を切り始めたことが考えられます。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

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